神谷ちづ子・ついつい・一言

蕎麦屋とうどん屋の一番大きな違いって、

意識下の敷居の高さの違い・・じゃないですかね。

有名な蕎麦屋って、ついつい、緊張してしまいますもんね。

那須塩原の「石心」行ってきました。

石の心と書いて、「せきしん」と読みます。

知る人ぞ知る蕎麦屋の1つだそうで、

予約は不可、打ったお蕎麦が売れ切れ次第、

その日は終了してしまうらしく、

何回行っても「いつも、食べられなかった」という人もいます。

そのお店に、行ってみよう、ということになりました。

別荘が点在する、うっそうとした林の中、

道路に出ている目立たない看板の横の小道を入り、

狭い道を「ここで大丈夫だろうか」と心配しながら進むと、

風情のある日本家屋があります。そこが「石心」なんですねぇ。

到着する少し前、なにしろ、お昼を大分過ぎた時間帯でしたから、

お店に電話をし「今から伺いたいのですが、

お蕎麦、まだ、ありますか」と聞きましたら、

ちょっと怖そうな女性の声で「お蕎麦はありますが、

30分ほどお待ちいただくと思います」とのこと。

「待つのはかまいません、よろしくお願いします」

と、「客はどっちだ？」とかすかに思いつつも、

エライ下手に出ながら、行ったのでした。

家屋はとてもいい感じの佇まいです。

店の前に「小学生以上とさせていただきます」と書いた、

御断りが書かれてあります。

少し待つだけで席に案内されましたが、一枚ガラスの窓の向こうに、

みずみずしい木々が生い茂り、その先には、ゴルフ場の

一画が見えます。近くはゴルフ場らしい・・。

で、「高原野菜のお蕎麦」というのを私はいただきました。

もりそば、天ぷらそば等もあるんですが、

那須ですからねぇ、ついつい・・。

分厚い手焼きの器の上に、（客それぞれ、違う皿が使われている）

蕎麦と刺身のつまみたいな細切りの野菜が盛られ、

さらに細～く切った、やや甘めのきんぴらごぼうが、

こんもりと乗っています。そこに蕎麦つゆを掛けて食べるようです。

「きんぴらが甘めですから、まず、一口二口、味わってから、

あとは、お蕎麦と野菜ときんぴらを混ぜつつ、召し上がってください」

とのことです。食べ方があるようです。

さて。肝心のお味ですが、確かにすばらしいお蕎麦で、

不思議と野菜ときんぴらとお蕎麦が、いい具合に調和して、

「へぇ、こんな食べ方もあったんだぁ」という印象でしたね。

ただ、美味しいけれど、野菜の味が勝っているので、

蕎麦を食べている・・という強い実感を得にくい。

この高原野菜ときんぴらの蕎麦は、大人気だそうですが、

蕎麦自体をしっかり味わいたかったら、

もりそばを注文すべきでしたね。

お酒は出ません。

「石心」という日本酒は売っているし、

古い書き込みを見ると「白和えをつまみにお酒を飲みつつ・・」の記載もあり、

かつては、出したのかも、ですが、

「お酒は出ません」とのことでした。

ゆっくりつまみ食べながら、お酒を楽しみ、

最後にそばで締める・・という蕎麦屋ライフを期待する向きには、

少し物足りないかもしれません。

もっとも、車でしか行けないような場所ですから、

お酒が出なくて当然なのかも・・ですが。

とにかく、こんな奥まった所でも、いいお蕎麦を出せば、

客は絶えずに来るんですね。

一人で切り盛りしている女将が、

やや学校の先生みたいに厳しい口調の方で、

もう少し、愛想良くてもいいじゃないか・・とも思ったのですが、

こういう「気難しさ」も、魅力の一つなのかも、です。

水曜定休、11：30から14:30までの営業で、

蕎麦が無くなり次第、終了とのことですので、

運が強くお酒が無くてもＯＫ、という方は、是非、お試しあれ。