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コップを空にすると、暁は薬を取り出した。
「薬飲んだら、もう一眠りしな。」 そう言って水の入ったグラスと、封を切った薬を圭に持たせた。 「粉・・・無理。」 圭は持たされた風邪薬を見て固まった。暁が買ってきた風邪薬は顆粒状のものだった。暁は予期しなかった出来事に参ったなぁと頭をカリカリとかいた。 「どうしても無理?」 暁の問いかけに、圭はすまなそうにうつむいた。 暁は2,3秒考えて、その手から薬を取ると、水と一緒に自分の口に含んだ。それから、スルリと身体を左側にずらして圭の後頭部を右腕で支えると、左手で顎を上げて、口移しで薬を飲ませた。 圭の喉がコクンと鳴って、見事に薬は食道を通った。 「飲めたじゃん。」 圭は何が起きたのかわからず、腕の中でキョトンと暁を見上げていたが、じわじわと状態を理解すると、うわっと身体を起こした。 「今、何した!?」 「薬飲ませただけだよ。」 暁は、勢いよく起き上がったことでまた頭痛が襲ってきた圭を、落ち着いた声でなだめると、横になるように促した。 圭は布団を頭までかぶってズキンズキンと来る痛みと、その合間に湧き上がる、モヤモヤとした怒りのような惨めな気分と戦っていたが、やがて薬が効き始めたのか、再び眠りに落ちていった。 それから8時間以上圭は眠っていた。途中暁が着替えさせたり、濡らしたタオルで体を拭いたりしたがぐっすりと眠っていた。夜半過ぎに、圭の額が自分の手の平の温度と余り変わらなくなったのを確認してから、暁は毛布を借りて壁にもたれかかって眠った。 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・8 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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