読書レビュー 「ばにらさま」山本文緒:著 文春文庫
同時代を生きた同世代の作家・山本文緒。読むのが遅すぎた。知るのが遅すぎた。恋愛体質と思える作家・山本文緒の恋愛小説は過激で奥深く、心身ともに共振するようなものである。あまりの劇薬な強さに衝撃を受けた。震撼するほどの内容は意を決して読むことを余儀なくされ、簡単には手に取れない気がした。それでもようやく「自転しながら公転する」を読んで、心酔してしまい、これまた時を経てエッセイ「無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記」を読み。そしてとうとう「ばにらさま」を読んだ。新作を遺稿や絶筆として残したいと願った山本文緒はあまりに体力のなさに断念し、旧作の出版という手に出ることにした。そして出されたのが「ばにらさま」。短編集である。(以下、Amazonより)二度読み必至!伝説の直木賞受賞作『プラナリア』に匹敵する、光と闇が反転する傑作短編集。1,「ばにらさま」 僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい……。2,「わたしは大丈夫」 夫と娘とともに爪に火をともすような倹約生活を送る私。3,「菓子苑」 気分の浮き沈みの激しい女友だちに翻弄されるも、放って置けない。4,「バヨリン心中」 余命短い祖母が語る、ポーランド人の青年をめぐる若き日の恋。5,「20×20」 主婦から作家となった私は、仕事場のマンションの隣人たちと……。6,「子供おばさん」 中学の同級生の葬儀で、遺族から形見として託されたのは。以上6編を収録。日常の風景の中で、光と闇を鮮やかに感じさせる凄み。読み進むうちにぞっと背筋が冷えるような仕掛け。「えっ」と思わず声が出るほど巧みな構成。引きずり込まれる魅力満載の山本文緒文学!2021年10月に惜しくも逝去した著者最後の小説集。解説=三宅香帆(以上、Amazonより)こうなれば「プラナリア」も読むしかなるまい。ばにらさま (文春文庫) [ 山本 文緒 ]