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のんびりおまかせ60代

国語学(専門)

【課題】
日本語における標準語と方言の問題について、著者の考えに基づき詳しく説明しなさい。
その際、方言については著者の掲げた例以外のものも付け加え示すこと。
(4000字、2単位)

○参考図書
「ことばの世界」北海道方言研究会叢書、第五巻
「方言と共通語」河出書房新社


この科目を選んだ理由は、「テキストが薄い」ことが第一だったと思う。
同時に、「国語学」というのだから、日本語についての学問だろうと想像し、
さらに「課題」を見て、何となく取っ掛かり易い気がしたのも理由であった。

・・ところが・・

テキストを手に取り、まず「?」と感じたのが「折口信夫」という著者名。
国文学や民俗学についての知識は少ない私だったが、
「折口信夫」という名前はどこかで見聞きしていた。
その印象では「随分昔の人」という気がしていたので、
「この人はまだ生きている人だったのか?」と思ったのである。
そんな疑問を抱きながらテキストを読み始めると・・「何だ、これは?」。
旧字体・旧仮名遣いの、まるで「古文」のようなテキストなのである。
あわてて発行年月日を確認すると
「昭和24年6月30日初版、平成5年9月30日発行」とある。
ちなみに、折口信夫をネット検索してみたら
「1887~1953、民俗学者・国文学者・神道学者。歌人としては釈超空」などと説明がされていた。
つまり、彼が亡くなる四年前に発行されている。

昭和24年? って、私もまだ生まれていませんよ。
どうしてこんなテキストが生きているのだろう。
つまりそれは、それほど価値の高いものだからなのかもしれない。

というわけで、テキストの薄さからは想像できないほど
読みにくいテキストと取り組むこととなった。

テキストが読みにくかったので、
もう少し読みやすい彼の著作がないものかと図書館に行くと、
ズラーッと「折口信夫全集」が並んでいて、
これまたどこから手を付けたらよいのかわからない分量。
それを見て、「折口信夫って、すごい人だったんだ!」とあらためて実感した。
彼の他の著作を読むことはその時点で簡単に諦めて、
レポートを書くために借りてきたのが上記の参考図書である。

レポートを読み直してみると、多分この時は、
テキストを全部読みこなさずに書いているように思う。
テーマが「標準語と方言」なので、私は自分の住む北海道の方言とアイヌ語の関係、
それと標準語の関係でレポートを書きたいと思った。
北海道の地名はほとんどアイヌ語に由来しているし、
きっと言葉にもアイヌ語が混じっているのではないかと想像したのだが、
これが全く予想と外れていた。
私の「国語学」での一番の収穫は、
「日本人はアイヌ語を絶滅させようとした」という事実を
はっきりと知ったことであった。

それまでも、アイヌ民族を蹴散らすように和人が北海道を植民地化したことは、
ぼんやりとした知識としてはあった。
そこで展開されたアイヌ民族の悲劇や、いまだに残るアイヌへの蔑視や差別なども、
多少は知っている積りである。
しかし、それは本当に「多少」であった。
北海道に住みながら、すぐ近くで暮らしているアイヌ民族の血を引く人たちについて、
私もまた「無関心」に近かったことを痛感したのだある。

私自身は、アイヌの人たちに対して「蔑視」「差別」をしているつもりはなかった。
小・中・高校時代にもアイヌの友人達がいたけれど、
すでに言葉も生活習慣もまったく「日本人化」していて、
顔立ちで「ああ、アイヌ系の人だな」とわかる程度だったし、
面と向って「あんた、アイヌでしょ?」などと聞いたりすることも、
私は見聞きしたことがない。
なんとなく、そのようなことに触れるのもタブーのような感じで、
その人たちが心の底ではどのように感じていたのか、聞いたこともなかった。

しかし、参考図書を読むうちに、私は愕然としたのだ。
固有の言語や文化を持っていたアイヌの人たちに対して、
徹底的な「恥と蔑視」による教育で、アイヌ語を使うことを禁じていたのだ。
心優しく、戦うことを好まず、つつましく生きていたアイヌの人達は、
自らの言葉を「恥」と感じざるを得ない状況に追い込まれ、
やがて自らの言葉を失うことになっていったのだ。

だから、私が当初想像したような「アイヌ語との融合」はなかったのだけれど、
「アイヌ語」と「日本語の古語」には共通点も見られるということも知った。
それを考えると、アイヌ語を消滅させて日本人化しようとした行為は、
ひょっとすると「日本人のルーツに繋がる民族を消そうとした」という、
大きな歴史の流れの中では「尊属殺人」になりそうなことだったのかもしれない。

話は本題とは離れてしまったが、
レポートにもこのあたりの発見や驚きを書いている。
レポートの構成は、
1.現代における標準語と方言のイメージ
2.日本人の特徴と言葉
3.標準語のなりたち
4.標準語の普及と方言、その後の課題

評価はあまり良くなくて、「C」であった。
多分、「著者の考えに基づき」という部分が不明確だったのではないか。
それも当然なことで、
このテキストを充分に理解できないままに書いていたのだから。
そんなレポートでも、とにかく通ったということで嬉しかった。

コメントには、「エッセイに終わらぬように注意」とあった。
それと、参考図書の刊行年月や編者名も入れること」と、
参考図書の部分に書かれていた。
私はこの時まで、参考図書についてはどこまで記述すべきか知らなかったのである。


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