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2024/06/22(土)12:30

ドラマレビュー 「9ボーダー」 最終話

テレビ(873)

金曜ドラマ『9ボーダー』|TBSテレビ 「9ボーダー」最終話はとても良かった。 これまでの物語を集約して上出来な結末であった。 キャストたちのうまさ、特に向かい合った七苗(川口春奈)に意見されていた時に、セリフを食い気味にかぶせていく六月(木南晴夏)は絶妙。木南晴夏の上手さに驚く。 松嶋(井之脇海)の退職日、ダンボールを持って事務所を去るのは、アメリカ映画やドラマを意識してのありえない図柄であったので、笑えた。その彼が去ったあとの六月(木南晴夏)と盛岡(内田慈)の”ピーク”の更新のかけあい。アドリブなのだろうか。とても微笑ましく、心温まる。アドリブでも最高だが、もしセリフとして書かれていたなら、書く人も演ずる人も最高である。 かけあいというよりはつつき合いのようになったほほえましいシーンが柴田悠斗(松下洸平)に会いに行った後、高木陽太(木戸大聖)が大庭湯の外で八海(畑芽育)との会話があり、お土産を渡し、看板を持って去っていくシーン。陽太の言葉の真意を確かめようとする八海(畑芽育)がかわいく愛おしかった。これまたアドリブのように思えるが、絶妙。 YOUの声音はYOU特有で、その言葉を聞くときに安堵したり思い直したりできて、最適キャストと思えた。終盤に登場の大政絢は難しくも思える役柄であったが、その美しさを前面に出しながら、柴田悠斗への想いとともに自らの気持ちを大切にするがゆえに別れを切り出すシーンを演じ、みごとであった。 これまでもそうであったと思うがファッションの素敵さに気づいた。 一人闊歩する七苗(川口春奈)のモスグリーンというよりはグレイ一色のモノトーンの衣装。街中では誰も着そうにないファッショナブルないで立ちに目を奪われた。海外に旅立つ松嶋を見送りに行った時の六月(木南晴夏)の紅白ファッション。艶やか!!あっぱれ!である。 「9ボーダー」最終話ではほぼ誰も泣かないのに、見ている私は涙ぐみ、そして涙をこぼしていた。共感というかとてもとても感じ入ったからである。 これまでのことがありながら回想シーンで処理するわけではなく、それぞれ大庭湯についての打ち合わせなどでさりげなく(?)登場人物を振り返れるのが素敵。30歳の誕生日を祝ってもらえて、一年を振り返っての七苗(川口春奈)の言葉はドラマの物語を復習(思い起こ)させて、思いを深く強くした。そして人と人が別れ、悲しみながらも前へ進もうとするときに、1(イチ)か0(ゼロ)ではない選択。アリかナシではない選択があり、それぞれがそれぞれありのままの自分でいて。何かになろうとするわけではなく、何者かになろうとするわけではなく。ありのままで認めあう生き方を模索していこう。といった内容が強く胸に響いた。子供だったらそうはいかない、自己というものが確立していないから。でも大人なら自分を自分らしく生きるために、折れないということではなくて歩み寄れる道を探していこう。 とても現在(いま)のドラマに感じた。 とても感動できた、素晴らしい最終話であった。 脚本家は金子ありさ である。

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