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H22論文試験(意匠)

【問題1】
(1)意匠の創作においては、1つの意匠から派生して複数の意匠が創作される
ことがあり、従来より、これらのデザインバリエーションの意匠について保護を
求める声が産業界からあった。
(2)関連意匠制度が導入される前にも、これらの類似した意匠にも権利を認める
類似意匠の制度があったが、類似した意匠には独立した権利が認められておらず、
適切な保護が得られないものであった。
(3)そこで、これらの類似した意匠にも独立した権利を認める関連意匠の制度が
導入された。その際、類似する意匠の抵触の抵触を調整するため、移転(22条)と
専用実施権(27条1項、3項)には制限が課された。また、類似の無限連鎖を避ける
ため、関連意匠にのみ類似する意匠には権利を与えないこととした(10条3項)。
(4)しかしながら、関連意匠制度を利用するためには、本意匠と関連意匠を
同時に出願しなければならなかったため、一度出願したものについて、関連意匠
制度を利用するためには、一度取り下げて再出願しなければならなくなる場合が
発生していた(旧10条)。
(5)そこで、平成18年法改正により、本意匠の出願日後で意匠公報発行日前
(20条4項の場合を除く)までに出願すれば関連意匠制度を利用できるように改正
された(10条1項、2項)。
【問題2】
1.妥当性の検討
意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠を実施する権利を専有し
(23条)、故意又は過失により権利を侵害した者に対して損害賠償を請求する
ことができる(民法709条)。製品Xはロ’に類似し(24条)、A社の過失は
推定されるので(40条)、形式上はB社の権利行使は妥当である。
2.原簿の確認
弁理士は、原簿を確認してロ’にかかる意匠権が適切に存続していることを
確認すべきである。権利が存続していなければ、以降の実施については賠償を
免れるからである。
3.先使用による通常実施権を有するかの確認
弁理士は、平成22年3月23日に提出されたロからロ’への補正の内容が、意匠の
要旨を変更するものでないかを確認すべきである。例えば、ロのときに不明確で
あった意匠の内容が、ロ’のときに明確になっていれば要旨変更に該当し、
出願日が補正書の提出時に繰り下がる(9条の2)。この場合には、下記のとおり、
他の要件を満たすので、A社は先使用による通常実施権(29条)を有する。
A社は甲からイについての権利を譲り受けているので知得ルートは正当であり、
平成22年4月3日からXを販売するために、平成22年2月4日から実施の準備をして
いるので、手続補正書の提出時点においても実施の準備を継続していると考えら
れる。したがって、A社は先使用の要件を満たし、先使用による通常実施権を
有する。
4.先出願による通常実施権(29条の2)
弁理士は、先使用による通常実施権が認められない場合には(29条の2かっこ書)
先出願による通常実施権(29条の2)を有するかを確認すべきである。
上述のとおり、A社の知得ルートは正当であり、A社はB社よりも先に出願し
(29条の2第1号)、3条1項3号の理由により拒絶査定(17条)が確定しており
(29条の2第2号)、ロ’の登録時に実施をしているので先使用による通常実施権
を有する。
5.したがって、弁理士は、A社に対して、先使用による通常実施権(29条)
又は先出願による通常実施権(先使用による通常実施権を有する場合を除く)
(29条の2)を有することを説明すべきである。
6.その他、必要に応じて、弁理士は、下記のことを検討すべきである。
(1)B社と交渉して、実施権(27条、28条)の許諾を得ることもできる。実施権が
認められれば、A社はXの製造、販売を継続することができる。
(2)時間的、経費的な負担を避けるために、Xの中止や変更を検討することができる。
(3)登録意匠に無効理由がある場合には、無効審判を請求(48条1項)して、意匠権
を遡及消滅(49条)させることができる。また、この場合には無効理由の抗弁
(準特104条の3)も検討すべきである。
以上


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