【東京新聞コラム】映画「あなたを忘れない」への酷評。それほど反日的とは思えなかったのに…「嫌韓」がここまで浸透したのか[2/18]
3人のあなたを忘れない JR新大久保駅で六年前、線路に落ちた男性を助けようとして電車にはねられ亡くなった 韓国人留学生李(イ)秀賢(スヒョン)さんを主人公にした映画「あなたを忘れない」。 投稿による映画評を並べたインターネットサイトに「日本人は皆、悪者なのか」などと 酷評する書き込みが続いている。 「日韓の懸け橋になりたい」と夢を語っていたという李さんだ。フィクションを盛り込んだ 映画とはいえ、ネット上の激しい言葉に背筋が寒くなるような思いがした。 事故の夜、私は「JRの駅で三人死亡」の一報で、社会部のデスクに残っていた。現場 からの連絡を聞いた衝撃を今も忘れていない。「ホームから落ちた人を助けるため、 二人も線路に飛び降りたんです」。映画を見ながら、あの夜を思い出していた。 今月六日、東京・板橋で女性を助けようと線路に入った宮本邦彦警部が電車にはねら れ、十二日に亡くなった。勤め先の交番には回復を願う千羽鶴などが殺到し、安倍晋三 首相は「日本人として誇り」と述べた。命をなげうつという勇気に日本も韓国もない。 「あなたを忘れない」とは、李さんや宮本さん、映画には描かれなかったがもう一人の 勇気ある人・関根史郎さんにもささげたい言葉だ。 映画はそれほど反日的とは思えなかった。「嫌韓」がここまで浸透したのか。背景はもっ と根深いと感じている。異質なものをのけ者にして、見下す空気がじわじわと広がって いるのではないか。いじめ自殺が相次ぐ学校は、そんな大人社会を反映した病理だ。 たかがネットの映画評だからと、笑ってはいられない。 (五十住和樹) ソース:東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/00/ronsetu/20070218/col_____ronsetu_000.shtml