|
カテゴリ:オリジナル
圭の心臓は、壊れるんじゃないかと思うほど波打った。言われたことの意味処理に脳が追いつかない。 「な・・・んて言ったの?」 声が震えた。 暁は身体を離し、目を見開いている圭の顔を見ると、少しだけ苦笑いを浮かべた。両手で圭の髪を後ろに撫でつけ、その形のいい額にキスをする。 「ヤマサキの家に閉じ込められている間、思い出すのはお前のことばかりだった。マモルから、お前が脅迫のネタに何となく気づいてるって聞いて、実家にいる時も気が気じゃなかった。お前のことが気になってしょうがなかった。会いたくて、たまらなくなって。それで飛び出してきた。」 圭は夢うつつで、顔をほてらせ、暁の唇の動きをぼうっと眺めていた。ふわふわと身体が浮いているようだった。 暁は、圭の手を握り自分の唇に当てると、教会で神に懺悔をするように両膝を立てて目を閉じた。 「俺は、彼女が死んでから、誰も抱いてない。同じことが起きるのを恐れてたし、今でも恐れてる。近づきすぎると、自分がコントロールできなくなって、相手を傷つけるようなことを平気でしてしまう。だから誰も自分のテリトリー内に入れたくなかった。そのくせ誰にでも抱かれた。抱かれるのは楽だったし、逃げるのも距離を置くのも簡単だったから。結局俺は、誰も近づけたくないのに、独りにもなれないんだ。」 暁は一息に、でもとても穏やかな声で話した。圭は暁の告白を聞きながら、浮いていた足が地についた。片手をはずして、目の前で跪く暁の髪をそっと撫でる。暁が顔を上げた。圭は見つめてくる瞳を、今度は逸らさなかった。 「ケイ。俺は、お前のこと抱きたい。でも俺はいつかお前のことも壊してしまいそうで怖いんだ。・・・お前をヤマサキのようにしたくない。」 暁のむき出しの心が伝わってきて、圭は思わず暁の頭を両腕で抱きしめた。頬を寄せ、いったん硬く目を閉じると、決心したように目を開けた。 「僕は、ヤマサキ先輩のようにはならないよ。」 暁は身体を離して、意図を汲み取ろうと圭の顔を覗いた。圭はふんわりと微笑むと、そのまま目を逸らさずに言い切った。
「だって僕は、あなたが思うほどあなたのこと好きじゃないもの。」
暁に安心を与えられるなら、これくらい何でもないと圭は自分に言い聞かせた。暁は肩の震えで、それが圭の本心ではないことに気がついていた。それでも目を逸らさずに言い切る圭の強さに涙が出そうになった。
「だから、僕を抱いてよ、アキラさん。」 圭が暁の首に腕を絡めて、唇に触れるようなキスをした。暁は離れた唇を追いかけるようにして捕まえる。目が合うと、気持ちが溢れだしたようにお互いの唇を貪り合った。
---
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[オリジナル] カテゴリの最新記事
|