2024/11/05(火)00:31
読書レビュー 「夜刑事」大沢在昌:著 水鈴社
「夜刑事」ヨルデカはヨルシカと一字違いだな、なんてことに気づく。
新作の新キャラクターの刑事であるのに、読み始めて新宿鮫と混同してしまった。鮫(サメ)ではなく岬(サキ)と呼ばれる刑事。ヴァンパイヤ・ウィルスに感染した唯一の刑事。
荒唐無稽な設定だがコロナ禍のパンデミックを体験した経験があると、この不可思議極まりない特異なウィルスに関してリアリティが感じられる。起こったことがないことは絵空事として排除されるが、起こってしまったことに関しては絵空事が絵空事でなくなる。現実味を帯びるのだ。
大沢在昌のアップデートに驚く。出て来る外国人がもはや中国人でなくベトナム人なのだ。犯罪に加担する人種も違っている。そしてリサーチしたのだろう、土地に関しても詳しい。
さて、ウィルスに対するワクチン研究というものも描きながらドンパチのある展開、からむ女スパイ、興味を惹く仕掛けはいろいろとあった。よく考えた作品であるけれど新宿鮫と比べると練度と歴史がちがうというか慣れ親しさの深度も違い、新宿鮫のほうが痛快な気がする。とはいえ、ウィルスというめずらしいものを題材にした刑事小説。シリーズ化なるか、注目したい。
夜刑事 [ 大沢 在昌 ]