2023/02/12(日)21:58
読書レビュー 「秘密」東野圭吾:著 文春文庫
傑作と絶賛されている東野圭吾の「秘密」を読んだ。
ファンタジーで描かれる内容は、あまり好きではない。
浅田次郎の「地下鉄に乗って」を読んだときにも感じたのだが、ありもしないファンタジーの世界はよほど感情を揺さぶられるものであれば、是として見もするけれど、そうでないと興ざめするばかり。
この「秘密」は、題名が”秘密”なだけで、その”秘密”とは何だろうと興味を持つ。
興味は持ったが、冒頭のショッキングな事故にはじまり、意識不明の娘が意識を回復した時に起きた事象というものが受けいられなかった。それゆえか、その後の展開もいろいろと仕掛けは施されていたのだけれど、物語の根幹には関係のない枝葉末節のような気がして、なかなか物語に入るこめなかった気がする。とはいえ、先の展開が気になり読まずにはいられなかったけれど。
この本について、既読者に感想を述べたところ、関心を示さなかった私に対し、作品が古いせいもあるのではという指摘をいただいた。出版当時としては物珍しい設定の話もその後多くのファンタジーものが流布されるに及んで、本なり映画なりで数多くの作品を知っている私には驚きはなかったのでは、というものであった。
「秘密」のラスト、”秘密”は面白くなかった。
ファンタジーなのだけれど、その裏付けがなく、また母親の概念が娘に置き換わっていく過程も不思議で、納得できなかった。
加害者たちに寄り添う主人公の思考が理解できず、腑に落ちなかったので、面白く感じなかったのかも。他の登場人物の行動も首をひねるものだったので、共感できなかったと思えた。
秘密 (文春文庫) [ 東野 圭吾 ]