ネット文芸館 木洩れ日の里

2018/09/21(金)10:15

犬の幸せって、なんだっけなんだっけ 1

小説(155)

(人間嫌いな犬の物語 2)「江戸衆や 庵の犬にも 御年玉 」  小林一茶 、 ワンワン、                  暑い夏を忘れてしまいそうな爽やかな風が吹き抜ける、高原の夏、緑に囲まれた広大なドックランでは、犬たちが芝生の丘を登り、下り、跳んだり、走ったり、踊ったり、ボールを追いかけたり、おもちゃを咥えたり、木陰で愛を囁くカップルもいたり、ドッグカフェで寛ぐ老夫婦の犬もいて、犬たちは自由気ままに遊び暮らしていた。ワンワン、 そこは、信州八ヶ岳山麓にある、超豪華なワンワンロイヤルリゾート『綱吉』のドッグランだった。豊かな自然の中、五万坪の敷地に豪華な犬専用ホテルが建っている。  犬の部屋は、ベッドはセミダブル、個室の露天風呂は天然温泉かけ流しだ。広いテラス付きで、犬の目線の高さに、外の様子を観察できる見晴らし窓がある。  夕食はバイキングの食べ放題、獣医師監修の特選ブッフェまで用意されていた。食後には、犬用の自動按摩椅子に座るのもよし、カフェバーで寛ぐのもよし、カラオケで歌うのもいいのだ、ワンワン。---ここは犬の天国じゃな、ワンワン---  清潔、安心、健康、リラックス、犬にとってはいたり尽くせりの施設だった。犬の憧れの施設、夢のような施設、犬が誇れる施設、まさに、犬のパラダイスだった。  介助犬、セラピー犬、盲導犬、警察犬、牧羊犬や、闘犬、犬マラソンで優勝した犬、などが引退後にご褒美でこのリゾートへ入居することも多い。 犬にとって、夢のような豪華ワンワンロイヤルゾート『綱吉』を開発したのは松平綱吉(つなきち)という、男である。ワンワン、彼は、江戸時代に「犬公方」と呼ばれた五代将軍徳川綱吉  の末裔である。  今から300年前のお江戸は元禄時代、松平綱吉の先祖である、五代将軍徳川綱吉の「生類憐みの令」は天下の悪法だとして、言い伝えられているが、それは、人間にとって不都合だっただけのことで、お犬様と呼ばれた犬たちにとっては、天国のような時代だったのである、ワンワン。 犬に失礼な態度をしてはならない、犬を軽蔑してはならない、犬を虐待してはならない、もし、犬に怪我をさせたり侮蔑した人間は、島流しや切腹などの、極刑に処されたのである。  犬を紐で繋ぐなどというのはもってのほかで、犬に咬まれても人間が我慢しなくてはいけない、人よりお犬様を大事にする法律であったのだ、ワンワン。お陰で、犬は江戸の町を自由に闊歩できた。ワンワン。---わしは犬じゃ、侍ども、控えろ!お犬様のお通りだい!---ワンワン  さらに、徳川綱吉は無宿犬や、捨て犬、野良犬、迷子犬のために、今の中野ブロードウェイやサンプラザのあるあたりの30万坪の広大な敷地に、充分な食事ができ、自由な時間を過ごせる、御囲(おかこい)という、お犬様の御殿を造り、10万匹以上の不幸な犬たちを救い、住まわせたのだ。ワンワン  江戸の町には無宿人が溢れ、満足に飯が食えずに苦しんでる町民がいた時代にである。(つづく)作:朽木 一空 ※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。 またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村

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