気がつけば、思い出し笑い

2007/04/24(火)00:51

にゃん

ショートストーリー(16)

あたし、にゃんこ。 飼い主らしき人はいるけれど 度を超すくらいに 放任主義のため、人から見ればノラ猫だと思われるかも。 子猫のときの記憶は曖昧で でもあたしとおんなじ黒ブチ模様の かあさんのおっぱいに 他の兄弟たちと吸い付いてた 甘くて ほこりっぽい匂いは覚えているのよ。 いつのまにか 飼い主と暮らしていて、 朝ごはんとお夕飯が決まった場所にあること 首に赤い紐の鈴がついてること 猫ドアと飼い主が呼んでるあたし専用のドアを毎日ぱたぱた 出入りする毎日が過ぎていく。 年齢? うーん、わかんないわ。 ピンクの花びらが はらはら落ちてくるのは もう何回か 見たと思うの。 夜のお散歩途中にある洋風のおうちの窓にイルミネーションが 灯されるのを見たのも 今年が初めてじゃあないわね。 お夕飯のあとは 気の向くまま 近所のお散歩をするの。 ブロック塀の上に座っても ここのところは寒くて 耐えられないこともなくなったわ。 昨夜も  あたしの耳元を春の夜風が くるくる まわっていくのを 気持ちよく感じていた。 そしたら いつものあいつが近づいてくるのが わかったの。 ほっぺたを赤くしたあいつはジグザクな足取りで 家に向かっているらしい。 みつかんなちゃいいなあ と寝たふりをしていたのに 「おおー今日もいるんだぁあ」とお酒の匂いをぷんぷん させて顔を近づけてくる。 だいたい飼い主らしき人だってこんなにあたしに なれなれしくはしてこないのに なんて ずうずうしい人なのかしら!!といつも あいつ遭うと腹立たしい気持ちになるのよ。 さっさと 裏庭に逃げ込んじゃおうかしら?と 思った矢先だった。 あいつはいきなり歌を歌いだしたの。 あたしたちは 「さかり」がつくと(自分じゃよく わかんないんだけど飼い主はこういうの) 夜中 なんだか 我慢できなくなって 自分の声じゃない みたいな声で鳴いてしまうことがあるのね。 だからあいつもそうなのかなあ、ってちょっと ビックリしたわ。 人間の歌だから 何の歌なのかちーっともわからなかったけど なんだか悲しい気持ちになるような歌だったな。 歌い終わると あいつは 急に黙り込んで ため息をひとつ。 「じゃあね、にゃんこ」 と言うと またしてもジグザク走行で 去っていった。 気がつくと 生ぬるかった夜風も 冷たくなっていた。 さて おうちにかえろう。

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