マイライフ・マイシネマアルカディア

2022/11/20(日)23:06

映画レビュー Netflix「ブロンド」

家で見た映画(1716)

Blonde (2022) (imdb.com) 見るに堪えないというか、見る側に忍耐を強いる作品である。 この作品はドキュメンタリーではないので、また事実に基づいた小説を原作としているので、真実はない。事実だったりあたかも本当のことであったりするのだが、マリリン・モンロー亡き今、死後60年も経って真実が描かれるわけもない。 とはいえここまで赤裸々にというか内実に迫った物語は今までなかったのではないだろうか、殿方との秘め事までも映像で映しとろうとするこの作品は悪趣味ととらえられても仕方がない。批判の多い作品でもある。後半部分、いよいよ睡眠薬に支配されその量が増えていく過程はうつろになっていく現実世界と夢、またはまどろみの中の不確実性、不明瞭な世界が映像として映し出される。その手法は意欲的で斬新だといえるけれど見る側からいえば少々度が過ぎるとも思えた。 マリリン・モンローを演じるアナ・デ・アルマスは並々ならぬ決意と情熱をもってこのマリリン役を演じたと思われる。彼女が流す涙も羞恥することなくさらす裸体もマリリンであることがため。ノーマ・ジーンであるときのアナ・デ・アルマスはアナ・デ・アルマスに見えるのに、マリリンになるときの、マリリンになったときのアナ・デ・アルマスはマリリンかと見間違えるほどマリリン・モンローであった。堕胎や流産を何度も経験したと描かれるマリリンは心寂しい女性だったのかもしれない。親からの愛は受けられず、男からの愛は愛というよりは独占欲や男の優位性、優越感を得るもののように思えたし、子供はなかったので子供への愛はわからずじまいである。 ふと、この時代の70年前のハリウッド映画界は男の時代だったのではないだろうか。子役からの大スター、ジュディ・ガーランドがハリウッド製作者たちに体を提供していたことは事実らしいが、その当時は男たちの餌食とされることがあたりまえのようになされていたのであろう。島本理生の小説「ファーストラヴ」で描かれていて、映画「ファーストラヴ」を見てはっきりしたことだが、父を殺した被告の女子大生・聖山環菜がテレビのアナウンサー最終試験で男たちに囲まれた状況はマリリン・モンローがハリウッド映画の撮影所で体験したことと同じなのではないだろうか。女性一人が大人の男たちに囲まれ、見つめられる。画学生たちに囲まれモデルの経験をした聖山環菜はその時の感情がフラッシュバックして手首を切り、父に見せに行ったのでは。この畏怖の思い。ハリウッド撮影所の男どもに囲まれて裸体を差し出すマリリン・モンローの思いはいかばかりか。女性の裸を見ることも、スカートの中を見ることも男が望むもの。その好奇の目に対する感情。マリリン・モンローはどう感じていたのだろうか。 批判のある作品であることは間違いない。批判されて当然と思える描き方だと思える。その中でマリリンを演じたアナ・デ・アルマスはすごいと思えた。 Netflix にて 2022年/アメリカ/167分/ 監督:アンドリュー・ドミニク 原作:ジョイス・キャロル・オーツ 脚本:アンドリュー・ドミニク出演:アナ・デ・アルマス、エイドリアン・ブロディ、ボビー・カナベイル、ゼイビア・サミュエル、ジュリアン・ニコルソン、リリー・フィッシャー、エバン・ウィリアムズ、トビー・ハス、デビッド・ウォーショフスキー、キャスパー・フィリップソン、ダン・バトラー、サラ・パクストン、レベッカア・ウィソッキー 原題:Blonde(「金髪」) お薦め度 「​ブロンド​」★★★☆(70%)

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る