2020/09/14(月)15:17
第九十六話 総本山への道中 その6 (それにピッタリって?)
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太陽の日差しが痛いくらいに肌を刺す。
歩く地面の遠い先では、蜃気楼のようなもやもやが見える。
3人はいつしか森を抜け、開けた荒野にも似た場所を歩いていた。
こういち
「この辺りからは、日陰を拾いながらしっかりと休養し、水分も取りながら進もう。」
ゆうすけ
「熱射病になり兼ねないからな。」
利江
「帽子ひとつでずいぶんと違うのね・・・・。
やっぱり備えはきちんとしないとってことね。
でも、さすがにしんどい・・・・。」
数本の木々が立ち並ぶ場所にくると、3人は日陰に腰を下ろし、しばし休養を取る。
リュックからデカイソフトケースに入った水袋を持ち出し、
二人の水筒に注ぎ足すこういち。
ゆうすけ
「ピッタリに無くなったな。」
利江
「無くなると困るじゃない・・・・・、それにピッタリって?」
ゆうすけ
「もうすぐ最初の目的地に着くからさ。
あとは水筒内の分で大丈夫ってこと。」
利江
「最初の目的地・・・?」
こういち
「そっ、大少林寺さ。」
そのとき3人の視界には、蜃気楼のモヤよりはこちらに近いところを歩く3人の男の姿が。
ゆうすけ
「あれ? あいつさっきのなんてったっけ? そ、チュンホーじゃないか♪」
利江
「本当だ。。。 私達、いつのまにか抜いてきちゃったみたいね。」
ゆうすけ
「寄り道してたんだろうぜ、2人増えてるから。」
こういち
「おぃおぃ、こんなところからもう現れるのかよ・・・・・」
利江
「えっ?」
すると、チュンホー他2名の歩く路上に、3人の黒装束の男が道を塞ぐように現れた。
利江
「と、盗賊?」
こういち
「いや違う。 入山試合だ。」
行く手を遮った3人に気づいたチュンホー他2人、それを見て足を止めた。
チュンホー
「私は大少林寺のものだ。 そして・・・・」
チュンホーと一緒の男1
「総本山を目指す 侯 玉穂(こうぎょくすい)と申す。」
チュンホーと一緒の男2
「同じく 候 玲訓(こうれいくん)と申す。」
チュンホー
「盗賊に類する目的ならば、悪いことは言わない、そこを退くことだ。」
黒装束-1
「ならば目的通りだ。」
黒装束-2
「我ら、黒流拳を習得する者。」
黒装束頭
「総本山、入山試合を所望する。」
チュンホー
「くっ、入山試合か・・・・」
チュンホーと一緒の男1 改め 侯 玉穂(こうぎょくすい)
「入山試合とな。」
チュンホーと一緒の男2 改め 候 玲訓(こうれいくん)
「あい分かった、心して掛かって参れ。」
紐で結わった背中の荷物を脇に置き、手に持っていた1mくらいのアルミ材?のような棒
だけを持ち、侯 玉穂(こうぎょくすい)と、候 玲訓(こうれいくん)は黒装束の3人の
前に立った。
チュンホーは 侯 玉穂(こうぎょくすい)から入山証と呼ばれている[金色の札]を
預かると、二人の前方に立ち、
チュンホー
「ここにあるが [入山証] だ。 立会人チュンホーが預かる。」
黒装束の3人にそれをかざす。
黒装束頭が黙ってうなづいた。
チュンホーは [入山証] を懐に収め、2人の後方に下がる。
利江
「何が始まるの?」
ゆうすけ
「総本山へは [入山証] がないと入れないのさ。
入山試合ってのは、その [入山証] が無い人が入山したいならば、持っている人を
倒して手にするってことになっているらしい。」
利江
「じゃぁ、あれって・・・・・」
こういち
「お互い承知の上でってことさ。
総本山は限られた人だけに入山が許されるんだけど、
それも実力主義ってやつだね。 弱者はたどり着けないしくみになっている。
つえーやつしか行けないところさ。」
利江
「すると、こういち君もあんな札? 持ってるの?」
こういち
「うん、おいらのは一枚しかない赤いやつね ^ ^ 」
黒装束の男達は、脇差の剣を抜いた。
侯 玉穂(こうぎょくすい)と、候 玲訓(こうれいくん)はアルミ材?のような棒を
前にかざした。 すると、
シャキーーン シャキーーン
とその一端の柄が音と共に突然伸びた。
侯 玉穂(こうぎょくすい)
「広州明冥道(こうしゅうみんめいどう)候流(こうりゅう)、参る。」
二人は、手に持つ伸びた棒を頭上でくるくると回した後、片手で右下に据えて身構えた。
黒装束3人、剣を振りかざし襲いかかったっ
うぉーーりゃーー
キーン キーン キンキンキーン
剣を棒で受け、払いと、金属が弾ける音が響き渡る。
利江
「こういち君は赤なのね。」
こういち
「あの金色を持っている人達は大変なんだよ。 名誉なだけにね。」
ゆうすけ
「おれも入山試合の場には初めて遭遇するけど、あのチュンホーって・・・・」
こういち
「あのチュンホーは案内人、兼立会い人ってことだ。
[金の札] を持って入山すると、次回まではその流派が総本山に登録されるんだ。
道場を持っている人は、それが宣伝になる。
で、チュンホーみたいに次回開催のときに大少林寺の人が迎えに行くんだね。
その時に、登録した流派と合致しないと無効になってしまうんだ。
だから、道場荒らしでゲットしても当然盗んでもダメ。
で、お迎えに行った後から奪い合う試合が有効になるんだ。
その結果を見届けるのが立会人の役目って訳け。」
利江
「なんで大少林寺の人が迎えに行くの?」
こういち
「招待している側だからだよ。 というより開催している側か。。。」
利江・ゆうすけ
『ふぅ~ん。。。』
候流(こうりゅう)の二人は棒の中央を握り、両端を自在に使って剣をはたき、
交わし、そして相手の肩、脇に打撃を加える。
時折、端を持って棒を長く使って大きく振り回し、相手を後方へ追いやる。
一端下がった黒装束の3人は、腰に刺したもう一つの剣を持ち、両手で構えた。
そして2人が 侯 玉穂(こうぎょくすい)に、
残りの一人が 候 玲訓(こうれいくん)と対じした。
3人の6刀剣が候流(こうりゅう)の二人に襲い掛かる。
キン キン キンキンキーン
2人を相手にする 侯 玉穂(こうぎょくすい)、今度は防戦一方。
めまぐるしく棒を回転させ、精一杯剣を払っている。
一方の一人を相手にしている 候 玲訓(こうれいくん)、剣を避けながら、
時折相手に打撃を加えている。
キン キン ドス★ ドス★
黒装束-1
「ぐわっ」
-つづく-
第97話 総本山への道中 その7 へ
(おじちゃんかよ・・・・)
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