秋風私の名前はリーナ。あれは、私がまだこの世界で何も知らなかった、そして静かに、ひっそりと古都の裏路地で座っていた頃の事でした。 10月の暮頃。そろそろ冬が近づいて来たこともあってか人々は暖かそうな服を着て歩いている時でした。 何時頃からでしょう、私その時生きる気力すら失っていました。家族の死、毎日の地獄、体を売ってまでしないと生きていられない始末。 でも私は一つだけ信じていました…きっと・・・きっと何時か・・・ 10月の中盤、私は何時ものように裏路地に座っていました。今日は何故か人通りが多く居心地の悪さを感じていた頃。 「君……冒険者……だよね?」 一人の男がそう話しかけてきた。確かに私は冒険者だ。でもすべてを失っている武器も、戦う心も。 「いえ……冒険者はもう……やめました」 男は些か困ったような顔した。 「実は今この世界で奇怪な現象が多々起こってましてね…一人でも多く協力者が欲しいのですが」 そんなの私の知ったことではない、私は早々にこの場を後にした。 そんな私の向かった先は何故か古都の西地区だった、此処は冒険の初心者達の集う場所私には似合わない。 そう思ったのだが自然と足は人ごみのごったがえすその中央を抜けて行くように進んだ。 ふとその景色が懐かしく思えた。 私も…この平原を歩いてたんだな…そう思うと昔が懐かしく思える。 その時だった、地をも切り裂くような轟音が響いた。 空は瞬く間に赤く染まり、地は蠢(うごめ)き、森は何時もの穏やかさでは無く恐怖を煽る正に森がすべてを飲み込んでしまうようなそんな気がする音だ。 その中地から奴らは姿を現した。 |