弾幕ロマンス Stage2-3
ゲームオーバーである。このゲームオーバーと表記されるという事はずっと変わらないのだなと、ふと思った。俺としては目標を大きく越えたところまで進めたのだから満点であるのだが、席を立って振り返ってみれば難しい顔をした加藤さんがいた。「さて、中村さん。反省をしましょう」そう来たか、ともう思わなくなっている自分がちょっと嫌だ。「なんでやられたかって言うなら対処できなかった、それだけですよ」「でも2面は対処できてましたよね、素晴らしかったです」「まぁ、そこは調べてきたからね」その言葉に加藤さんは頭に手をあててヨロヨロとしてみせた。「どうしたの?」「あまりの驚きと感動に失神しかけてしまいました」・・・こういう冗談を言う子なのか。普通か変かで言うならば、どちらかと言うと変な女。変な女と凄く変な女で言うならば凄く変な女の部類に入るのだからもうこれくらいではこちらとしては驚く気も起きはしないが。「だってこれは弾の飛び方とか敵の出てきかたを覚えればいいわけだろ、なら覚えればいい」「加えて知識に対処しうる技術ですね。人生と同じです」まさか、たかがゲームで人生について語られるとは思わなかった。しかし言いえて妙である。知識と予測、対処できるだけの能力。それだけあれば大概の事は足りるだろう。・・・本当にそう言えるのか?何を難しく考えているのだとと、自分を封殺するように思考を切り替える。「それにしても興味を持っていただけたのですね、下調べをしてくるなんて」「気まぐれだよ」「お礼にジュースをおごりましょう」「中学生なみのお礼だな、ってか何のお礼だよ!」「私の奇行に興味を持っていただけたお礼です」「あ、奇行って自覚はあるんだ」自分の趣味を奇行と呼ぶのはいかがなものかと思ったが、そこについては触れないでおいた。真の意味で奇行というのならば、俺に何が飲みたいかと聞かないで行ってしまった事だ。「にしてもさぁ」急に話を振られて少し焦る、たしかやっぴいとか言う店員だ。「カトちゃんってあんな顔すんだ。カトちゃんのカレシなわけ?」物凄いタメ口っぷりとチャラついた若者独特の発音にムッとするも、ここでいらついてはまるで自分がオッサンのような気がして平静を装う。「いや、そういうわけじゃないよ」「あー、マジかー」少しやっぴいの様子に違和感を覚える、今のは完全に落胆といった様子だ。俺の頭の中の常識がから考えて、常連の女性客と店員、その女性客が連れてきた男。この関係性から導く答えは、個人的には理解できないが好意を抱く客の連れてきた男への嫉妬だ。そうでないとするならば、この表情の真意は何なのだろう。「どうしてそういう事を聞く?」不覚にもそう思ってしまったからうっかりそんな事を口にしてしまう。これではまるで俺がガッツイてるみたいだ。「いやさぁ、あ~。でも俺から言う事じゃないからなぁ」頭足りなそうな喋り方の割にはそれなりに気を使う事はできるらしい。少しやっぴいを見直すも、ここでそんな気を使われてもかえって俺はやきもきするだけだ。「お待たせしました」そうこうしているうちに渦中の人である加藤さんが帰って来た。「はいどうぞ、ドクターペッパーです」「ど、ドクペか」「知らないんですか?ゲーセンで飲むものはコーラかドクペと決まってます!」「いや、そんな決まりは初めて聞いた」そう口では言いながらも、やはり不覚にも俺もゲーセンで飲む物といったらそれを思いつく自分がいるのだ。