2019/11/07(木)23:28
「セインツ 約束の果て」
ケイシー・アフレックが出てる。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のような見どころのある作品を期待した。ルーニー・マーラが出てる。「ドラゴン・タトゥーの女」のように、意外性があり存在感のある女性を期待した。映画祭にも出品され、なにかと評価されてそうだ。そして何より実話とある。
そして、見た。
見始めて、見なくてもいいかという感じ、予感がした。
役者はそろえたが、作品として完成していない。事実に事件に触発されて映画化されたはずなのに、その触発された衝撃が描かれていない。芯の部分が全く見えない。思いはあったのだが、結実しなかったのか。残念でならない。
脚本・監督がデビッド・ロウリー。彼を知らない。何が良くなかったんだろう。
2013年/アメリカ/98分/G
監督:デビッド・ロウリー
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ、ベン・フォスター、ネイト・パーカー、ラミ・マレック、キース・キャラダイン
原題:Ain't Them Bodies Saints
お薦め度
「セインツ 約束の果て」★★★(60%)
<ネタバレ>
いつの時代の話なのか。”This was in Texas”と冒頭に表示される。
「テキサスであった話」
実話なのである。その実話に触発されて、何かを描きたくて監督デビッド・ロウリーが映画にした。
しかし、この作品。何も描けていない。事実あったことだけを映しただけ。主人公は男なのか、女なのか。内実に踏み込んでいない描き方だ。
察するにたぶん、男が主人公であるのだろう。銀行強盗犯として、保安官を撃った犯人として服役する男。刑は25年。一緒に銀行強盗を働いた妻との間にできた娘とは会えていない。収監されて4年。脱獄した。そこは映像としてない。説明されるだけ。妻も知らなかった過去5回(?)の脱獄失敗。6度目にして成功。妻へ手紙を書くが、内容は映し出されず”Dear Ruth,”とだけ映るだけ。
失敗した脱獄の数々、妻への恋慕、娘に会いたい思い。それらがまったく映し出されていない。妻の方もしかり、夫への気持ちは描かれない。ただ、収監された男、罪から逃れた女。脱獄した男、夫を逮捕されないために旅に出ようとする女。
2人は同じ銀行強盗犯をして保安官との銃撃戦により射殺された男とともに犯罪を指示していたであろう射殺された男親に兄弟同然に育てられたらしい。らしいというのは、描かれることなく、セリフで一緒に育てた、という一言があるだけだから。NHKの朝ドラのように幼少期からの生活を描いていれば、三人の関係性、二人が恋に落ちた様子などがわかり親近感がわく。そして、なぜ銀行強盗をしたのかというところも見せれば、より理解が深まる。妻や子に会いたいがために脱獄を試みる男の境遇を描くことでその思いに共感していくことができる。それらがなく、あらすじのように説明のように表面だけ映していくから物語に入り込めない。このような描き方なら、テレビの再現フィルムのほうがよっぽど男の心情を知ることができる。と、思う。
女(妻)と撃たれた保安官との淡いが深い恋愛感情もなんとなく見せるのではなくて、そこにどれほどの思いがあるのか、事実や行動を積み上げていかないとなかなかわかりづらい。しかし、脱獄犯と妻との恋愛感情よりも保安官の横恋慕の思いのほうが描けていた気がするが。
監督は自身で納得しすぎて表現をしきれなかった、と思える。素材がありながら残念である。
また、実話によくある後日談が一切描かれない、テロップとなってその後を表示しないのも、何か意味があるのだろうか。