テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:Short stores
真面目に、あなたがずっと女性だって思ってたわ。 正直言うとね、最初あなたの書くものを読ませてもらった時、ショックだった。 ランキングがずば抜けている人達のものを読んでも、勿論その人たちには素晴らしい才能 があったり、凄い数の読者がいたりするけれど、私の心はその人達が描く世界に 惹きつけられることはなかったの。 偉そうに聴こえたら、ごめんなさい。 でもあなたの書いたものを読んだとき、こんな世界を描ける女の人がいた、と言うことに 嫉妬さえ感じたわ。 でもそれは醜い感情ではなくて、羨望とか自分自身への失望とかが、 入り混じったものだったわ。 しかももっとわたしを驚かせたのは、遊びがそこにあったことだった。 わたしは書くことで遊べる程の余裕なんてない。 ただ自己満足的に精一杯書いている。 でもその女性、つまりあなたは、余暇を楽しむ程度の余裕をもって、 しかも周りの人たちとの言葉遊びも含めて、書いていた。 その女性には、ちょっとした雑誌のショートストーリィーの連載くらいはこなせる ユーモア溢れる、切れのいいものを書くだけの力は十分にあった。 けれどそんなことはどこ吹く風と言わんばかりに、その場所の居心地の良さを楽しみつつ、 コミュニティのリーダー的存在として求められ君臨していた。 ちょっと大げさかもしれないけれど、わたしにはそんな風に見えていたの。 そんな人が、私の書くお話程度のものを読んでくれることに、驚きもしたわ。 一体私の書くもののどこに、人の気を引くようなものがあるのかしらと。 前に一度、あなたに長いものを書いて欲しいと思ったことがあった。 ショートではなくて、そしてもっとシリアスなものを、書いて欲しかった。 それをわたしは読んでみたいと思ったから。 でもそれも勝手な要求だったと思うわ。 そしていつしか、だんだんにあなたが本当は男性だと言うことに気が付きはじめた。 そしてあなたに聞いてみた。 あなたは男性だった。 それでわたしは、少しほっとしたの。 もし女性であなたのような話が作れたら、いつかアーシュラ・K・ル・グィンに なってしまうと。 私を笑わないで。 本気でそう思っていたのだから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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