|
カテゴリ:日本Nゲージ史外伝
「Nゲージ」と名乗るダイキャスト製玩具については,Nゲージ鉄道模型と同列に取り上げることに違和感をもつ方もおられるかもしれませんが(注),「日本Nゲージ史・外伝」としては,やはりダイキャスト製玩具の存在感を無視することはできません。 <ロンスター製品> ダイキャスト製Nゲージとして,古くは,ロンスターのOOOゲージがありました。 初期の製品は,軌間8ミリで無動力。「Locos」シリーズと呼ばれており,日本では,旭玩具製作所(のちのアサヒ玩具)が輸入販売していました。 その後,ロンスター製品は,軌間9ミリで動力付きの「Treble-O-Lectric」,軌間9ミリで無動力の「Treble-O-Trains」へと変遷しており,「Treble-O-Trains」は増田屋斎藤貿易(現在の増田屋コーポレーション)により輸入販売されています。 ![]() (増田屋斎藤貿易が輸入販売したロンスターの蒸気機関車) ![]() (東京玩具商報1963年2月号より) 増田屋斎藤貿易により輸入販売された「Treble-O-Trains」は,今日でも中古市場でよく見かけます。当時の資料として,1971年に集英社から刊行された「まんが版入門百科 模型工作教室」では,「ちょっと、手がかかるけど、ロンスター社のミニ鉄道にモーターを組み込めたらレールも安いし、わりとよく動かせるぞ。」(150頁)として,ロンスター製品が紹介されており,「台車 Nゲージ用のモーター付を改造してつける」「レール レールのまん中にダブルのビニールコードを図のようにけずってつける」「レーシングカー式ガイドシューを自作し集電する」と指示されていました。 なお,同書には他に,「Nゲージのプラ模型は、SLが何種類かそろってるぞ。」「これも、モーター付台車に改造すれば走らせることができるね。」(134頁。フジミ製品を指したものか?),「NゲージのSLは、ほとんど外国型で、キットもないし日本のSLファンには、むかないよ。」(146頁)との記述があります。 <小茂田商店・SLシリーズ(1/130)> さて,ロンスターといえば,ロンスターの貨車とタンク機関車化された「C58」を組み合わせた多田製作所のロコメートを「日本Nゲージ史・外伝」第4回で取り上げました。その後,ロコメートの「C58」は,「電装解除」され,銃の玩具で有名な小茂田商店から再発売されています。 小茂田では,他に,C62,D51を1/130で製品化しており,こちらはC58と異なり,なかなか精巧な外観となっていました。 なお,トイジャーナル1972年6月号によれば,これら小茂田商店発売のSLの製造元は,(有)鈴木製作所となっています。 ![]() (玩具商報1970年12月15日号より) <米澤玩具・ダイヤペット(1/200)> 1974年には,米澤玩具のミニカー・ダイヤペットから「鉄道シリーズ」が登場。縮尺は公称1/200とNゲージより小さめ(幅,高さ等はNゲージとあまり変わらず)でしたが,軌間は9ミリとなっています。 ![]() (鉄道模型趣味1977年4月号より。ダイヤペットの1/200・EF66電気機関車をNゲージ化した例(中村文一氏)) <ウッド(のちニシキ)・ダイカスケール(1/180)> 同じく1974年には,ウッドから1/180の「ダイカスケール」が登場。やはりNゲージより小さめの縮尺ですが,軌間は9ミリで,パッケージには「N GAUGE」と明記されていました。その後,1984年に製造・発売元がウッドからニシキにかわり,「N GAUGE」との表記はなくなっています。 さらに,ダイカスケールでは,1980年にバスシリーズ(1/100)を発売。全国各地のバスを製品化したことは,当時としてはきわめて画期的でした。 ![]() (玩具商報1974年8月1日号より) ![]() (トイズマガジン1980年3月号より) ![]() (トイズマガジン1981年1月号より) ![]() (トイズマガジン1981年1月号より) ![]() (1983年東京国際玩具見本市カタログより。(株)ポエムから発売された「クラクションバス」。 つくりはダイカスケール バスシリーズに酷似しているが,縮尺は一回り大きい1/85。床板の刻印は,ASCウッドでもポエムでもなく「WDC ワイド」となっている。トイズマガジン1981年9月号110頁によれば,ワイド(株)は,ウッドの社員が独立して設立した会社とのこと。なお,ウッドのロゴマークの「ASC」は,姉妹会社のアオシン(青真商会)を意味するようだ) (追記:パッケージを確認したところ,「企画製造 WDCワイド 発売元 ポエム」と明記してありました) ![]() (トイズマガジン1985年2月号より。縮尺1/85,各500円となっているので,クラクションバス から音声機能を撤去したものだろうか) <サクラ(のちトレーン)・Nゲージダイキャストモデル(1/130)> 少し時代が下って1979年には,それまでにも各種ダイキャスト製鉄道玩具を発売していたサクラから,1/130の「Nゲージシリーズ」が登場。1983年には,サクラから「Nゲージシリーズ」を引き継いで,トレーンが設立され,現在に至っています。近年のトレーン製品は,非常にクオリティが向上しており,新車両の製品化も積極的に行われています。 また,サクラやトレーンも,ダイカスケール同様,多数のバスモデルを発売しています。 ![]() (「サクラカー」の東武線(左)と「サクラペット」のミニ急行電車(右)。いずれも軌間は9ミリ) ![]() (1980年東京国際玩具見本市カタログより) <米澤玩具・ダイヤペット(1/130)> 同じく1979年,ダイヤペットから1/130の「鉄道シリーズ」が登場。サクラのNゲージシリーズをショーティーにしたようなつくりですから,サクラが製造に当たっていたのでしょう。 <その他> この他,確認できた範囲で,ダイキャスト製の「Nゲージ」としては,ツヤマの「ダイキャストSLシリーズ」(D51,C57,弁慶号),ニッコーの「世界のSLシリーズ」(D51,C57,弁慶号),サンライクの「ミニ合金 ブルートレイン」(EF65,24系客車)がありました。他に,Nゲージに近似したスケールの製品としては,エーダイ「グリップゼッケン」(D51,同半流,ひかり号),青木商会の「日本の蒸気機関車」(D51)がありました。 ![]() ![]() (サンライクの「ミニ合金 ブルートレイン」。写真の製品は連結器が一部破損している) ![]() (青木商会の「日本の蒸気機関車」。縮尺1/120で一見,小茂田商会のSLと似ているが,別物) (注)日本模型新聞 鉄道模型版 第10号(1979年5月)では,日本Nゲージ鉄道模型工業会会長・加藤祐治氏が以下のように述べられており,最後の部分はダイキャスト製玩具を念頭に置いた発言と思われます。 「Nゲージという鉄道模型の統一名称を徹底強化します。業界では『ナイン』とか『9ミリ』とか『ナロー』とかマチマチな呼称を使われているが、日本Nゲージ鉄道模型工業会というメーカー団体が存在する以上、あくまで“N(エヌ)ゲージ”という統一名称を促進して行く。別に商標登録ではないが、鉄道模型の『Nゲージ』であるかどうか、製品を見ればすぐ分るわけで、本当のNゲージは『こう言う商品です』と評価に値するものでなければいけない。また最近、玩具などでも『Nゲージ鉄道模型○○』というまぎらわしい名前を付けて広告宣伝しているが、今後工業会でこれは問題視されるでしょう。」
日本模型新聞 鉄道模型版 第13号(1979年8月)でも,加藤氏の以下の発言があります。 「私ども(日本Nゲージ鉄道模型)工業会会員の製造販売している製品が走る鉄道模型です。ところが一般市場には、”Nゲージ”と称して売られながら我々のNゲージとは全く違ったものが流れている。一般の方は区別が出来ない。これは非常な迷惑なんです。規制をするということは出来ないと思うが、紛らわしいし、そのままレールに乗せたらショートしたとか、走らないものを乗せて事故でも起こされたら非常に困るということです。」 また,大田治彦氏も,RM MODELS 2006年3月号で,「“N”という意味は周知のように英語のNineの頭文字であり、欧州でN-Internationalと命名されたことに端を発する。これは英語のみならず、ドイツ語でNeun、イタリア語でNove、フランス語でNeuf、スペイン語でNueveとなることから、その後も含めてNゲージ生産の実績のある欧米諸国の言語に対してもそのまま有効であり、非常にうまく付けられた名称と言えよう。ただし縮尺については別途定めなければならなかった。ここで英語表現を考えてみると、ゲージが軌間、スケールが縮尺を意味するので、特に米国で広く普及しているN scaleという名称はわかりにくく、英国でよく用いられるN gaugeという表現の方がはるかに理解しやすい。しかしN scaleという規格には標準縮尺1/160の規定を暗黙的に含めているので、HOナローとの混同や、日本でのダイキャスト製玩具の例に多々あるように、線路幅さえ9mmであればN gaugeと呼ばれるような状況を回避しているとも言える。」として,ダイキャスト製玩具に言及されています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.06.23 20:08:25
コメント(0) | コメントを書く
[日本Nゲージ史外伝] カテゴリの最新記事
|