vol, 75 「トキメキ☆キッチン」
週末に買い物に出かけたショッピングセンターの、キッチン用品専門店で、その人とは出会った。履き古したジーンズに、白いTシャツ、半袖から覗く日に焼けた腕が眩しかった。入り口付近でつまらなそうに立っているから、きっと彼女の、もしくは妻の買い物に付き合わされているのだろう。手持ち無沙汰に爪を見ている。 私は旦那と新しいまな板とフライパンを買うためにやって来たのであるが、旦那がブランド物のワイングラスに見とれている隙に、もう一度彼を見に戻った。まだつまらなそうに立っている。彼女の買い物が長引いているようだ。 髪は短く刈られて、髭もキレイに剃られており、けれどそれはゲイの作った清潔さではなく、ストレート特有の爽やかさと言うのだろうか、見るだけでため息が出そうになる。Tシャツ越しに見える胸筋は、何か運動をしている証。芝生の上で友達とボールを追いかけたりするのだろう。 ふとそこへ、初老のアジア人男性が現れ、彼と何やら会話を始めた。アジア人男性の方が、手に持っていたグラスセットを一緒に見ながら笑みを浮かべている。( ̄□ ̄;)ナント!! 彼は彼女を待っていたのではなく、『彼氏』を待っていたのである。こんなカップルが存在していいのだろうか?なんて不条理な世の中であろう。 一人ワナワナとしていると、彼氏の方がまた店の奥へと戻り、彼は再び一人になり、顔を上げた目線の向こうに私がいた。フライパンを片手に彼を見つめていた私が。目と目が合いそうになったので、私は思わず視線を逸らしたが、それはひどくわざとらしかった。 身近にあった見たくもない皿を手にとり眺めたものの、やはり彼が気になる、他の皿を手にとる振りをして彼を見ると、こちらを見ているではないか、思いきり目があってしまった。また目を逸らしたところにうちの旦那が立っていた。ヒィッ!(゚ロ゚ノ)ノ お会計のレジの順番を待ちながらも彼を見たが、向こうもまだチラチラとこちらを見ている。老人は近くにはいない。ああ、まさか、これって脈有り?そうよね、歳は違えども同じアジア人だもの、少しくらいは興味あるのかもしれないわ、どうしよう、私は旦那と一緒だし、でもこんなチャンスは滅多にないし、まだ私のことを見ているし、ああ、けれど勘違いってことも有りえるわ、自分から話し掛けるなんて出来ないわ、せめて向こうから声をかけてくれたらいいのに、だけど私は売約済みだし、なんてことなの~ とか考えてたらお会計が終わってしまってた。そして彼の待つ?出口へと向かう。そこで彼は立っている。胸が高鳴る。ドキドキする。今彼ははっきりと私を見ている。私の旦那が先に店を出る。私は手に汗を握っている。彼の横を通り過ぎる。横目で彼を見ながら。彼も私を見ている。そして彼の口が開いた。 ( ゜Д゜) 「(彼) あの、ちょっと・・・」 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! なんと向こうから話し掛けてきたではないか、私は耳を疑ったけれど、確かに私の目を見て話し掛けている。どうしよう、なんて言えばいいのか、今日は急ぐからって電話番号だけ渡せばいいのかしら、メルアドの方がいいのかしら、私だけまた後で戻ってきたらいいのかしら、どうすればいいの~~~、困っちゃう~~~ ヽ(*´∀`)ノ。そして彼がささやいた。 ( ゜Д゜) 「(彼) すいません、ちょっとカバンの中身見せてください」 ・・・ヽ(*´∀`)ノ・・・ ・・・え? ・・・パードン??? ・・・お店の人でした・・・。万引き防止のカバンチェック係り・・・。 lll(-_-;)lll っていうか・・・ 紛らわしい態度とってんじゃないわよっ!!! 店の奴ならそれらしい格好しろよっ 私フライパンなんて取らないわよっっっ! ふんだ、どうせ、私なんて勘違い女よっっっ!なにさっっっ!! ウンコーーーーー!!! ∧_∧ ( ´∀`) /, つ (_(_, ) しし'