その花の記憶のなかに
にほんブログ村 近所の空き地に、白い花が咲いてひさしい。だれかの帰りを待つように、その白い花は長く咲き続けている。最近までこの場所には、家が建っていた。その家の高齢のご婦人は園芸が好きらしく、花が多い庭だった。ある夜、救急車のサイレンが響き、その家の前で止まった。赤灯の瞬きが周囲を照らし、やがて無慈悲な闇に包まれた。そして、その家は主(あるじ)を失った。家は空家になり、ほどなく建屋は壊され空き地になった。その後も空き地には花が咲いた。けなげに咲く花の姿には、花を愛した主の記憶があった。その花言葉は「誠実」だという。主のいない庭の片隅に、今年もノースポールの白い花が咲いた。【 月化粧 】 < ↓ ランキングクリックはこちらから > にほんブログ村