進歩の日々を自分らしく

2023/10/31(火)07:33

エマニュエル・トッドの思考に学ぶ

思考の多様化(45)

*************** 学習や仕事をしている限り進歩があります。それどころか、人生は日々進歩の積み重ねなのです。しかし、戸惑ったり焦ったりすることはありません。自分らしく進めばよいのです。意欲的に自分らしく日々進歩を重ねることへの想いを、週間記に書き綴っています。*************** もはや今年も残り2ヶ月となりました。良い結果が得られなかった人でも、苦しい状況にある人でも、焦ったり嘆いたりすることはないと思います。置かれた状況の中で一生懸命生きてきた今年の10ヶ月なんですから。あと2ヶ月、自分にできる望ましいことに力を尽くすのが一番だと思います。  今回のお勧めは、秋から冬に向かう時候の風流、次の言葉です。◎柿の実の色は深まり、・・・◎ ニセアカシアの茂みには黄金色の粉が惜しげもなく振りかけられ、風が吹くと枝先で可憐な小判が鳴り出しそうだった。柿の実の色は深まり、柘榴の尻は赤く割れた。秋だった。黒井千次の短編「秋の舗石」からの引用です。まさに今、秋です。 冬に入る寸前に現れる秋の様相は素晴らしいものです。空を見上げ、木々に残る枯葉がカサカサと鳴るのを聴いていた時、自分に対して「これ以上何が欲しいんだ?」と問い掛けたことがありました。 これからもどうぞ進歩の日々をお楽しみください。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★啓水ワールドへのお誘い  *この素晴らしき世界の中で色々なことを考え、行動してきた。    http://kokenpat.cafe.coocan.jp/0.keisuiworld.html━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆エマニュエル・トッドの思考に学ぶ◆ 世間には通説と呼ばれるものがあります。いかにも本当のことのように聞こえますが、誤りであることも多いのです。また、通説の根底にある考え方、時代環境の影響を受けた先入観、表層的な思考、といったものも、いかにも本当のことのように見える虚像を生み出すようです。 本当のことを隠してしまう、このような目くらましから脱するにはどのようなことが必要なのでしょうか。ズバリ言ってしまえば、深層の思考が必要だと言えそうです。この深層の思考について、リーマン・ショックやトランプ政権の誕生などを予言して世界の注目の的となった、エマニュエル・トッドの思考と実績を参考にして学んでみようと思います。 エマニュエル・トッドは1951年フランス生まれで、家族人類学者として活動しています。彼は専門とする家族人類学と人口動態学から割り出したデータと情報に基づいて、蓋然的な予想を行なっています。そしてその多くが的中しています。 一例として、トランプ政権の誕生から見ていきます。アメリカ大統領選挙の最中から、トッドは「トランプを支持する人たちの反乱は理にかなっている」と明言していました。彼が論拠としたのは、2015年に発表された人口動態調査です。その調査は1999年以降のアメリカの白人中年(45~54歳)の死亡率が上がっていることを示していました。21世紀に入る頃からアメリカの産業は疲弊し、労働者の収入は増えなくなりました。同時に、自殺や麻薬中毒、医療セーフティネットの不備などが働き盛りの白人世代を死に追いやる要因となっていました。こうしたことが前述の人口動態調査の結果となって現れていたのです。こうした現象の根底にある意味を、トッドはグローバリゼーション・ファティーグと呼んでいます。行き過ぎた自由貿易と移民の増加による社会の疲労とでも言えばよいのでしょうか。トランプはこうしたことから発生する不満を、自由貿易の制限や移民の受け入れ削減などを通して解消するという発言を続けてきました。このような候補を白人労働者を中心とする民衆が選んだこと自体は間違ってはいない、とトッドは言っています。 ここまでのレベルの話であれば、トッドの理論を駆使するまでもなく他の識者でも主張できます。しかし、トッドはもっと深いところにまで思考を至らせています。家族人類学者としてのトッドは、家族の分類(核家族、大家族)と兄弟の平等・不平等に着目し、家族類型を整理しました。詳細の説明は省略しますが次の4つです。絶対核家族、平等主義核家族、直系家族、外婚制共同体家族。アメリカへ移民した人々のうち、ドイツ系、ユダヤ系、日本系などは直系家族であり伝統的に教育熱心です。一方、アングロ・サクソン系は元々が絶対核家族であり、教育に対する情熱は薄いと理解されています。こうした家族の在り方から割り出されるのが、プア・ホワイトが発生する要因です。教育に不熱心な家庭から高等教育を受けていない子弟が低学歴のまま社会に出れば、低収入層を形成することになるのです。トッドはこの深さまで掘り下げた上で、トランプ政権誕生を予言していたようです。 この他にもトッドの深層の思考を通して覆された通説や、的中させた予言は色々と有ります。二つの例を上げておきます。・人類の起源は大家族で、文明の発達につれて核家族になった、という のは誤りだった。12世紀まで遡っても大家族はほとんど見出せず、 核家族が大部分だった。だが、家族が複数結合した、複合家族や 拡大家族も存在していた。・一般に文明化の過程に入れば乳幼児死亡率は低下する。ところがソ連 では乳幼児死亡率が上昇していた。この事実の深層にまで思考を 至らせ、1976年に刊行した「最後の転落」の中でソ連崩壊を予言 した。実際のソ連崩壊は1991年に起こった。 深層の思考とはどういうものか、今ここで明言することはできそうもありません。しかし、以上に紹介した事例をしっかりと読み込むことによって、自分自身としての深層の思考を会得できそうな感もあります。はっきりと言えそうなことは、深層の思考には人間や人間集団の心理、行動規範、文化といったものへの強い関心が欠かせないだろうということです。エマニュエル・トッドに学び、こうした思考の実践を身に付けることは、進歩の道を切り拓く上で大きな力となるでしょう。ご関心の向きは、エマニュエル・トッドの著書や関連の書に目を通されるとよいでしょう。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★サイト「経営改善で会社を元気に」に次のメッセージを掲載中です  *組織の老化に対処する    http://kokenpat.cafe.coocan.jp/━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆人生があなたに何かを求めている:心学からのヒント◆ 私たちの生き方は、心の在り方にも左右されます。これを追究することは生き方の向上につながります。心の在り方を追究する上でヒントになりそうな言葉を贈りますので、自己の現状と突き合わせてみて、少しの間だけでも想いを巡らしてみてください。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  あなたが人生に何かを求めているのではなく、人生があなたに何か を求めているのだ。それを知ることが大切だ。このようなことをフラ ンクルは言っていた。それは、天は我をして何かを為さしめようと している、ということにも通じる。この何かを感じ取る努力をする ことが天命に近づくということだ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★グローバルという言葉は、世界中の人々が助け合うためにあります。 *最小限の医療も受けられない人たちが世界中に大勢います。   グローバルの旗印はこうした人たちを救うために掲げたいものです。 *世界的な医療団体「国境なき医師団」を継続的に支援しましょう。   ・特定非営利活動法人 国境なき医師団日本     https://www.msf.or.jp *先ずはトルコやモロッコの大震災の支援から。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 大島啓生  進歩の考房 主宰  特定非営利活動法人 産業人OBネット正会員   E-mail <hiro.oshima@nifty.com>   URL <http://kokenpat.cafe.coocan.jp/>   神戸市垂水区桃山台5-7-7  郵便番号655-0854   TEL・FAX:078-752-9097

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