フロリダより、愛を込めて! 全盲の娘の子育て日記。

0歳児の頃

 誰もが持つ、育児の悩み。 盲児の場合、請願者である親にしてみると、見えない子供の気持は想像の域でしかありません。子供との一対一の毎日で、壁に突き当たる事も多々。 今日はアメリカにお住まいの二人の日本人のお母さん達のお話をご紹介します。 7ヶ月児のお母さん・Tさんからの相談と2歳児のお母さんの体験談です。

Tさんの相談:
我が家の娘(生後7ヶ月半、全盲)は、このところいろんなことが停滞気味で、他と比較することはもうとっくに放棄しているはずの私共とはいえ、
少し焦りを感じている今日この頃です。

現在、週に2~3回、OT/PTのプログラム(発達を助ける運動のプログラムです。)を受けていますが、半分近くは泣いてしまって手が付けられず、ほとんど何もしないままに先生が帰ってしまうこともしばしば。
娘も最高で5時間位しか続けて眠ることができないので、いまだに生活リズムが安定せずに、週のうち半分は「昼夜逆転」。
OT/PTプログラムの時間は、初めのうちだけでも機嫌良く起きていられることができればまだ良い方・・・でも結局は、嫌がるところを無理に運動
させられるので、大泣きで終了、というくり返しでいます。。。

さてお伺いしたいのは、Rちゃんに「どうやって手を伸ばして物を掴んだり、身体を支えることを
覚えさせたのでしょうか?」ということです。 娘は、いまだにおすわりができないので、ほとんど寝たままで1日を過ごしています。
4ヶ月半頃から寝返りはしているのですが、ほとんど片腕は抜けないまま、もし抜けたとしても、首を持ち上げてまわりを見回すという意欲がないせいか、うっぷしたまま泣いてしまいます。 足腰はよく動くので、足で蹴ると音が出る「Kick'in Piano」は大好きです。
でも手は、偶然に頭の周辺にあるおもちゃに手が触れた時だけ、恐る恐るつかんで、しばらく(おもちゃを)振り回して、あとはポイッ。
PTの先生に「おすわりができないのは、いつも新生児のように両手を曲げたまま頭の横にかざしていて、手で身体を支える方法を理解して
いないからだ」と言われてしまいます。
娘は相変わらず体重が少ないので、腕も細くて筋力がついていかない、ということもあるのでしょうが・・・。
抱っこする時も、同じ月齢の赤ちゃんだったら、そろそろ親の首や身体に手を回してくる頃なのでしょうが、とにかく手を前に伸ばして何かを触ったり掴んだりしようという素振りはまったく見られません。
おすわりはもちろん、はいはいやつかまり立ちも遠い夢・・・です。
本当に、一般の育児書と比較するつもりはまったくないのですが、やはりせめておすわりができてくれれば、娘にとっても少し生活範囲が
広がって、何か楽しみを見つけてくれるのではないかな、と思うのです。
今は、時間がある限りは私達が相手をしますが、一人でベッドに放っておくと、しばらくはKick'in Pianoをしたり、声を出して遊んでいても、気が付くと横を向いてイジイジして(と私には見える)寝てしまうのです。 おそらく普通の子より、昼間に何度も寝てしまうことが多いことも、夜長く眠れない原因なのかもしれません。

それと、先月からようやく離乳食を始めました。
体重が少ないのと、以前フォーミュラミルクでアレルギーの前兆を起こしたことがあったので、危惧していたのですが、今のところ消化機能は
大丈夫のようです。 ただやはり量は少ないし、起き抜けや眠たい時はまったくダメなので、こちらも時間通りとはいかず苦労しています。
「あかちゃんおせんべい」等を持たせると手の使い方を覚えるかしら?と掴ませるのですが、唾液が少ないせいか、おせんべいが唇にくっつくのを嫌がって泣いています。 食事の彩りを楽しませることができないと思うと、つい品数も少なくて一皿で済ませられるおかゆの類がどうしても
多くなってしまいます。 自分で手を出して食べる意欲を持ってくれたら、こちらももう少しスムーズにいくのでしょうか。。。

盲児も千差万別で、発達の仕方も学習の仕方も様々だとは思いますが、(何も教えなくても本能だけで筋力をつけられる子も勿論いるのでしょう)もし何か参考になる話があれば、お聞かせいただきたく思います。


Sさんの返事:
ご相談の件、参考になるかわかりませんが,R(現在2歳の小眼球症の女の子)の7,8ヶ月のころを思い出して書いてみます。
1.振って音のするおもちゃを口に持っていってしゃぶっていた
 その当時,一番目立ってやっていたことは,何でも口に持っていくということでした。手に触れてつかんだものは何でも口に持っていっていました。
 ガラガラや木の輪っかがいくつかついたおもちゃ(木製のおもちゃで直径3cmくらいの色とりどりの輪の中心に直径10cmくらいの輪が通っているもの)など,簡単に振り回せて,音のするおもちゃが好きでした。それをふったり、口に入れたりしていました。いろいろな形や素材でできている音のするおもちゃをできるだけたくさんまわりに置いていました。手に触れるたびに触ったり,振り回したりして,その中でもずっとつかんでいるお気に入りが見つかっていきました。オルゴールも置いておいて、鳴らすといつもにこにこして,体も動かしていました。
2.起き上がる訓練
 Rも足腰が強く、その反面手を余り使うほうではなかったように思います。ハイハイなどには、頭を持ち上げる訓練として、体操のようなことをさせた効果があったのではと思います。首のすわりがしっかりしない頃やらせていたのですが、うつぶせにして首から前と後ろで段差をつけます。つまり、首や頭を体より低くなるようにしておいて頭を上げさせる訓練です。これをしたらたちまち首が据わり、手の支えもついてきたように思います。
 それから離乳食をあげたり遊んであげたりするときに、親が支えになっておすわりさせますね。自分から起きておすわりできる以前に、親が座らせてあげて、支えなくそのまま座りつづけられるようになる練習をするのも体を起こす訓練になるのではないでしょうか。
3.離乳食
 私たちの場合,離乳食の導入に成功したとはいえません。いまだに、まとまった量を食べることがなかなかできないでいますので。
 ちょうど7ヶ月ぐらいからヨーグルト、おかゆ、うどんなどを与え始めましたが、食べる量はほんのわずかで、作る意欲も沸いてこない状態だったことを思い出します。それから一歳ぐらいまでほとんど同じような状態で、食べたり食べなかったりでした。一時は心配もしましたが、小児科の先生から「食事を楽しむことを忘れないで」というアドバイスをもらってからは、あまり気にならなくなりました。生活パターンが決まるまで、食事時間も量も一定しないのは仕方がないようにも思います。
4.生活パターン
 Rの生活パターンは、アメリカでプレスクールに行き始めてようやく決まるようになりました。昼間に遊んで疲れるからだと思います。ですが、休みの日になると,たちまち昼夜逆転することが多かったので眼科の先生に相談して、メラトニンという眠りの質を高める薬を毎日飲ませています。それを飲み始めて以降、まとまった時間ぐっすり眠ってくれるようになったので、私たちの生活パターンも安定し始めてきています。生活のパターンを決めるということはとても大事なことで、社会生活をしている私たち親にとって不可欠なことですが、私たちの経験では、気長に付き合うしかないのでは?というのが結論です。光を感じることで昼夜を判断できない分、音や行動で昼夜の区別をつけさせていくことが必要ですが、それをやっているつもりでも、Rはお構いなく夜中に起き出したり、昼にぐっすり昼寝をしてしまったりしていました・・・。
5.人見知り?家族以外の認識
 娘さんがOTなどの先生の訓練の時間中泣いているというお話を聞いて、私もRと行き始めた盲学校の育児学級を思い出しました。月に一回、筑波大付属盲学校の育児学級に通い始めたのは、一歳を過ぎた頃でしたが、毎回泣いてばかりいて2時間ほどの間中私にしがみついて大声で泣き叫んでいました。他のお子さんはみんな落ち着いているのに・・・。このように泣くのは、家とは違うところに来ていることを認識しているからだと先生から慰めのような励ましをいただいたりもしました。こちらに来てプレスクールの先生に慣れてからも、OTの先生が指導をはじめたころは、やはり泣いていて訓練どころではなかったようです。
 このごろは、目の悪い子供のための発達の専門家の先生と月一回、動物園や農場などに外出しますが、そこでもRは普段の様子ではなく、泣いたり、ぐずりぎみです。いまだに、不特定多数の人がいる場所では安心できないようです。どういう人がどれぐらいいるのか見てわかることができないんですから、仕方ないんでしょうかね。
 最近、泣いてしまいがちの娘さんは、人見知りや外の世界の認識をはじめたのではないでしょうか。しばらくは、訓練内容をどれだけ習得できるかというより、訓練の時間を習慣づけて生活のパターン化に役立てるぐらいの気持ちでおられたらどうですか。

  このごろのRは、一人で大分歩けるようになりました。 6月に州政府のプログラムをはじめたとき、夢のような目標だなと思っていた一人歩きが実現して、スタッフの先生方のお力添えにいくら感謝しても仕切れない気持ちです。
  一方、目押しは相変わらずですし、言葉については、ずいぶんたくさんのことを理解しているものの、自分で発する言葉が増えていきません。
月齢ごとに、私たち親にとって新たな悩みが出てきますし、忍耐が必要ですね。私たち夫婦も今は研究休暇という形なので、日本のときよりずいぶん時間的に自由なはずなのに、育児を楽しむ余裕などなく、正直かなり疲れ気味です。ですが、障害児をもった親御さんたちはみな、大変ながらもがんばっておられるのだと、貴方のメールからも励ましをいただきました。お互いがんばりましょう。(2003年11月)

** 以上、Tさん、Sさん、ありがとうございました。少しでも他のご家族の参考になればと、投稿してくれました。 我が家の場合も、年齢ごとに新たな悩みが出てきます。 長い道のりだけど、親にとっても子にとっても本当に勉強になる。 何でこう言う計画を立てて生まれて来たんだろう、、って思う事もあるけれど、でもね、きっと大切なお役目をいただいたのだと思います。 障害を持った人がいるから、やっぱり皆、寛容さや、感謝の気持を忘れずに生きて行かれるのだと思う。 いつか、それぞれがこの人生をゆっくりと振り返る時間が出来た時に、厳しい道のりだったけど、本当に良い人生だったって、親も子も思える事を願って、、。 これからも明るい未来を信じて、頑張りましょう。 皆さんからの質問や体験談も、お待ちしてます。


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