がんばれ私!

2005/05/26(木)11:16

難を逃れる男、直面する女

「回想」(5)

朝、隣の御主人からの電話で起こされた。 「奥さん!音!聞きましたか。裏が!!」はぁ?寝ぼけマナコで表に出ると、ご近所さんが数人集まっている。 うちの裏の資材置き場になっているところが、台風と長雨の影響で1/3ほど崩れ落ちている。ザラザラザラ…まだ少しだが崩れてる。 「御主人に連絡したほうが」と言われても一人旅中でどこにいる分からない。 以前、義母に「行先くらい教えて欲しい」と言われたが、パック旅行者じゃないし、私達の旅は風任せ。計画経てても帰ってきたら全然違う所に行ってたりする。 段々不安になってきてその日は勤務先の2Fに息子と泊めてもらう。 数日後主人帰宅。「怖かったよ!」といっても「これくらい大丈夫、大丈夫。崩れたとこは隣の社長が土地広げたくて自分で壁を積んで土入れたとこだけだから…基礎はしっかりしてるから、うちは心配しなくていいよ。逆に見通しがよくなったな」・・主人が言うとホッとする。 愛犬の病気に気づいたときは手遅れだった。子宮筋腫だった。医者で「安楽死させますか?」と聞かれ返事が出来ず連れ帰った。意識が朦朧として吐いてばかりいる。 どうして気づいてあげれなかったんだろう、ごめんね、ごめんね。 主人とケンカした。なんで安楽死させなかったのか。私は自分の手で死を決めるなんてできない。話はエスカレートし、主人が植物人間になったら電源を切ってくれなんて言い出す。絶対出来ないと言い返した。 ずーっと離れたくなかったが夜も更け布団に入ったが、心配で愛犬を見に行くと、もう息をしてなかった。泣きじゃくっているとお香を持って主人が来てくれた。 翌日予定通り、主人は一人旅に出た。 愛犬を亡くしたことのある友人に来てもらい首輪を切って、車に乗せてもらった。息子と二人泣き通しだ。普段走らない火葬場までの道を何とか運転した。7年しか生きられなかった。7年間の思い出が色々蘇る。なんでこんな時に主人がいてくれないのだろう… インド旅行中、目が覚めると主人がいない。息子とTVを観てると焦げくさい匂いがした。ウゥー、消防車だ・・近いな・・なんか騒がしいな…えーっ、このホテルだ! ドアを開けるとものすごい黒煙だ。パニックになる。とりあえずバスタオルで扉の下を塞ぐ。窓から外を見る。3Fだ。もし飛び降りたら、丁度コンクリート塀がありおまけにトゲ付鉄線までついている。どうしよう!大声で叫ぶが誰も来ない。返事もない。 息子とバスルームへ行き、水を溜めて「主人が早く来てくれますように。私達死にませんように・・・」ひたすら祈る。どれくらい時間が経ったか分からないが物音と声が聞こえてきたので、鼻・口に濡れハンカチをあてて降りる。助かった。 ロビーは煤だらけになった旅行者でいっぱいだ。「ノープロブレム」といってホテルの人がペプシとチャイを持ってきてくれる。なにがノープロブレムだ!死ぬかと思った。 しばらくして主人が帰ってくる。カクカクシカジカ…なんでいてくれないの。 「でも無事だしさ。なんか保険金目当ての火災らしいよ、バスタブが燃えたらしい」なんて笑って答える。 いつもいて欲しい時にはいない。二人でいるときばっかりイヤな目にあう。主人は難を逃れる能力を持っているのか? 主人が亡くなった後、地震が多かった。以前真顔で「おまえは関東で地震発生したら、仕事先からどれくらいで帰れると思う?俺の場合は…」なんて行ってたから地震を逃れたのかな、これから大地震がくるのかなと思った。 生きていたら3月に一人旅に出る予定だった。もしインドネシアに行ったならTUNAMIで海の藻屑となってたのかもしれない。 ずーっと、主人は難を逃れる人だと思っていたが、最近は、これから先、困難に直面しても二人で何とか解決して乗り越えなくてはならない。それが出来るかどうかの訓練だったのか?なんて思ったりする。

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