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「離せ!殺してやる」 起き上がることもままならなかった人間のどこにこんな力が残っているのか、殺気立った暁を圭は必死で抑えた。 山崎は暁の形相に青ざめ腰を抜かした。 「もうやめて!アキラさん!」 圭は暁の背中にしがみつき涙が止まらなくなった。 「アキラ!」 衛が飛び込んできた。暁の手首を掴んで無理やりナイフを外す。加藤と坂下も息を切らせて入ってきた。 山崎は坂下の姿を見るなり叫んだ。 「やめろー!」 パ――――ン 暁が叫ぶと同時に、加藤が山崎の頬を全力で張った。吹っ飛んだ山崎の上にさらに馬乗りになって肩を揺さぶる。 「いい加減にしろ!何やってるかわかってるのか!お前!殺されても当然のことしたんだぞ!!もう!目ぇ開けろよ!!」 山崎の顔にパタパタと加藤の涙が落ちる。張られた頬が急にジンジンと痛み出した。落ちてくる涙に加藤の体温を感じた。 加藤は腕でごしごしと涙を拭いて振り向くと、倒れ込むようにして、衛と暁の前で頭を床にこすり付けた。 「アキラさん、すみませんでした。こいつどうかしてたんです。許してやってください。」 山崎は驚いて起き上がる。 「やめろよ。何の真似だよ。」 「こいつが、こんなになったのは、俺にも責任あるんです。ずっと傍にいたのに、何も気付かなかった。いや、知ってて知らない振りしてたんです。友だち面して、利用してるだけだった。・・・ごめん。」 最後の一言は、山崎に向けて言った。 山崎は唇を噛み締め、うつむく。
それまで黙っていた坂下が、持っていた封筒を山崎に差し出す。 「これは、もう、必要ないのではないですか?」 山崎はいったん坂下を見上げ、それから封筒に目を落とした。手を伸ばして封筒を受け取る。ゆっくりと立ち上がると、ポケットからライターを取り出し、暁の前で封筒に火をつける。お祝いのケーキを載せるはずだった皿の上に、火のついた封筒を置いた。隙間から写真が燃え上がるのを見つめながら、山崎は黙ったまま涙を流した。 暁は、封筒が全て燃え、灰と真っ黒になった鍵の残骸を見届けると、それまでぎりぎりで保ってきた意識を手放した。 ---
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