パラグアイに日本のお城が建っている・・ことは、
以前にもブログでご紹介いたしました。
石垣を築き、宮大工を日本から呼び寄せ、瓦を日本で焼き、
でもあとは、わずかな現地作業員と城主である前原さんだけで、
試行錯誤しながら10年もかかって建てた・・というお城です。
観光客が押し寄せても困る、ということで内部はガランとしたままですが、
日本の城の建築様式に則った、立派なお城です。
実は「どうして、そんなもの、建てたんだろう」
というのが、私の密かな疑問でした。
前原さん自身も「成金が酔狂で建てたと、普通は思うだろう」と言っています。
そりゃあ、そうだろうと思います。
今回、その前原弘道氏が「築城を語る」という本を出しました。
「中央公論事業出版」の出版で、定価1400円ですが、
1冊2000円ぐらい掛かったそうです。
日本に何度も通って、ようやく出版までこぎつけたわけですが、
何故、この本を出したかと言うと、「父親の遺稿を本にしたかったから」。
そもそも前原家のお城は、弘道氏の父親である深氏が、
「なにがなんでもパラグアイに城を建てなくてはいけない」との
強い意志の下、一人でコツコツ始められていたものなんですね。
敷地内の岩山の、岩を砕き、地盤を整える・・ぐらいまでいって、
でも深氏は、81歳の時、事故で亡くなられてしまった。
亡くなられて、深氏が一人こっそり認めていた草稿が残ったのでした。
それは深氏が、お城を完成させた後に、本として世に残そうと思っていたもので、
日本で人に騙され、倒産し、裸同然で家族一同、パラグアイに移住して、
結局は大成功して財をなし、パラグアイ日本人会会長も勤め上げるのですが、
その間、日本の内外で、様々なことを見、経験するなかで、
改めて日本人として持つべき理念、
世界に対してあるべき忠実な生き方を考え、
「パラグアイに日本の城を建てなくてはいけない」との結論に至った、
その思いが、丁寧に綴られていたのです。
息子の弘道氏は父の思いを継いで、城も完成させ、
今回、とうとう遺稿も、出版してしまった・・わけでして。
本は、深氏の遺稿と、その補足として、移住以降の前原家の歴史を、
弘道氏が綴った、二部構成になっています。
特に深氏の文章は、いわゆる「読みやすい」文章ではないのですが、
読んでみて、しみじみと感動します。
こんな風に、まじめにまじめに、日本や世界のことを思い、
まじめに真摯に働き、生きて来た人達がいるんだなぁ・・という。
「私みたいに、目先の小さな利益にすぐ飛び付き、
みえないものへの感謝もなく、自分、自分と生きていちゃあ、
そりゃあ、成功はせんよなぁ・・」
という我が身への反省も、私はしましたね。
もし、手に取る機会がありましたら、ぜひ、ご一読を。