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ラジオと映画とちょっとジャジーな日々

ラジオと映画とちょっとジャジーな日々

渋谷毅さんのこと ♪-7

渋谷さんに会ってから1年半が経った。

その頃、私が担当していたのは、
2時間半の生放送。毎週20曲近く選曲していた。

ここ数年、音楽に関しては、新・旧・洋・邦・・・
自分の好き嫌いやジャンルに関係なく、
とにかく何千曲も聴いて、聴いて、聴き続けてきた。

そんな中で、私が渋谷さんに言った
「自分の番組でジャズをかけたいのです。」という思いは、

リスナーに「良い曲を聴いてもらいたい」という気持ちがあれば、
自然と行き着く選択のひとつだった。

でも、音楽を聴けば聴くほど「ジャンルで分ける」
ということに、強い疑問がわいてくる。

世の中には「良い音楽」というものがあって、

ただそれを楽しめばいいじゃない、と思う。

そういう意味で、ジャズは「ジャズ」という
ジャンルにしてしまうことで、とても損をしている気がした。

じゃ、どうすれば良いのだろう・・・と考えて、思いついたのは、
安易にも「誰かにジャズを紹介してもらおう。」ということだった。

私が頼みに行ったのは、あのライブ会場となった
ジャズバーのマスター、COOLさんだ。

マスターは「好きなことをやらせてくれるなら。」
という条件で、引き受けてくれた。

それこそ、こちらが願っていることだ。

COOLさんは、ジャズに関しては全然COOLじゃなくて、
熱い熱い思いを持っている。
そして、わかりやすく、楽しく「本物のジャズ」を紹介してくれた。

ワイド番組の中、15分の枠でスタートしたこのコーナーは、
半年後、スポンサーが付いて、
ゲストも交えての30分番組として独立した。

さらに、いつくかの幸運と、何より、ご本人の厚意によって、

渋谷毅さんを、

番組のゲストとしてお招きすることになったのだった。


あれから丁度2年が経っていた。

初対面で、失礼な質問と間抜けな会話を交わした
ローカルFM局のディレクターを、渋谷さんは覚えていてくれた。

番組収録の日、私はプラットホームに立って、
滑り込んで来た新幹線を、不思議な気持ちで見ていた。

「本当にあの扉から渋谷さんが出てくるのだろうか…」
と思いながら。

でも、渋谷さんは、ちゃんと現れた。
薄いグレーのシャツとジーパン姿で、ヒョイという感じで。

相変わらず全く「気負い」が無い。

相変わらず「気負いでいっぱい」の私は、
できるだけ深く頭を下げた。

心から「ありがとうございます。」という気持ちを込めて。

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(つづく)


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