2009/06/29(月)22:03
わらしべは もどらない -マイケル・ジャクソン-
マイケル・ジャクソンさんの死。
大きすぎる富は、人を不幸にするものなのでしょう。
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男は転んだ拍子に、わらしべをつかみました。
ついてないなと思ったものの、そのわらしべにアブをくくりつけると意外に楽しい。
すっかり気分も良くなり、男はふたたび歩き始めました。
その後、わらしべを蜜柑と、蜜柑を布と、布を馬と交換しました。
そしてついには、男は長者の家を手にいれたのです。
長者になった男は考えます。
村人に、富を少し分けてあげようと。
貧乏だった男が、村人に同情したのも無理もないことでした。
男は村人に富の一部を分け与え、村人も喜んでいるようにみえました。
しかし間もなく彼の耳に、村人の声が聞こえてきました。
あいつはテングになってないか、運がいいだけなのに。
あいつがあれほど、財産を持っているのはおかしい。
金持ちのくせに、これだけしかくれないのか。
あぶく銭だろ、もっとよこせ!
村人が怖くなり、誰も信じられなくなり、男は屋敷の外に出られなくなりました。
大きく荘厳な屋敷は、まるで頑強な男のための牢屋でした。
今、わらしべに縛られているのは、アブではなく男自身。
暗い屋敷の中から、窓越しに明るい空を眺めて彼はつぶやきます。
わらしべにつけた、あのアブの羽、きらきらして綺麗だったな。
でも、アブには気の毒だった。
もしあの時に戻れたら、あのアブの縛りを解き、空に逃がしてやりたい。
しかしそれが叶わぬ願いであることは、男が誰よりも一番よく知っていました。
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(注)このお話は私の創作です。紛らわしい掲載方法ですみません。