|
カテゴリ:トミックス
今回は,Nゲージのレイアウトにおいて重要なアイテムとなる自動車について,簡単に振り返ってみたいと思います。 1970年代末までは,国内のNゲージメーカーからは自動車は発売されておらず,精巧な西ドイツ・ヴァイキング製品や大味な米国・バックマン製品といった海外メーカーの製品,スケールの近似したミニカー(例えば,1973年に発売されたトミカの三菱ふそう 東名高速バスは1/156で,プロポーションも良好でした。)などが主に使われていたようです。 <追記:トミックスの国産車発売以前の製品としては,(株)サニーインターナショナルから発売されていた,Nサイズカーシリーズという組み立て式モデルがありました。当時,グリーンマックスの信号機セットにも付属していましたが,TMS 1979年5月号の製品紹介では「道路用の交通信号機・・・と,Nサイズカーシリーズと称するプラ自動車1台を加えたもの。自動車の屋上に付ける,タクシー用の表示灯もモールドされているが,自動車自体はオーバースケールなので,Nには使えない。」と記述されています(光山市交通局様からコメント欄でご教示いただきました)。 サニー製品の正体は,軽便鉄模アンテナ管理人様が「軽便鉄模アンテナ雑記帳」で解き明かされています。サニーは,ヴァイキングのHO製品を縮小コピーしたものの,縮小率が足らず,Nとしては異様に巨大な自動車となったようです。また,The TND改二甲 佐世鎮 アケ勢様も,twitterでNサイズカーシリーズを多数紹介されています。> <Nゲージで国産車を> 1979年,トミックスから三菱ふそうバス,いすゞエルフ,ニッサンセドリックが発売されました。 (TMS 1980年1月号より。トミックスの三菱ふそうバス,いすゞエルフ,ニッサンセドリック) (TMS 1980年4月号より。トミックスの三菱ふそうバス,いすゞエルフ,ニッサンセドリック) 1981年には,カトーから,ク5000に搭載するためのトヨタ・クラウンが発売されました(近年では,よりク5000らしい,カバー付き自動車も発売されていますね)。 (TMS 1981年5月号より。カトーのク5000(トヨタクラウン付)) 1980年代末には,トミックスから,ピギーバック貨車クム80000に搭載する三菱ふそうアルミバンや,貨車と共通のコンテナを搭載できる三菱ふそう11tトラック,グリーンマックスからは,いすゞキュービックバスの板キットやバス車庫のキット,集じん車・バキュームカーのキット(トミックス製三菱ふそうアルミバンのキャブが含まれている),津川洋行からはボンネットバスが発売されるなど,Nスケールの自動車は非常にバラエティ豊かになりました。また,津川洋行は,1990年代には,モデルプランニングのメタル製ミニカーを相次いで発売しています。 (TMS 1988年5月号より。グリーンマックスのいすゞキュービックバス(キット)) (TMS 1988年8月号より。津川洋行のボンネットバス) (RM MODELS 1998年9月号より。トミックスのトヨタセルシオ,ニッサンスカイラインGTR,メルセデスベンツ) <バス模型相次ぐ> 1990年代末から2000年代初頭にかけては,各社からバスモデルの製品化が続きました。 まず,イマジンコーポレーションの製品について「鉄道模型Nゲージ-Enjoy N gauge railroading」(成美堂出版,2001)に掲載された「知っておきたい模型バスの基礎知識講座」を引用します。 「バスブームの火付け役で、バス模型を製作販売している株式会社イマジンコーポレーションの外池邦彦社長に聞いてみた・・・最初の発売は今から5年前の1996年。第1作目は小田急バスだった。何から何まで手作りで仕上げたこの作品、赤地に白の細かい3本ラインも手塗りだというから恐れ入る・・・価格は当時としては破格の3400円。当時の相場から見れば、かなり高い値段で、業界からは『こんなに高い値段では、まず売れないだろう』と囁かれるのも無理は無かった。まず、大型ホビー店に10台出荷したところが、なんと1週間で完売・・・ここから本格的にバス模型の製作販売に乗り出した。すると続く第2作目の東急バスも一週間で完売。その後、首都圏各地の模型店で販売を展開、そして、バス模型のトップブランドとして現在の地位を築いている。バス模型を販売してから徐々に人気が出始めた3年後の1998年、バス情報雑誌『バスラマ』に、外池社長は商品の広告を掲載した。すると反響はかなり大きく、問い合わせの電話が殺到・・・もちろん発売されている車両は、すべてバス会社の許可を得て製作販売している。イマジンコーポレーション製品のバス模型は、バス業界、ファンの両方から信用を得ている商品なのだ。現在、イマジンコーポレーションから、第1作目の小田急をはじめ、55種のバスが発売されている。今までに約6000台を生産。発売から約5年、単純計算で月産100台ペースでバスを作っていることになる。主流価格は大体3500円~4200円・・・」 (「鉄道模型Nゲージ―Enjoy N gauge railroading」(成美堂出版)より。イマジンコーポレーションでは,レジンバスのほか緊急自動車も製品化していた) 今日から見ると,上記の記述内容の正確性には疑問もありますが,バスモデルが少なかった当時,イマジンコーポレーション製品がかなり売れたことは事実でしょう。 同様に,東京堂モデルカンパニーからも,旧型車を中心に,様々なNスケールのバスモデルが発売されました。しかし,イマジンコーポレーションや東京堂モデルカンパニーの製品は,材質がレジンであることから,経年による変形がかなり発生するようで,現在では見向きもされないでしょう。 (RM MODELS 2000年6月号より。東京堂モデルカンパニーのレジンバス) (RM MODELS 2000年7月号より。東京堂モデルカンパニーのレジンバス) また,ジオラマディスプレイファクトリー(DDF)は,トミックスの三菱ふそうバスや富士重工路線バスを全国各社局のカラーに塗り替えた製品を発売しました。後に,オリジナルのNスケール観光バスや,バスの展示にも好適なミニジオラマ「ぷちらま」なども発売しています。 (RM MODELS 1999年11月号より。トミックス製品をベースとしたDDFのバス) グリーンマックスからは,三菱ふそうノーステップバスが製品化され,最新の車種が欲しいという需要にこたえました。 (RM MODELS 2000年7月号より。グリーンマックスの三菱ノーステップバス) <食玩とNスケール自動車> また,2000年代初め頃には,食玩がブームとなり,様々なモノのミニチュアが手ごろな価格で手に入るようになりました。 2002年から発売された「タイムスリップグリコ」はその代表格といえるでしょう。各種乗り物もラインナップに含まれており,特に,第1弾のボンネットバスは,ほぼNスケールで,鉄道模型雑誌でも話題となりました。また,第2弾の都営トロリーバス200形は,あいにくNスケールより少し小さめでしたが,Nゲージの都電と並べて楽しむ方も多かったようです。 他には,北陸製菓の「レスキュー119」は,乾パンのオマケに消防車のミニカーが付いてくるというユニークな商品で,スケールはまちまちでしたが,大型消防車はNに近いスケールとなっており,TMS 2004年6月号に掲載された「鉄道模型愛好者のためのミニカーガイド」(いのうえ・こーいち氏)でもそれら消防車が紹介されています。 特殊な車といえば,タカラ(タカラトミー)の「ワールドタンクミュージアム」など,1/144の軍用車両もこの頃から相次いで発売されています。 <真打ち・バスコレ登場> そして,2003年にはトミーテックからバスコレクションが,2004年にはバンダイからワーキングビークル(「はたらくくるま」!)が発売されるなど,食玩で多く用いられたブラインドパッケージ方式を採用したNスケールの自動車の製品化が相次ぎました。
その後も,トミーテックからはカーコレクション,トラックコレクション,トレーラーコレクションなどが展開されており,また,カトーもジオタウンシリーズの一環として各種自動車を製品化しているほか,F-TOYSのニッポンの働く車シリーズなど,Nスケール自動車が大いなる盛り上がりを見せていることは,皆さまご承知のとおりです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[トミックス] カテゴリの最新記事
今回は私好みの題材ですね(笑)
このジャンル、TOMIXの前にGMが舗道や信号機などのアクセサリを一纏めのセットで出した時に自動車を付属させたことがあります。但し当時のTMSで「自動車自体はオーバースケールなのでNには使えない」と書かれており、実際当時入手できたナインスケールのクルマ(アメ車です)の倍くらいの大きさだったのでがっかりした思い出があります。今回の記事で久しぶりにその事を思い出しました。 物は確かアウディタイプの4ドアセダンでしたが現物を紛失しているので確かな事は言えません。 又Nスケールに使えるトミカと言うのも当時随分探しました。確かユニッククレーンやトヨタのカートランスポーターがスケール的に該当していましたが実際配置するとトミカの宿命で腰が高すぎてこれまた難ありでしたね。 トランスポーターに積んであった乗用車はばらしてレイアウトに使いましたしポーターそのものも最近改造してカーコレに使えるようにしたものです。 (このジャンルもトレーラーコレクションの次回作でキャリアカーが出てしまいますが) 後忘れていけないのが70年代末に流行した「スーパーカー消しゴム」サイズ、スケール共にNに合致した物が多く一時期重宝しました(フォルムで見せるタイプのクルマなのでリペイントすればどうにか見られた) 面白いのは当時スーパーカーに混じって3代目のファミリア(大ヒットする4代目FFの前のタイプ。コスモ顔のFR2ボックスでした)が出ていた事です。 あれば今でも重宝しそうな車だと思うのですがこれまた鉄道模型趣味の中断中に紛失してしまい今になって臍を噛んでいます。 (2018.11.03 00:03:22)
光山市交通局さま
コメントいただき,ありがとうございます。 >今回は私好みの題材ですね(笑) お気に召していただけたようで,何よりです(笑) 以前,RMMスタッフブログに,「Nスケール自動車日記」という記事があり,トミックスのセドリックからGMの観光バスあたりまでを取り上げていたので,それ以後のレジンバスなどを含めた記事を書こうと思った次第です。 >GMが舗道や信号機などのアクセサリを一纏めのセット これは知りませんでした。ありがとうございます。 調べたところ,既に売り切れていましたが,メルカリに出ていました。 ttps://item.mercari.com/jp/m21627608300/ 車種は「メルセデスベンツC111」となっていますね。 >忘れていけないのが70年代末に流行した「スーパーカー消しゴム」 そうでした,うっかりしていました(笑) 最近では雑誌「昭和40年男」増刊のスーパーカー特集で取り上げられていましたね。私もレイアウトにNスケールの「童夢零」がほしくなってきました。 (2018.11.03 10:04:22)
GMのキットに入っていた自動車は,サニーというメーカーの製品だったそうです。
参照 ttp://d.hatena.ne.jp/keuka/20101212/1292109558 (2018.11.10 21:33:21)
サニーのNサイズシリーズは,こちらの方がたくさん集めておられますね。
ttps://twitter.com/i/moments/888979104770408448 (2018.11.13 21:26:03)
遅ればせながら情報ありがとうございます。
画像も拝見しましたがこんなにバリエーションがあったとは驚きです。 ただ、当該サイトでも書かれていた通りNに使うには大きすぎますし、まさか120分の1のTTゲージ用なんて事もないでしょうね(今の時点ではTT-9の天賞堂C61しかないですし) モデルとなったらしいVikingのミニカーもすでにNスケールのがあったと思いますから、この製品の出自、企画意図は謎ですね(笑) (2018.11.20 22:17:57)
偶然このブログを発見したのですが、非常に面白く拝見いたしました。大変良くまとめられていると思います。Nスケール自動車日記執筆者の知人ですが、なくなってからかなりの年月がたつうえ、本筋の鉄道車両から離れる話題であることから、覚えている方がいらっしゃったとは少し驚きでした。ここに記載されていない話題で個人的に思い出深いのは、津川洋行が1987~90年頃にレジン一体成型でマツダ・ファミリア(おそらく5代目モデルBD型)3ドアの色違い3台セットを出していたこと。ペアーハンズが1992~95年頃にホワイトメタル製トヨタ・ランドクルーザー(当時製造・販売されていた80系)の色違い3種を出していたことでしょうか。
雑誌の記事か広告か、もしくは模型店店頭のポップかは忘れましたが、津川洋行では同様にレジン一体製で、メルセデス・ベンツやダットサン・トラックの製品化予告もあった記憶があります。あるいはメルセデス・ベンツは製品化されていた記憶もありますが、なにぶん30年前のことになってしまったため既に記憶はあいまいで、エビデンスもありません。 ペアーハンズは店頭・通販特製品として、TOMIXの自動車シリーズを改造した商品を1994~1998年頃にかけて販売していたような記憶もあります。いすゞエルフの荷台を改造したプロパンボンベ配送車、灯油配送車、セブン-イレブン配送車、飼料運搬車、JAFレッカー車、ボトルカーや、三菱ふそう4tアルミバンを改造した5tコンテナトラック(運転席がショートキャブの「ファイター・ミニヨン」なので、実車にこのタイプのコンテナトラックはないと思われ、あくまで増トン車のイメージモデルだったような気がします)、三菱ふそうバスを改造した機動隊バスなどがあったような気がします。乗用車やワゴン車をベースにしたパトカーや救急車といった鉄板のモデルもあった記憶があります。いずれも今でも魅力的な製品ですが、ハンドメイドで価格が高かったことからなかなか手が出せなかった思い出があります。 その後、これらに使った素材の一部をうまくキット化したのか、1990年代後半にTOMIX製の各種トラックの荷台をエッチングで置き換えるキットに移行していったようです。さらに2000年代中盤からは「ザ・トラックコレクション」の荷台を置き換え、製品化されていないタイプの荷台にするキットを販売しているようです。特製品も細々と継続していたようですが、これらキットをベースにしたものがメインで、上記に羅列したラインナップは比較的短期間でなくなってしまったような印象です。 以上、駄文・長文の思い出話、大変失礼いたしました。 (2019.01.16 02:15:52)
せみふきさま
コメントいただきありがとうございます。 「Nスケール自動車日記」は,当時,更新を楽しみにしていたことを覚えています。車両以外のNゲージ製品の歴史について,掘り下げた記事は今でも少ないので,貴重な記事だったと思います。 津川洋行のファミリアやペアーハンズのランドクルーザーは知りませんでした。情報いただき,ありがとうございます。ペアーハンズ製品は,カーキャリアなど面白い自動車モデルが多いですね。プロパンガス運搬車は,RMMの新製品紹介で見かけたのを覚えています。同社HPを見ても,昔の製品は載っていないようなので,貴重な情報です。 今後ともよろしくお願いいたします。 (2019.01.16 20:15:09)
せみふきさんへ
>津川洋行のミニカー レジン製ということは知りませんでしたが、私が所有する同社「'88 製品案内」の裏表紙に「プリティ・カー・シリーズ」という記事があり、表形式で製品名が予定含め記載されているのでそこから引用します。 以下4点は「順次発売予定」と記載。 スバルレオーネワゴン いすゞボンネットバス ダットサントラック スカイラインGT(ハコスカ) その下に(以下続々企画中)とあります。 このオールカラーの冊子の11~12ページには、マツダファミリアがバラで5台、3台セットで箱に入った状態、即ち店頭陳列のままで1箱写真に写っていますが特に大きく載せるでもなく、地味な扱いです。 (2019.12.30 21:40:12)
鈴木昌生さま
大変貴重な情報をいただき,ありがとうございます。 津川のカタログはほとんど入手できておらず,非常に興味深い情報です。 今年も当ブログをよろしくお願いいたします。 (2020.01.05 23:33:40)
鈴木昌生さま
お返事遅くなりすみません。情報ありがとうございました。 そうでした。津川洋行はスバル・レオーネなども発売予定であったことを思い出しました。1988~90年頃のことで、おっしゃっているカタログの年代も私が見聞きした記憶がある時と一致しています。 おっしゃっている津川洋行のカタログは、確かどこかの模型専門店で見た記憶があります。当時の鉄道模型の趣味誌に広告が出ているようなところでしたが、オーナーの高齢化などでいまは閉店してしまい、行って記憶をたぐることももうできなくなってしまいました。一世代30年とよく言われている中で、時代の流れとそれにも増して社会の劇的な変化で、行きつけの模型店もだいたいなくなっており、ちゃんと体系だてて覚えていたはずの当時の製品情報も記憶が怪しくなっていたところでしたので、情報、ありがたかったです。 津川洋行はあとレジン製で1985~87年頃ブルドーザーも出していましたが、これはあまり広まらずに終わっています。逆にペアーハンズがホワイトメタル製でパワーショベルを1991年頃からしばらくの間作っていた記憶があります。 プラ製の国産マスプロ製品でも年次による仕様の違いやパッケージの違いがあったりしますが、このホームページや鈴木昌生さまの情報でだいたい網羅されているのではないでしょうか。あとは同時期に輸入されよく使われていた傑作中の傑作、WIKINGやFleischmannなどの海外製品に触れてみるのも面白いかもしれませんね。 (2020.03.30 00:34:23)
せみふきさんへ
あのブルドーザーの模型はレジン製だったのですね。機芸出版社「NゲージマガジンNo.9」の「Nゲージャーズ サロン」P65に「楽しく使えるブルドーザー」と題して紹介されていました。 (2020.06.21 20:00:33) |