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のんびりおまかせ60代

早世した友の思い出

早世した友の思い出

ふと、早世した中学時代のクラスメイトを思い出した。
彼女は中学時代は元気なスポーツ少女だったけれど、
成人した頃から「膠原病」に罹った。
彼女とはさほど親しいわけでもなかったので、
彼女の病気のことを知ったのは、何年ぶりかのクラス会の時だった。
幹事だった私に、彼女は電話をくれたのだった。
「退院はしたんだけど、髪は抜けるし歯は抜けるし、肌はボロボロさー。
 オバケみたいだからみんなに会うの恥ずかしいんだけど、
 みんなに会いたいよ」
私は驚き戸惑いながらも、
「病気のせいなんだもの、恥ずかしいことないよ。
 みんなも会いたいと思ってるよ。ぜひ出席して!」と誘った。

クラス会での彼女は、想像していたのとはまったく違って、
昔どおりにとても明るく元気だった。
久しぶりの同級生との再会を、心から喜んで楽しんでいた。
「クラス会が夜で良かったよ。お日様に当たったらダメなんだって。
 だから、昼間は外に出られないの。やっぱりオバケだねえ」
そんな悲しいことも、彼女は笑いながら話していた。

その次に彼女の声を聞いたのは、
何年か後のやはりクラス会の出欠の返事だった。
病院からの電話であった。
「今ね、入院中なんだ。だから、残念だけどクラス会には出られない。
 でも、みんなに会いたいよー。
 会ったら元気になるかもしれないのに、外泊はダメだって」
「早く元気になって、次のクラス会には絶対に会おうね」という私に、
彼女は言った。
「ねえ、私が退院したら、クラス会やってね。約束だよ」
私は、
「うん、わかった。退院したら連絡してね。
 遠くの人は無理でも、近くの人たちには声をかけて集めるからね」
と約束したのだ。

それからしばらくして、彼女と親しい友人から退院したことを聞いた。
しかし、まだ体力が戻っていないようなことを聞き、
「じゃあ、外出できるようになったら教えてね」と言って別れた。
彼女本人からの連絡はなく、気になりながらも時は過ぎていった。
そして・・、彼女の死の知らせを受けた。

その時の私の頭の中には、
「私が退院したら、クラス会やってね」という言葉が駆け巡っていた。
葬儀には、多くのクラスメイトが駆けつけた。
病気でも明るく元気にふるまっていた姿や、
「みんなに会いたいよー」と言った声がグルグルと脳裏を駆け巡り、
私は黒枠の写真に向って「ごめんね、ごめんね」と呟いていた。
最後にお棺の中の彼女の顔を見たとき、
私は耐え切れずに涙を流した。
彼女がどんなに友達に会いたいと思っていたのか、
その瞬間に強く感じたのだ。
私自身は、中学時代の同級生に心底から会いたいと思う気持ちは乏しく、
彼女の痛切な願いをわかることができなかったのだ。
それが本当に申し訳なくて、辛くて、苦しかった。
私はその時初めて、彼女と友達になれたのかもしれない。
彼女が私を友達だと思っていてくれたのに、
私は気付いていなかったことを、
こうやって書きながら思い返している。

葬儀から何日か後、私は彼女の夢を見た。
夢の中で私は彼女に謝っていた。
でも彼女はニコニコして笑いかけてくれているばかり。
ふと気付くと、私よりずっと背の高かった彼女が次第に小さくなってゆく。
そして最後には、かわいい赤ちゃんとなってしまう夢だった。
目覚めてから私は、その不思議な夢を思い出し、
(きっと彼女は、私にサヨナラを言いに来てくれたのだ。
 クラス会の約束を果たせなかった私に、
 「気にしないで」と伝えてくれたのだ。
 赤ちゃんになったということは、次の世界に誕生したということだ)
と、勝手に解釈して心が少し軽くなった。

彼女は30代になるかならないかで、この世を去らなくてはならなかった。
でも彼女の死は、寿命だったのだと納得できる死だ。
病気というどうにもならない宿命を、
彼女は健気に明るい顔をして受け止め、
私たち同級生それぞれの心に、何かを残していってくれた。
人は誰でも死ななくてはならない。
だからこそ、一回だけの死は大切にしたいと思う。
周囲の人を、憎悪や苦しみの心に巻き込むような死に方はしたくない。
「別れる淋しさや悲しさ」は避けようがないとしても。

(2005年06月26日)


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