フロリダより、愛を込めて! 全盲の娘の子育て日記。

11. ドクターメリットとの出会い

11.ドクターメリットとの出会い-インプラント手術                        
心臓の手術から3年後、2000年の夏休みにミッシェルは目の手術をする事になりました。 目の周りの骨は、眼球があるからこそ、それに刺激されて成長するそうです。 眼球が生まれつき無い子供は、生まれつき目の中のスペースも少く、義眼をつける事は、外見上の理由と目の周りの骨の発育を促す為でもあります。 義眼の形はその患者さんの状態によって様々です。 ミッシェルの場合は2歳の時から裏も丸い義眼をつけていました。 
 

ドクターメリットとの出会いは、とても印象的でした。アメリカには義眼師協会(American Society of Ocularists, 略してASO www.ocularist.org)と言う団体があり、義眼師(Ocularist)の方々がメンバーとなり、1年に2回、義眼師同士の交友と勉強会を兼ねた会議を開いています。 その他、義眼や目の手術に関する最新の情報が載せられた雑誌も発行され、情報交換が行われています。 1999年の秋の会議がオーランドで行われる事になり、そこに日本でミッシェルの義眼を作ってくださっていた水島義眼工房の水島二三郎先生が出席される事になりました。 若輩ながら、私と主人が水島先生の通訳等のお手伝いする機会を頂けた事は、アメリカ全国から集まる義眼師の方々に一度にお会いし、お話が聞けるまたと無い良い機会でした。 勉強会では、多くの医師達による講演も含まれ、無眼球の他、事故や病気で眼球を失い摘出した人達が受けられる手術の方法なども、写真入りで説明されていました。 初日のパーティーは久しぶりに顔を合わせる義眼師の方々の、にぎやかな集まりとなりました。 皆、名前で呼び合う、とても和気あいあいとしたアメリカのパーティーです。 その最中も、あちこちで、義眼についての熱心な意見交換を耳にしました。 水島先生の様に、海外からもメンバーになられる方も数多く、他の国から参加されているかたも何人か見かけました。 そんな中、私達の話題も当然ミッシェルの話になります。 そこで、知り合った何人かの義眼師さんから、「是非、ドクターメリットに会うように」と勧められたのでした。 当時、インプラントの手術は全く考えてもいませんでしたが、そんなに皆さんが勧めて下さるドクターでしたら素晴らしい方に違いありません。是非ミッシェルの目の状態を見ていただき、ご意見を伺いたいと思いました。 しかも、ドクターがわざわざダラスから来て、三日目に講演をされると言うではないですか、これは、学校を休ませてでも、娘を連れて出かける事にしました。 

当日、講演の後で、水島先生と娘と一緒に、会場となったホテルの廊下でお会いしたドクター・メリットは、おっとりとしたとても親しみ易い方でした。 以前にも書いた様に、アメリカのドクターと義眼師さん達はチームを組んで仕事をしている方も多く、この日も、ドクターと長年一緒に仕事をしている、ダラスの義眼師の方も来てくださいました。 眼球を摘出した人が受ける手術には、ドクターメリットの様に透明なプラスチックのボールを目のスペースにインプラントする方法、サンゴを加工したボールをインプラントする方法、でん部の脂肪を移植する方法など、いくつかあるようです。 ドクターメリットはミッシェルの目の様子を見て、彼が行う手術にとても適している事を、手術の方法などを絵に書いて説明してくれました。 「今は丁度良い時期ですね。 でも、すぐにしなければいけない手術ではないから、来年の夏休みにでも一度ダラスにいらっしゃい。 私が手術をした患者さんも紹介するから、話を聞くと良いですよ。 集められるだけ情報を集めて、決断をするのは、貴方たちご両親だからね。」と微笑まれました。 

同じ国といっても、フロリダからテキサスまでは遠く、手術のことは、その後暫く頭から離れていましたが、年が明けて夏休みが近づくにつれ、「やるなら今だ。」と言う気持ちが強くなりました。そうなると、「遠いテキサスまで行くのは大変」と思っていた気持ちから、「いや、その気になれば、何とかなる。 心臓の手術の時もちゃんと道が開けた。 思いは全て実現させたい。」と手術に向けての前向きな気持ちが、日に日に固まりました。ドクターメリットにも連絡をとって、何人か手術を受けた患者さんの電話番号を伺い、患者さんの両親達から話を聞けたことで決心も固まりました。 そして一ヶ月後には手術の日取りも、飛行機の手配も万事整い、いざ、ダラスへ向けて出発です。 

ダラスには木曜日に着き、翌日、金曜日はドクターの診療所で診察、そして手術の説明が行われました。 午後には病院での簡単な健康診断。 土日をはさみ、月曜日の午前中が手術で、一日入院。 三日後、木曜日の診察で経過が良ければ、その足で、飛行機に乗りフロリダへ帰れる予定です。 手術の成功と、万事計画どうりに行きます様にと、ここでも親戚一同の祈りの力を借りて、心配はばっさりと捨て去り、全てはドクター・メリットと病院のスタッフにお任せする事にしました。

アメリカは寄付・ボランティアの大変盛んな国です。 あのファーストフードのマクドナルドが慈善事業として、全国の主要都市の子供病院の近くに、遠方から治療を受けに来る子供と家族の為に宿泊施設を建て、運営している事はご存知ですか? その名も「マクドナルド・ハウス」と言います。 病院・ドクターに紹介してもらえると、この施設に滞在する事ができます。 料金も一泊10ドル程で、毎日の様に地元の教会、会社、個人のボランティアグループが夕食を作りに来て、雰囲気をなごませてくれます。 キッチンにはマクドナルドの製品はもとより、沢山の食料が寄付され、朝食・昼食も自分たちで好きに作る事もできます。 施設の中には、一緒に来た兄弟達が遊べるように、プレールームやゲームルームもありました。 使った部屋やキッチンの掃除は、宿泊している家族たちが皆分担して行います。 何よりもこの施設のありがたみは、病気を持った子供とその家族が、ホテルの個室で不安な夜を過ごす事なく、アットホームな雰囲気の中、他の家族達と気持ちを分かち合い、励ましあう事が出来ることでは無いでしょうか? 私達もこのマクドナルド・ハウスにお世話になることになりました。日本からアメリカの病院へ診察に見える場合は、是非、病院にマクドナルド・ハウスの事を聞いて見ると良いでしょう。 私達も滞在中に、同じ日に骨髄の手術を受ける少年の家族と親しくなりました。 ミッシェルの場合は、生きるか死ぬかの手術ではありませんでしが、彼の場合は、生死を賭けた大手術で、手術の待合室にも親戚や牧師さんが集まっていました。子供の手術を待つ間は、辛い時間です。 手術の当日の午後、目を腫らしてカフェテリアに現われた彼のお母さんの笑顔を見て、お互い手術の成功を心から喜び会いました。

さて、ミッシェルはと言うと、手術は順調に終わったものの、痛み止めのモルヒネがあまり効かない体質なようで、一晩中痛みがひどかったようです。 それでも、我慢強い彼女はじっと痛みをこらえていました。 翌朝、別の鎮痛剤に変えてもらい少しは楽になったようですが、手術の直後ですから、痛みとの戦いは仕方がありません。 「目に入れたボールが押すから、痛い!痛い!」 しまいには、「このボールとって!」と訴える娘に、そんな訳は無いはずだが、ひょっとして、本当にボールに押されて痛むのだろうか、、。」と不安になる私。 その午後、ドクターメリットが病室に診察に見える事になっていましたが、それまでの時間の長かった事。 手術が長引いたそうで、ドクターメリットが夕方遅くにいつもの笑顔で部屋に入って来た時は、本当にほっとしたものです。 何しろ、包帯の下の娘の目は紫に晴れあがって、顔は別人のようではありませんか。 さっそく「痛い、痛い」と訴えるミッシェルと、不安そうに覗き込む私に向かって、ドクターは静かに、「経過はとても順調ですよ。目の腫れも手術後のいたって自然な状態です。三日もすれば、腫れも引きずっと楽になりますよ。」と告げられました。 そうか、、ボールが押して痛いわけではないんだ。 それに、粘膜を切って、さらに縫い付けたんだから、腫れて当然、痛くて当然。 やれやれ、、。 娘が納得したかどうかは別として、私は多いに納得し、退院許可を頂き、殆ど眠れなかった病室を後にして、外も暗くなる頃マクドナルド・ハウスへと引き上げました。 

ドクターの言葉どおり、三日後には痛みもかなり和らいで、経過も良好、診察の後は計画どおりに、主人の妹夫婦に送ってもらって、ダラスの空港から飛行機に乗り、時間どおりに帰路へつく事が出来ました。 手術の後は、透明なコンフォーマーと言う義眼の変わりの物を約4-5週間つけ、傷口が治った頃に新しい義眼を作るようにとの指示を頂きました。 ダラスまではちょくちょく飛行機で行くわけにも行かないので、その後の検診は、以前の様に地元の専門医にお願いしています。 (ちなみに、この先生はでん部の脂肪をインプラントする手術の方法を取っていらっしゃいます。) 自由の国アメリカでは、何人のドクターの意見を聞くのも自由、自分でどのドクターに手術をしてもらうかを決めるのも自由。 ドクターの方も、それが当然ですから、娘の様に他のドクターに手術を受けた患者さんでも、快く看てくださる事は、患者にとっては大変ありがたいものです。 手術を受けた後の目に見える変化は、小さいながらも以前よりも自然な目もとになった事。 また、眼球の代わりとなるものが出来たので、以前より薄く、小さい義眼をつけられる様になった事。その為、目やにが殆どでなくなり、従って目の周りの炎症が無くなった事。 目のスペースにあわせて、義眼を大きく作り変えて行く必要が無くなった事、等。 今回も、色々な方のお世話になり、無事に手術が受けられた事を心から感謝いたします。 

(手術等についてのご質問は、イーメールをくだされば、私の解る範囲でお答えします。 又、私は医療の専門家では無いので、表現の方法が的確でない個所がある事は、ご了承ください。 又、現在はめている義眼はコンタクトレンズを厚くしたような形です。 写真を載せようとしたのですが、腕が悪いのかカメラの調子が悪いのか、何度とっても写真がボケでしまうので、ここでは省略します。)

ドクター・メリットの連絡先: Dr. James H Merritt, M.D., F.A.C.S. Reconstructive Eye Consultants Presbyterian Professional Bldg. III, Suite 508, 8230 Walnut Hill Lane, Dallas, Texas 75231

ドクター・メリットとの再会のページへ (2002年の夏、手術の2年後に受けた診察の様子)




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