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真理を求めて

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2004.09.15
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カテゴリ:哲学
ニヒリズムは、「真理・価値・超越的なものの実在やその既成の様態をことごとく否定する思想的立場」と辞書では定義されている。僕は、これらのものを徹底的に疑いはするけれど、全く否定してしまう立場ではない。だから究極的にはニヒリズムではないとは思うのだが、ニヒリズムには共感してしまう部分が多い。こうあらねばならないと言う理想主義を素直に信じられないからだろうか。

どうしてニヒリズムと絶望などという組み合わせの言葉が浮かんできたかというと、テレビである少女のドキュメンタリーをちらっと見たからだ。その少女は、肉体的な老化が普通の人よりも早いという難病に冒されていた。原因は遺伝子の異常にあるようだが、それは解明できていないので治療法がないということだった。

この少女のことを考えると、ほとんど希望というものが浮かんでこない。この難病に冒された子供の平均寿命は13歳ということだった。少女はこのことを知っており、自分のような子供を作るなんて言うのは、もしも神様がいたらそんなことをするはずはないから、神様はいないわと語っていた。現実に希望が持てず、運命という自分の責任ではないもので希望をたたれている時に、最後のよりどころになるのは、運命を司る神を信じることではないかとも思えるが、少女はその神を信じることが出来ない。

このような深い絶望の中にいる人間は、本当のニヒリズムの中に入ってしまうのではないかと思えるのだが、少女にはそのような様子が見えない。自らの死を意識し、絶望の中にいながらも、なお毎日を精一杯生きることが出来るという心は、どのようなものなんだろうか。この少女を見て、自分の中にあるニヒリズムがなんと軽いものであるかという感じがした。

僕の中のニヒリズムは、現実をどうとらえるかと言うことから生まれてくる。現実というのは、現代社会と呼んでもいいだろうか。個人を超越した存在であり、個人にとってはどうしようもない部分を持っている社会というものが、個人を圧迫してくると言うことを感じている。そして、その圧迫に抵抗するには個人としての限界があり、社会に対する絶望感が生まれてくる。社会のことなんか考えなければ、幸せな忘却の中で生きていけるかもしれないが、どうしてもそこに目がいくというのは、ある意味での個性なんだろうなと思う。

僕の持っている絶望感は、現実の実感としての絶望感ではない。あくまでも客観的に外から眺めている絶望感だ。だから、ニヒリズムが深まらないんだろうと思う。上に書いた少女や、チェチェンの民衆の中に実際に存在する絶望感は、現実には誰も希望を与えてくれないという種類の絶望感だ。

僕が、これらの絶望を外から眺めることが出来るというのは、僕自身には本当の意味での絶望が訪れていないからだとも言える。僕は、その絶望を見ないようにしようと思えば、それを忘れることさえ出来るからだ。それなのに、なぜことさら絶望を見ようとするのだろうか。

本当は、絶望など見ずに、もっと前向きに希望を語る方が人々に勇気を与えるのかもしれない。しかし、今の時代に希望などあるのだろうかという疑いの方が頭に浮かんでくる。

宮台真司氏は、今の時代は、すべてを相対化して考えてしまえば、みんな同じ穴の狢になってしまうとどこかで語っていた。権力を批判し、文明を批判しても、その権力や文明から受ける恩恵をすべて排除することが出来ない。恩恵を受けているのだから批判する資格がないということではないが、その間に矛盾を感じるのは確かだ。そして矛盾を感じてしまうので、その批判にもある種の弱さを感じてしまうこともある。ニヒリズムが深まらないと言う感じもしてしまう。

皮肉なことに、最も絶望が深い人々が、ニヒリズムに陥りながらも、究極的存在の最たるものである神の名の下に現実を否定するテロリズムの方に走るという現実もある。絶望的な状況であるのに、そこから救ってくれない神を否定することが出来ず、むしろ神の名の下に現実を否定してしまう結果になっているように感じる。それくらい、究極のニヒリズムであるすべての現実の否定は難しいのだろうか。すべてを否定するには、人間の力だけではだめで、神の力を借りなければならないのだろうか。

10歳の難病の少女は神を信じないと言っていた。神を信じないことが、もしかしたら究極のニヒリズムに陥らないですんでいるのだろうか。すがるものがあると、むしろそれ以外をすべて否定してしまうのではないだろうか。





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最終更新日  2004.09.15 09:11:14
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