日本Nゲージ史外伝・第7回 Nスケールのプラモデル
Nスケールのプラモデルのうち,1960年代に発売されたものについては,第2回,第5回で取り上げました。そこで,今回は1970年代以降の製品について見ていきたいと思います。この頃になると,Nゲージの規格が確立されたことから,もはや「OOOゲージ」の語は用いられず,各製品は「Nゲージ」「9ミリゲージ」と明記するようになります。そして,SLブームやブルトレブームを背景としたこともあり,題材は蒸気機関車,ブルートレインやL特急が中心となります。なお,本稿で記載する発売年代は,一部を除き日本プラモデル工業協同組合編「日本プラモデル50年史」に依拠しています。<フジミ・ミニトレインシリーズ>まず,1970年に発売されたのが,フジミのミニトレインシリーズです。D51,C62,8620,C58の4種が製品化されました。シンナーの乱用が社会問題となっていたこともあってか,「接着剤不要」が大きくアピールされています(当時の「日本模型新聞」を見ると,シンナーの問題が繰り返し取り上げられています)。(鉄道模型趣味1976年12月号より,フジミのプラキットを加工した作例)この頃は,SLブームを背景に,他のスケールでも,蒸気機関車のプラモデル化が相次ぎました。フジミのC53(1969,1/45),オオタキのD51(1969,1/50。その後,相次いで1/50で大型蒸機を製品化し,現在はマイクロエースに引き継がれている),ナガノのC62(1969,1/75)とD51(1970,1/75),緑商会のD51(1972,1/80)などが代表的です。<エーダイ・グリップミニトレーンD51>組立式のプラモデルとは異なりますが,鉄道100年にあたる1972年には,永大からプラ製でNスケールのD51が発売されました。ゼンマイで駆動するようになっており,永大らしく外観もなかなかシャープです。(松本吉之「鉄道模型考古学N 愛蔵版」より)<真田プラスチック工業所・D51>また,やはりプラモデルとは異なりますが,プラ製で1972年~1973年頃に発売されたのが,真田プラスチック工業所のD51(1/130)です。真田プラスチック工業所は,この他にも,軌間9ミリのプラ製鉄道玩具をいろいろ製品化しており,興味深いところです。(玩具商報1973年1月1日号より。1/130のプラ製D51が広告に掲載されている)真田プラスチック工業所は,1972年5月に株式会社となり,同年6月17日には創立15周年記念・新社屋完成祝賀会を開催しています。これより前,1968年には,(株)藤田屋商店(のち(株)藤田屋)や大倉清商店(のち(株)大倉トーイ)などと共に,大阪の小物玩具メーカーによる業界団体・大阪トイズユニオンを結成するなど,小物玩具メーカーとして知られています。(玩具商報1969年9月15日号より)(玩具商報1972年7月15日号より)(キッズライフ(旧玩具商報)1993年1月号より)<クラウンモデル・SLシリーズ>クラウンモデルからは,蒸気機関車3種(C51,D51,弁慶号)のプラモデルが発売されました。いずれも無動力のディスプレイモデルで,展示用の瓶とセットにしたボトルシップならぬボトルトレインのキット,車体・レールのキット(説明書は別刷り),車体のみのキット(組立解説は蓋の裏に印刷)がありました。「日本プラモデル50年史」には,ボトルトレインのみが掲載されており,1974年発売とあります。(RM MODELS 15号(1996年11月号)より)<ジーマーク・山の乗り物シリーズ>Oスケールの古典路面電車プラキットを製品化していたジーマークから,1978年,ケーブルカーとロープウェイのプラモデルが発売されました。いずれも動力入りの本格的なモデルで,これを組み込んだレイアウトとなると,中々の迫力でしょう。[追記]ロープウェイのプラモデルとしては他に,1960年代に今井科学が「スクールシリーズ」として,1/80の「No.1 ゴンドラ」「No.2 ロープウエー」(日本平ロープウェイ)と「No.4 マンモスロープウェイ」「No.5 発着所つきロープウェイ」(箱根駒ケ岳ロープウェイ)を製品化しており,No.5は1970年代に再販され,鉄道模型考古学N愛蔵版160頁で取り上げられています。また,ドイツのBRAWAでは,HO・Nスケールでケーブルカーとロープウェイを製品化しています。(日本模型新聞1039号(1978年5月1日)より)1979年には,ブルトレブームを背景に各社からNゲージプラモデル製品が相次いで発売されます。東京・科学技術館で第1回鉄道模型ショウが開かれたのもこの年です。<フジミ・Nゲージシリーズ>フジミは,1979年,Nゲージシリーズとして,従来のSL4種に加えて,C57,EF65,485系,583系を製品化。「高級ケース付き」と謳っているのがフジミ製品の特徴です。(松本吉之「鉄道模型考古学N 愛蔵版」より)<アオシマ・ミニ特急シリーズ>1/50の電気機関車を製品化していたアオシマは,1979年,EF65,24系,485系,583系を製品化。塗装済一体ボディキットで,特筆すべきは単3乾電池を組み込んで走るようになっていたことで,同社の意気込みを感じます。(日本模型新聞1078号(1979年12月15日)より)<バンダイ・トレインシリーズ>バンダイは,1979年にEF65,24系,485系を製品化。塗装済板キットで,バンダイらしく,いずれも素晴らしいディテールを誇っており,鉄道模型趣味1980年1月号の新製品紹介欄でも取り上げられています。(日本模型新聞1078号(1979年12月15日)より)<オオタキ・近鉄ビスタカー>1980年には,1/50蒸気機関車シリーズで有名なオオタキから,近鉄30000系ビスタカーのNスケールプラモデルが発売されました。先頭車・中間車が用意され,非常にシャープなモールドを誇っており「エンドウ製動力ユニットを始め関水,エンドウ,GM製の台車,GM製パンタグラフなどの使用で一級水準並みのオリジナル車輌が創れます。」(広告より)と謳われるなど,動力化も想定したモデルでした。(日本模型新聞 鉄道模型版27号より。広告では「ナインゲージ・キット」と称している。「N鉄道模型へナウい提案」とあるのが時代を感じさせる。)<東京シャープ>東京シャープの「日本の蒸気機関車シリーズ」「日本の列車シリーズ」は,「日本プラモデル50年史」にも掲載されておらず,発売年代等の詳細は不明です。「Nゲージ」と名乗っていますが,軌間が9ミリというだけで,車体はNスケールよりかなり小さなサイズです。ラインナップは,「日本の蒸気機関車シリーズ」がNo.1 C57,No.2 C62,No.3 D51,No.4 D52,「日本の列車シリーズ」がNo.1 新幹線ひかり号,No.2 新幹線こだま号,No.3 DD13,No.4 DD51,No.5 特急ひばり,No.6 特急白鳥,No.7 寝台特急富士,No.8 寝台特急さくら,No.9 C57,No.10 C62,No.11 D51,No.12 D52となっています。(RM MODELS 15号(1996年11月号)より)<参考資料>(頁番号及び敬称略)松本吉之「鉄道模型考古学」レイルマガジン133号(1994年10月号),RM MODELS 15号(1996年11月号)山下貴久雄「新・鉄道模型考古学N」RM MODELS 139号(2007年3月号), 160号(2008年12月号)