アトランティス・ゲート17
店内が悲鳴であふれかえる。人間の手から血がどくどくと流れている光景を見ればたとえザルジュの人間だったとしても悲鳴をあげずにはいられないだろう。それが平和なアトスともなればなおさらだ。ドレッドに銃口を向けたその男の手にはとがった矢が刺さり、テーブルの上に銃が落ちた。ドレッドはとっさにその銃を手に取り、その男に向けた。「何もんだ?」カーライルの情報が正しいならば、銃を持っている人間はドレッドやキーペイドのような「適合者」か、ケネスやキープの様な「受信者」のどちらかなのだが、このような態度と銃をとる手付きの器用さを見る限り、全く状況をつかめていない「受信者」ではなく、相当訓練を積んだ「適合者」だろう。それもキーペイドの様な正義を貫く組織でもなく、どこにも所属していないドレッドのような存在でもない、誰かに命令された適合者だ。つまり、組織的にこいつらは動いているということだ。「ちっ」男はポケットから錠剤を取り出して口に放り込んだ。その2秒後、男は吐血し、死亡した。 「毒薬だ。しかも相当強力な奴。」その男がはいた血を見つめながらドレッドは言った。「ど、どうして?」考え込むキープに、ドレッドは今まで推理したことを簡潔に話す。もちろんキーペイドや自分やオリビアのことは話さずに。「それじゃあつまり、僕たちはその悪い組織に狙われているってことですか?」「まだそうと決まったわけじゃない。ただ向こうが何かしらの目的を持ってこちらに関わってきていることは決まりだ。」「でも、どうしてオリビアなんでしょうか?どうして向こうはオリビアのことを言ってきたんでしょうか?」「え…?」一瞬オリビアの目が泳ぐ。「オリビアを奪えばおれたち3人はなにも目的がなくなるだろ。」「ああ、そういうことか。」視界の端に、オリビアの安堵の顔が見えた。男が電話している。「こっちで一人やられたぞ。」「ああ、こっちも任務は終わっていたが、2人とも死んでいた。」「今回の受信者はどうも不自然なんだが。」「ライフルを持っているやつていうのが悪かったんじゃないのか?」「まあ仕方ない。意味のある犠牲だ。」「そうだな。」