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2017.03.12
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 ひろし君の家は和菓子屋であるが、隣家は果物屋と寿司屋であった。果物屋のほうはいつの間にか店の半分で乾き菓子も売るようになり、和菓子以外にも乾き菓子も扱っていたひろし君の家と競合相手になってしまった。そのためひろし君の家と左隣の果物屋はかなり険悪な雰囲気となり、お互い口も利かない隣人となっていった。
 はじめのうち同世代の子供同士は、お互いの家に行ったり来たりで仲良く遊んでいた。しかしながら親同士が余りにも不仲であったため、子供同士も次第に遊ばなくなり、お互いに悪口を言うようになってしまった。子供同士はなんの恨みもないのだが、所詮は親の影響力に飲み込まれてしまうのである。

 だが右隣の富久寿司とは、お互いに商売上の不利益が全くないどころか、冨久寿司は職人のおやつをひろし君の店で買い、ひろし君の家では、来客時の出前や遠足の折詰寿司などを冨久寿司から買っていた。だから子供同士も非常に仲が良かった。
 冨久寿司の4人の子供たちは、長男が大学生という兄弟姉妹で、ひろし君の家よりだいぶ年齢が上だった。ただ末っ子の信ちゃんだけが年の差が開いており、ひろし君より一つ下だった。だから信ちゃんとひろし君は波長が合いよく遊んだものである。

 信ちゃんちの小父さんをはじめ、長男や職人さんは将棋好きだった。だからりっぱな将棋盤と駒が2台もおいてあった。それをひろし君や信ちゃんが見逃すはずはなく、将棋の指し方を職人さんに教えてもらったのだが、やはり小学生低学年のひろし君たちには、まだ難し過ぎてなかなか馴染まない。それで本将棋を指すのは諦めてしまったのだが、長男から別の遊び方をいろいろ教えてもらった。

 囲碁のほうは本囲碁以外には、五目並べくらいしか遊べないのだが、将棋のほうはかなりいろいろな遊び方がある。まずは「ハサミ将棋」で、使う駒は「歩」だけであるが、この歩は飛車のように縦横無尽に動かすことが出来、自分の駒で縦横に相手の駒を挟めば取れるというシンプルなルールなので、ひろし君にもすぐ覚えることが出来た。
 次は「将棋崩し」だ。これは駒箱に駒を全部入れて、「ガチャガチャ」と振りひっくり返し、トンと将棋盤の真ん中に山を作る。そして、その山から、指一本で、駒を崩さないように抜き取っていくゲームで、指先のコントロールと集中力が勝敗を決する。
 それから「将棋ドミノ倒し」。その名の通り全ての駒を立てて並べ、一番後列の駒をはじいてドミノ倒しの気分を味わう。勝負と言うより気分転換を狙ったゲームと言えよう。

 もうひとつは「まわり将棋」である。金4枚をサイコロに見立てて盤上で振る。表が出たら1点、横に立ったら5点、縦に立ったら10点、斜め部分で立ったら「センコ立ち」といって50点などと数え、双六のように将棋盤の周りを点数分だけ動き回ってゆく。スタート時は「歩」からはじまるのだが、一周すると裏返しになり、さらに一蹴すると「香車」に出世するのだ。また次が「桂馬」「銀」「角」「飛車」『王将」といった順である。
 こうして一番早く「王将」まで出世した人が勝ちというルールなのだ。またこれにはいろいろなローカルルールが発生し、サイコロ代わりの「金」が盤上から落ちたらオシッコで0点、重なったらウンコで目の数だけ戻る、相手の駒を追い越すと相手は一回休みとか、端に止まると次の端にジャンプできたりする。

 ほかにいくつかの遊び方があったが、ひろし君たちはこの「まわり将棋」に一番はまり、夢中になって気がついたら夕方になってしまった、ということが何度もあった。現代流にいえばゲームボーイのような存在だったのかもしれない。だからこそ将棋には、囲碁にはないノスタルジックな親近感が湧いてくるのだろう。

 


作:五林寺隆

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最終更新日  2017.03.14 12:18:54
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