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2018.02.10
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 ひろし君の家は和菓子屋だが、父の紘一郎と母のみつ子の二人が経営者兼主な労働者でもあった。だから毎日毎日が忙しくて、子供達の相手をしている余裕がない。そんな状況だから、病気にでもならない限り子供たちはほったらかしだ。と言うより子供たちを、労働者の一員とみなしていた。

 かろうじてみつ子は、店が暇な時期の父兄会にだけは出席したことがあるが、長時間かかる遠足や運動会などの学校行事には参加したことがなかった。それでお弁当はいつもお隣の富久寿司に頼んで、のり巻きの折詰を作ってもらい、それにデザートとしてバナナを一本添えるというのが定番であった。
 ひろし君はこのお弁当には十分に満足していた。料理下手なみつ子の不味いお弁当よりも何十倍も美味しかったからである。だから弁当自体には不満はなかったのだが、級友たちのほとんどが母親同伴だったため、一緒にお弁当を食べる相手を探すのが面倒であった。
 
 今回の遠足は野猿峠を経て平山城址公園まで歩くコースだ。事前に親友の小場君が親は来るけど一緒にお弁当を食べないかと誘ってくれたのだが、幸い山村君という級友の親も不参加ということで、お弁当は彼と一緒に食べる約束をしてしまった。今回はきっと楽しい遠足になるだろうと、ひろし君はかなりはしゃいで山道をどんどん先に歩いた。

 そしてやっとお弁当の時間である。ずっと先頭を歩いていたひろし君は、後列のほうに紛れているはずの山村君を探した。なぜかなかなか山村君は見つからない。もう皆が三々五々親と一緒にお弁当を広げ始めている。山村君は何処に行ってしまったのだろうか・・・。

 ひろし君がやっと山村君を見つけると、彼は母親らしき女性と一緒にシートに座ってお弁当を広げているではないか。そのときやっとひろし君の姿を見た山村君が、ひろし君のほうに走り寄ってきた。そしてショッキングな言葉を吐くのであった。
「悪いけど来ないつもりだったお母さんが来ることになったので、君は一人でお弁当食べてくれる。」

 予想外の展開にひろし君はがっかりしてしまった。親友の三山君は風邪をひいてお休みだし、いまさら一度断ってしまった小場君のところへ行くことも出来ない。仕方がないので大きな樹の下に一人座って、お弁当を広げることにした。

 ひろし君が一人淋しくお弁当を食べ始めていると、なんと普段印象の悪かった近藤君が駆け寄ってきた。そして「あっちで一緒にお弁当を食べようよ」とひろし君の手を取り始めるではないか。
 彼の指さす方向には、彼の母親がにっこりと微笑んでいる。その微笑みはひろし君にとってまるで観音様の微笑みのように感じられた。嬉しくなったひろし君は、近藤君と一緒に彼の母親のもとに歩きはじめていた。

作:五林寺隆

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最終更新日  2018.02.11 10:50:06
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