私のNゲージ考古学

2019/08/31(土)20:53

HOナロー・Nナロー・Njゲージ

トミックス(16)

 RMモデルズ2017年6月号の特集は,トミーテックからHOナロー「猫屋線」シリーズが発売されたことを受け,「ナローゲージ はじめの一歩!」となりました。 当ブログは,一応,Nゲージをテーマとしておりますが,HOナローは,Nゲージと切っても切れない関係にあります。Nスケールで狭軌を再現するNナロー,Njゲージとあわせて紹介したいと思います。 <HOナロー> 鉄道模型趣味200号(1965年2月号)では「ナローゲージ散策」として,西ドイツ・エガーバーン社製のHOナローゲージなどが紹介されています。以下,一部を抜粋します。「Egger製品の軽便鉄道の一式が,堂々と日本のデパートの店頭に並んだし,先号の広告で御承知のとおり,日本製のすぐれた9mmモデルが市場に姿を現わすのも間近い。かくて,2呎6吋のプロトタイプをHOで模型化する絶好のチャンスが到来したのである。…昨年のミキストが海外の9mmを紹介し,日本型9mmの縮尺を検討するなど,回を重ねてスペースを割いているのは,9mm製品の発売が広告された今日あるを期していたからにほかならない。これをHOn2 1/2に利用できることは以前から十分承知していたのである。問題は,いつこのゲージの具体化がお知らせできるかにかかっていた。この記事が,ただ偶然で本号に掲載されているのではないことをよく考え合わせていただきたいのである。」 (鉄道模型趣味1965年2月号より。西ドイツ・エガーバーン製品の紹介)  また,同誌209号(1965年11月号)の「ミキスト」欄では,あらためてHOナローとNゲージについて記述されています。「わかっているようで意外に理解していない人が多いのが,9mmゲージとHOn2 1/2のちがいである。どちらも『線路の巾が9mm』だから混乱してしまうらしい。一言でいうなら『この二つは一緒のレイアウトにはならない』のである。大きさからいうなら0番と16番のような全くちがったものである。…ナローとはちがって今回発売の関水金属製9mmゲージは日本の場合1/80・16.5mmと相対するものである。」 (鉄道模型趣味1965年11月号より)  このように,HOナローは,Nゲージとほぼ同時期に製品が登場しており,同じ軌間9mmであることから,多くのナローゲージャーがNゲージの動力を利用した作品を発表されています。  例えば鉄道模型趣味238号(1968年4月号)では,橋本真氏が,カトーの103系などの部品を利用したHOナローのガソリンカーと客車を発表されています。 一方,完成品やキットに目を向けると,70年代以降,乗工社やしなのマイクロなど,様々なメーカーからもHOナロー製品が発売されました。これらはほとんど真鍮製で,Nゲージと異なり,プラ製品はほとんどありませんでした。  プラ製のHOナロー製品としては,1983年,東京ディズニーランドの開業に伴い発売されたトミックスの「ウエスタンリバー鉄道」があります。実車どおりカウキャッチャーを付けた,いかにもアメリカ西部開拓時代らしいスタイルとなっています。 (機芸出版社「プレイモデルNo.11」より) 「ウエスタンリバー鉄道」は早期に絶版となってしまい,「TOMIXのすべて」にも写真は掲載されていないなど「知る人ぞ知る」製品でしたが,最近は「猫屋線」ブームに伴い,中古市場での人気が再燃しているようです。 (隔月刊誌「N」2017年4月号より。ウエスタンリバー鉄道と猫屋線が並べて紹介されている)  また,90年代後半からは,津川洋行が,プラ製のHOナロー製品を展開しています。 (RMモデルズ1998年6月号より。西大寺鉄道の単端式気動車。三ツ星商店から動力ユニットが発売された) (RMモデルズ2001年11月号より。松井大和氏の「A4サイズで楽しむマイ・レイアウト」では手軽に楽しめるHOナローとして津川製品が紹介されている)  沼尻鉄道や西大寺鉄道の単端式気動車,立山砂防軌道のトロッコなどがありました。最近では,モーターカーや軌道バイクなどが発売されています。 沼尻鉄道あたりを再生産してくれれば,猫屋線と一緒に遊べると思うのですが…。 <Nナロー> 1972年,西ドイツ・メルクリン社から軌間6.5mm,縮尺1/220の鉄道模型・Zゲージが発売されました。これにより,Zゲージの動力を利用して,Nゲージの世界でナローゲージを模型化しようとする動きが現れます。 例えば,イギリス・PECO社では,メルクリンの蒸気機関車の下回りを利用する蒸気機関車キットを古くから発売しています。 (鉄道模型趣味1984年10月号より。PECO社製Nゲージナローの広告)  日本では,ペアーハンズが,沼尻鉄道や九十九里鉄道の車両のキットを発売しています。 (レイルマガジン1994年8月号より。ペアーハンズのNゲージナロー沼尻鉄道)  近年では「クラフト工房ていくわん」から,ZJゲージの下回りを利用した三岐鉄道北勢線のキットが発売されており,ワールド工芸も様々なNナロー製品(キット・完成品)を発売しています。 そして2011年10月,トミーテック「鉄道コレクション」から,下津井電鉄モハ103・クハ24の1/150モデルが発売されました。 (RMモデルズ2012年2月号より) (隔月刊誌「N」2017年4月号より)  製品は無動力で,下津井電鉄は762mm軌間であったことから,5.1mm軌間を採用(762mm÷150≒5.1mm)。アルモデルから,ZJゲージの動力を加工して組み込むキットが発売されました。ZJゲージの動力を利用する場合,軌間は5.1mmより若干広い6.5mmとなりますがZゲージ用のレールがそのまま使えるメリットは大きいといえるでしょう。 残念ながら,今のところ下津井電鉄に続くNナロー製品はトミーテックから発売されていません。 <Njゲージ> 2006年にアキアからZJゲージが発売されてから,わが国においてもZゲージの普及が一気に加速することになりました。 これにより,Zゲージの動力を利用して,Nゲージに狭軌感を持たせようとする,Njゲージに取り組まれる方が徐々に増えてきました。  すなわち,9mm×150=1350mmである日本型Nゲージでは,1067mm軌間のJR線等には広すぎる,あるいは新幹線をはじめとする1435mm軌間との差を表現したいといった考えから,Nゲージの車両とZゲージの下回りを組み合わせた,Njゲージという発想が生まれました。 この場合,6.5mm×150=975mmとなり,1067mmに近づくというわけです。 なお,ZJゲージ以前にメルクリン・ミニクラブの動力を利用した例としては,鉄道模型趣味1982年8月号で,長真弓氏が,Zゲージの下回りをNゲージに組み込んだ作品を発表されています。 (鉄道模型趣味1982年8月号より。GMの都電にメルクリン社製Zゲージ動力を組み込んだ例)  最近では,隔月刊誌「N」2017年4月号でNjゲージが紹介されています。 (隔月刊誌「N」2017年4月号より。Njゲージの紹介) <番外編> RMモデルズ1997年4月号,1998年1月号には,1/48・軌間9mmの人車の模型製品が紹介されています。 宮城県の松山町商工会が「むらおこし」事業として,同町で活躍した人車を,プラで模型化して販売していたもの。価格は,完成品が1万円,キットが7000円だったそうです。今なら,Nゲージの小型動力で走らせられそうですね。 (RMモデルズ1997年4月号より) (RMモデルズ1998年1月号より。1/48なので,Oスケールの9mmナロー製品ということになる)

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