根府川の海
夏の海を左に見ながら東海道をくだって来た951レ。いつもは更新色牽引だが今日はサプライズ!国鉄色だ。稲沢までの短い道のり、さあ、海を見ながら走ってゆけ!私の文章よりも詩人茨木のり子の詩を紹介します。根府川の海根府川東海道の小駅赤いカンナの咲いている駅たっぷり栄養のある大きな花の向うにいつもまっさおな海がひろがっていた中尉との恋の話をきかされながら友と二人ここを通ったことがあった溢れるような青春をリュックにつめこみ動員令をポケットにゆられていったこともある燃えさかる東京をあとにネーブルの花の白かったふるさとへたどりつくときもあなたは在った丈高いカンナの花よおだやかな相模の海よ沖に光る波のひとひらああそんなかがやきに似た十代の歳月風船のように消えた無知で純粋で徒労だった歳月うしなわれたたった一つの海賊箱ほっそりと蒼く国を抱きしめて眉をあげていた菜ッパ服時代の小さいあたしを根府川の海よ忘れはしないだろう?女の年輪をましながらふたたび私は通過するあれから八年ひたすらに不敵なこころを育て海よあなたのようにあらぬ方を眺めながら…………。「対話」(昭和30)所収 撮影 2008年8月3日 東海道本線 早川ー根府川間