ある子の中学受験と、その6年後。
塾の卒業生で今、高3のメンバーからちょこちょこと近況報告が入ってくる時期になりました。その中で今日は、ナオ(仮名)の話をしたいと思います。(※以下、カタカナの名前はすべて生徒の仮名です。)彼女が入塾してきたのは4年生の終わり。ナオはとても小柄で、少人数のクラスだけどそれでも席は前。すごく気分屋で、日によっては別人のよう。積極的にがんがん挙手をする日もあるかと思えば、全く何を言っても耳を傾ける気がないようで、軽い注意をしたらぷいっとすねることもある。そして塾に慣れてくると、宿題も手を抜いているのが明らかで空欄が目立つことも多くなってきた。好きな社会は小テストもけっこう頑張っているようだが、算数や国語の小テストは惨敗。授業中の理解力を見ると、やってもできない子では決してありません。理解する力はあるけれど、マジメにコツコツができないタイプ。授業前後の和やかな子供同士の会話でもびっくりするような空気の読めなさで、場の空気を凍りつかせることも度々あった。他の子の話の流れをぶったぎって、自分の思いついた話題を投下するので、ヒヤヒヤした。さりげなくフォローに入ることもあったけれど、周りの子たちがやさしいいい子たちで、ナオが一人ぼっちになることはなかった。保護者懇談会で、お母さんからナオの小さい頃のお話を聞くことができた。ナオは、生まれてすぐにICUに入った。肺に大きな問題があり、その手術をする際にはあまり長くないことも覚悟して欲しいというようなことも言われたそう。「いつまで生きられるかわからないかもしれないと言われたナオを少しでも笑顔でいさせてやりたくて、甘やかしてしまった。ナオは我慢とか根気のいることができなくなってしまった。でも、もう体のことは大丈夫。体育も参加できます。今のままではナオは友達ができなくなるかもしれません。姉は我慢ばかりしてきて、この子は自分をお姫様のように思ってしまっている。我儘なので友達ともよくぶつかります。この子を鍛える必要もあると思ったし、よくない評判を聞く公立に入れるのはとても心配で。」彼女の独特の幼さにはそんな事情があった。学校ではいじめの標的になることもあり、欠席が続いていた時期もあるそうだ。そのような事情だったことを聞き、私達も彼女が成長してくれることを願って接した。他にもいじめられたことが私立中学を希望する理由となった子がいた。そういう子たちにとって塾も一つの居場所となるよう、子ども同士の関係には細かく配慮したつもりだった。「国語の時間」を利用して、本当に人として賢い人とはどういうことか、道徳のような時間を意識することもあった。ナオのお母さんと話をし、ナオの成長を考えることで、私も、未熟な子どもが成長する過程で関わる大人としてできることは何かいろいろ勉強させてもらった。最後まで算数には苦労したし、つらいことから逃げようとしたりごまかそうとしたりするのが完全になくなるのにはかなりの時間を要したけれど、彼女は変わっていった。私も、彼女のよくない点を遠慮なく注意するようになっていた。いつの間にか、最初の頃の「配慮」が必要なくなっていた。ナオは強くなっていた。ナオは、志望校の女子中に合格した。そのときの言葉は、今でもよく覚えている。「先生、私さぁ、もっと厳しくやってくれたらもう少し賢い中学も合格したと思う? なんか受験ってちょっとおもしろかった~。 お母さんが私のこともっと厳しくしてくれたら私、もっとかしこかったかもよ?」お母さんと顔を見合わせて笑った。「もっと厳しくてもよかったで♪私乗り越える力持ってたでしょ?」といわんばかりのこの言葉。頑張ったからこそ、今手にした合格がうれしいのだとちゃんとわかってくれている。頑張るってかっこいい!頑張ると自分に自信が湧いてくる。そういうことを知ったのだから、この子にとって中学受験は、大きな意味があったなぁと感じた。それから6年後の今年。ナオは、所属していた運動部で近畿大会にも出場したそうだ。毎日の部活動でさらに強くなったナオは、体育の先生という夢を見つけた。体育の先生の資格のとれる進学先に推薦で進路も決まったと報告があった。小学校時代に友達関係に悩み、いじめられて教室がキライな場所になりかけたこともあるナオが、学校という場所で自分の夢を見つけて、学校という場所で働きたいと思った。中学高校で、それだけ素敵な仲間と、素敵な先生に出会えたということ。その仲間と先生に会えたのは、ナオ自身の頑張りがあって受験を乗り越えたから。赤ちゃんのとき命すら危ぶまれたナオが、近畿大会で活躍し、体育の教師を目指すなんて、親御さんはどんなに喜ばれたことだろうか。明るい笑顔が目に浮かぶ。いつの間にかそんなに頑張りやさんになっていたんだね、ナオ。残り少ない高校生活、思い切り楽しんでね。今年、短大・大学での授業、新たに開校する塾での塾講師復帰、私にとっても大きな変動のある年でした。さらに忙しくなることが予想される2009年ですが、その分得られる充実感を楽しみに頑張っていきたいと思っています。息子(3才8ヶ月)の成長も楽しみです。こんな更新のマイペースなブログをのぞいてくださったみなさんもありがとうこざいました。来年もよろしくお願いします。■■■■■中学受験の6年生に関する日記■■■■■→○「合格1つは必ず」→○「入試直前・子ども達の不安→○「6年生へ・入試当日の話」→○「面接・自分の長所が言えますか?」→○「入試当日!~おまじない~」親にできる中学受験のサポートの総仕上げ。クリックしてくれたらうれしいです♪↓↓ ※過去の中学受験関連記事を読む。→TOPの左下「フリーページ」の欄からどうぞ。※中学受験物語→私が生徒と体験した中学受験。塾での子どものたちの成長を見て書いたものです。