■ ドラマ 永久の彼方へ

2020/09/15(火)11:22

第164話 厳戒令 7 (これじぁ当然だわね♪)

第二章 123 ~ 187 話(66)

.  ~ 『うわ~~~!』    『な・・・なんなんですかここは !! 』  立ち止まったままその目の前の光景を目にして、みんな一様に足を止め、  驚きの第一声を発した後は、首を上下左右にとみな同じような動きをしていた。 和恵姉さん   「ここはね、私達の練習場よ♪」  みんなの驚く顔を横目に、スタスタと中に入っていく和恵。  蛍光灯が光々と照らすその部屋は、部屋と言うにはあまりにも広すぎる。  敷地面積からすると、  居酒屋 華夢on の店はおろか、向こう 10~15軒 隣まで行ってもまだ突き当たりには  届かない程。  その天井はビル5~6階分は入るであろうという高さ。  壁はコンクリートの打ちっぱなし。  夏だというのに、とてもひんやりとしている。  その壁には、水銀灯も設置されており、スイッチを入れたばかりなので、  まだうっすらと灯り始めたばかりだ。  その広いスペース、  まず入って手前には、見たことも無いベンチプレスが待ち構えている。  奥は広いスペースのままガランとしていた。  ただ、壁側には、鉄の板が飛び飛びで置かれていて、その板の後ろにはとても頑丈な作りで  ど太いH型鋼が支えられており、そのまま壁に埋められている。  それが反対側の壁にも施されており、同じ間隔ながら、その位置は互い違いになっていた。   椿   「な、なんと言ってよいやら・・・・」 和恵姉さん   「これでも狭くて・・・・かろうじて最小限のスペースをキープってところかしら。」 武藤大介   「これって、もしかしてベンチ・・・プレス・・・っすか?」 和恵姉さん   「そっ、これで毎朝毎晩持ち上げているわよ。」  見ると、手にするところは鋼材のH型鋼。  その両脇には、四角い形の重り。それも大きくてぶ厚い。  それをハメる穴は、特注とみられH型鋼の大きさとその形に抜かれていた。  柄に当たるH型鋼を載せる台も、これまたH型鋼で出来ていた。 和恵姉さん   「武藤君、持ち上げてみる・・・?」 武藤大介   「いえ・・・・やめときます。    柄の部分だけでも無理と分かるっす。」 椿   「こ・・・これは今・・・・」 和恵姉さん   「重さなら、片側1t。 つまり2tの設定ね。」  『 に、にトン ! 』 和恵姉さん   「そっ。    中学生だからまだ 150kg までねって止めておいたんだけど、    こういちがこれじゃ~練習にならないって言うから・・・・    ちょっとずつ重くしていったんだけど・・・・    この重さ、予定では高校入ってからだったのに。。。    もっともじっくりと仕上げていられなくなっているのもあるけどね。」 椿   「こ・・・こんなのが持ち上がるんですか・・・?」 和恵姉さん   「えぇ、長く続けられる程度にね。    あなた方もベンチでは限界よりはずっと軽くして何回も持ち上げるでしょ♪」  そういうと、和恵はベンチに横たわり、H型鋼の柄のところに両手を広げて下から当てた。  そして・・・・           カチャン・・・・  重りと柄の僅かな隙間が、柄が持ち上がることで音が鳴った。  さすがのH型鋼も少ししなったような気がする。  続けて和恵は腕を伸ばすと、 和恵姉さん   「い~ち、にぃ~、さぁ~ん・・・・」              カッチャン、カッチャン、カッシャン・・・・  と、フラつく様子もなく、上げ下げを繰り返し始めた。 武藤大介   「な、なんと !!! 」  こんな重さを持ち上げる人を見たことのない武藤、目をまん丸におっぴろげて驚いた!  無論、椿、利江とて同じだが、こちらは言葉にすらならない。  カチャン・・・・ 和恵姉さん   「とまぁこんな感じね。。。」  台座に載せてから起き上がった和恵、ベンチプレスの横に立つと、なんと !!! 和恵姉さん   「まだこの重さなら、両手使わなくても。。。」                         カチャン・・・・  そういうとH型鋼の真ん中下側に右手を回し、ヒョイっと片手で持ち上げてしまった  のだった!  こうなると、もう誰も言葉にならなかった。 リツコ   「2tを軽々。。。これじぁ当然だわね♪」 和恵姉さん   「あら、リツコも来てたのね。。。」 リツコ   「こんにちは。    仕事が延期になったので、こっそりとこちらにお邪魔しちゃいました。    とくさんが、みなさんこちらだと。」  『・・・・・』 リツコ   「あらあら、みんな抜け殻みたいになっちゃって・・・・    この重さ、スペック-3の私にも持ち上がるわ。    でもね、片手ではさすがにちょっと・・・・    クラウスなら軽々と持ち上げてしまうかもしれないけど・・・・」 椿   「リ、リツコさん。」 利江   「あ、リツコさん、こ、こんにちは・・・・」 リツコ   「こんにちは。    ようやく話が出来るようになった?」 利江   「え・・・えぇ。。。」 リツコ   「みんな放心状態だったからね。。。」 椿   「む、武藤君、」  慌てて武藤をゆすって現実に戻す椿。 武藤   「あ・・・・、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」  またまた息をしていなかったようだ。 和恵姉さん   「椿君、武藤君、良かったら外に出られるようになるまでここを練習に使ってもらって    も構わないわよ♪    階段の上り下りだけでも足腰鍛えられるでしょ。。。    リツコ、少し汗を流すわよ♪」 サッ リツコ   「はい。」  返事をしたリツコ、既に広いスペースに移動してしまった和恵を追って、  中に走り込んで行った。  そして・・・・ リツコ   「ハーイ、ハイハイハイ、タァーー!」  和恵に全力で向かうリツコ。  和恵はその蹴り、手套、肘をしっかりと受け止めながら相手をしている。  場所を変え、攻撃を変え、リツコが容赦なく和恵に挑んでいた。  椿はかろうじてそのアバウトな動きだけは目で追えていた。 椿   「スピード対決だけに、ザウバーとリツコさんの対決よりも、まるで速度が違うっ!    こんな練習、見ているだけでも動体視力の鍛錬になる・・・・す、凄い!」 利江   「私は動きの場所だけなら・・・・」 武藤大介   「丸で追えないぞい・・・・立ち止まって打ち合うところだけが微かに・・・・」 椿   「こんな人達を相手にしなくてはならないのか・・・・    せめてリツコさんとそこそこ立ち会えるまでにはなりたいが・・・・    生涯かけても・・・・こりゃ無理かな・・・・ ^ ^||| 」 利江   「ここなら誰にも邪魔されず、思いっきり出来るじゃありませんか。    リツコさん相手にどんどん立ち会うべきですよ。              今のリツコさんがお姉さんに挑んでいるように。。。」  椿はゆっくりとうなづきながら、二人の練習を目で追うのであった。                             -つづく- 第165話 厳戒令 8 へ (ジャーーー、 キュ)   ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。     また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。

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