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ことりんのスマイル

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再発治療闘病記・迷い

「迷い」



維持療法が中止になりその週の脳外科の外来日に、今後の治療をどうするかDr.と相談する為のICがありました。
「家族で揃って来て下さい」と言われ、「私だけでは駄目ですか?」とDr.に聞いたのですが、「出来たら揃って・・・。」と言うので、当時の夫と私の実母を連れて行きました。
この頃私は夫との離婚の決意を固めていて、Dr.のムンテラなどは全て私一人で立ち会っていたのですが、Dr.がそういうので、しぶしぶでした。

今回の再発についてDr.サイドの見解としては、「外科的治療(OPE)→放射線治療(全脳照射)」が一番望ましいのでは、という事でした。
OPEに関しては、今は症状もなく体力もある状態なので、腫瘍の大きさからいってもタイミングが良く、異存はありませんでした。
けれど、放射線の全脳照射というのは私には納得することが出来ませんでした。

放射線治療は、照射部分の正常な細胞も破壊します。
人間の脳は約3歳までに殆どが出来上がります。
という事は、裏を返せば3歳までに放射線治療をする→照射野は成長が出来ない、という事になります。
平たく言えば、3歳までに脳、とりわけ記憶や学習などの機能を司る大脳に放射線照射をすると、その部分が担う機能に、ある程度の障害(例えば、学校は特殊学級になるかも、というくらいの)が残ってしまう事が否めない、という事です。

そんな理由で、小児脳外科のセオリーでは「基本的に3歳未満に放射線治療はしない。」という暗黙の了解があります。
琴音は現時点で2歳9ヶ月。それでも、Dr.が放射線の全脳照射を勧めるという事は、QOLと命を天秤にかけなくてはならない状態という事が、嫌でも分かりました。

どのみち放射線治療は今しなければ助からないだろう。それは私にも分かっています。
でも、分かってはいるのですが、語弊があるかもしれませんが、私は「命が助かるのであれば、出来る限り普通の人と同じ生活をさせたい」と思ってしまいます。
(『普通』って一体何なんだ?いまだにそういう事については、答えが出せずに悩んでいるのですが。)

私はDr.に「放射線が避けられないのは分かった。でも全脳ではなく局所照射でいく事は出来ないか?」と聞きました。
琴音の場合、病巣部への局所照射であればダメージを受けるのは小脳だけなので、将来的な障害は殆ど気にする必要がありません。(小脳は原始的な働きの部分なので。)
Dr.は「局所照射であれば、同時に化学療法の併用が必要」と言いました。
Dr.が全脳照射を勧めるのは、原発部以外にも転移をしている可能性があるかもしれない、もしくは転移が食い止められるうちに徹底して叩いておきたいという理由からです。
もし、局所照射のみなら原発以外は放って置きっぱなし状態になってしまうので、その代わりに化学療法、という事です。
ただ、上衣腫は化学療法の感受性が悪いということもあり、Dr.はその方法に関してはあまりいい顔をしませんでした。

今徹底して全体を叩いてしまうべきか、それともがん細胞があるかないかも分からない場所に、障害というリスクを背負ってまでわざわざアプローチすべきではないのか・・・
私はこの場ではどうしても答えを出すことが出来ませんでした。
Dr。はその気持ちも察してくれて、とりあえずOPEが終わって放射線治療の準備に入るまで、返事を延ばしてくれることになりました。
その好意に甘んじて、私はそのままこの場を後にしました。


琴音の命と今後の一生がかかっている。
その決定を私は、一人で考えて一人で下して一人で責任を持とう、とこの日決心しました。
ひどい言葉かもしれませんが、私はもし琴音に万が一の事があった時、私が喪主をしたい。琴音の病気を理解しようとしなかった夫には、絶対にさせたくない。
なんか、ふとこう思いました。

そしてこの日、離婚の意思を伝えました。
私が琴音に責任を持つ、と。

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