よりによって、今?
ウチのバンドで一番の年長さんで、有名なバンドにも数々在籍し、アメリカン・バンドスタンドなどにも出た経験があるラルフ。こんなコンテスト、屁でもないんだろうな。彼とアビーは余裕ぶっこいて、なんと電車で遊覧旅行をかねてメンフィスへ行ったのです。途中でニュー・オーリンズへ寄って、美味しいご馳走を食べて、このチャレンジにのぞんだそうです。彼の家族も沢山駆けつけ、昼間には総勢でランチへ行ったり、余裕しゃくしゃく。頼れるな~。いよいよ準決勝の舞台へ。まあ3日目だけに慣れたし、アンプも同じだし。私なんか、ケーブルをぶすっと刺せば準備完了。ステージの下から「KOKO!」って呼ばれて行ってみたら、タイムキーパーの人に写真を撮られました。なんか彼女、私達をすごく気に入ってくれて、CDを買ってくれて、サインまでさせていただきました。しかし、なんか、後ろがごたごたしている。ラルフがすごいあせってる。こんなにあわててるラルフを見るのは初めて!「ちょっと待って、制限時間10分マックスで要るから!」と言いながら、ドラムのパーツを全部調整。イスもスタンドも全部調整。シンバルは各自持ち寄るのですが、シンバルをスタンドに引っ掛けた後に留める金具が無くて大慌て。前のバンドが酷い状況にして去ったらしいのです。うわっ、あのポーランド人!!!!!サボタージュ!???金具はなんと床に落ちていました。ラルフの精神力は限界に達し、シンバルを持った手が滑り、ぐわっしゃ~~~~~~~~~~~~んんんん!と落としてしまいました。うわっ!!!!あの時のステージの殺気の空気はすごかった。落ち着けっていうともっとあせるだろうし、黙っててもプレッシャーだし。制限時間って過ぎるとポイント引かれるのですが、その時は教えてくれるのかな。それとも黙って引かれるのかな。MCに紹介されてから、一言か一音でも出したらそこからセットの時間がカウントされ、審査はそこから始まります。 だからシンバルぐわしゃんも、ルール的にはまだ考慮しちゃだめな時間に入っています。でも人の心はルールじゃ縛れないんだよね~。あいつ嫌なやつだな~と思ったら、殺人事件の陪審員だって、ちょっとは揺らぐでしょうね。準備時間もいつからいつまでっていう表示がないので、あと何分あるのかわからない。本当に長~く感じた準備が終わり、やっとMCに紹介され、最初の曲をやりました。犬の曲、結局やったのですが、ジャニヴァの顔、怖くて見れない...。ちらっちらっと見たところ、やっぱりさっきみたいに横むいていました。なんか、嫌な感じ。彼女は私達を覚えているだろうか。会ったのはたったの3,4ヶ月前だけど、ツーソンという名と、うろちょろしていた髪の異様に長い東洋人女。 よほど記憶力が悪くなければ気づくでしょう。 一般的に曲受けはとっても良くて、とある曲ではお客さんがある箇所の歌詞でどっと笑って、拍手が起きたのが聞こえました。ソロでもないのに歌詞に拍手が来たのはここに来て初めてです。私はいつもどおりの完全フェイクスマイルで、用もないのにブライアンやラルフをちらっと見ては「コミュニケーション取ってます」というフリをしていたのですが、ラルフはさっきの事故が恥ずかしかったのか、まだ怒っているのか、目をつぶったまま。曲目を並べると、かなり単調で、トラディショナルなブルースとは抵触する程度の曲が多かったのですが、私達の当初の目的は勝つことではなく、なるべく多くの曲をやっていく事だったので、そういう意味では目標達成かな。最後の曲では「どう転んでもこの舞台とはもうお別れか~、寂しいなあ」と思ったら、なんかやたらと感きわまって、また涙が出てきました。いや、この旅ではずっと感情が高まっていました。忙しすぎて、気づかなかったんだよね。