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カテゴリ:ひろし少年の昭和ノスタルジー
ひろし君の家では、和菓子の製造販売をしているが、一番売れていたのは一個10円でアンコたっぷりの大福であった。多くの客が一度に10個以上買っているし、20個30個と注文する客もいた。当時の大福は純粋な餅で作っていたので、翌日になると固くなってしまう。 さて大福談義が長くなってしまったが、春先になるとヨモギの葉を使った草餅や草大福の美味しい季節になる。それでヨモギの葉を菓子材料店から仕入れるのだが、その分だけコストが高くなってしまうのに、売価は普通の大福と同じ10円なのである。 ただ気を付けなくてはいけないのは、ヨモギの若葉は猛毒のトリカブトと形が似ているということである。それで父・紘一郎はひろし君にヨモギの見分け方を教えた。「ヨモギの葉はトリカブトのように光沢はなく、その裏側は白くて細かい毛が生えている」そして現物で比較すると全くその通りだった。 さて最初は紘一郎と一緒にヨモギ摘みをして楽しかったひろし君だったが、二度目以降は一人で摘みに行かねばならなかった。忙しい紘一郎は、最初からヨモギの見分け方だけ伝授すれば、ひろし君一人で十分と考えていたのである。そしてヨモギ摘みはひろし君の定番の仕事となってしまったのだ。 それでひろし君が答えたのは、「ウサギの餌」だった。それを聞いたクラスメイトは、「お前の家でウサギなんか飼っていたっけ?」と怪訝そうに質問してきた。「いやーっ、近所で飼っている家があるのであげるんだ」と言いながら、ひろし君は逃げるように現場から離れていった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.07.05 17:46:41
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