虚構と退廃の闇に注がれた光【永遠な時間】空けぬ夜は無い。 誰かがそう言っていた。 眼を閉じた瞬間。 時間が走り貫ける。 自分を残したまま、闇と共に時間が通り抜ける。 残された自分だけが、止まったままの次元に彷徨う。 1分間=60秒。 この公式は、今の自分には当てはまらなかった。 数秒間が永遠に続く感覚。 TVモニターでは、《歌舞伎》が流れてる。 スピーカーから《シュトラウス》が画面とは関係なく流れる。 アイス・ココアの入ったグラスが汗を掻く。 永遠にも似た虚構が自分を包む。 身体が欲しているのか? 脳が欲しているのか? イコライザーの明かりだけが音に合わせている。 永久に明かないような錯覚さえ感じる。 静かに眼を閉じてみる。 瞳の奥には《オーケストラ》がフォーカスのずれたまま映る。 …音の集合体。 …音が個別に身体を刺激する。 『カラン』 今まで耳に入らない新しい音。 その聞きなれない音にハッとして、眼を開けた。 と、いうよりも自分の意思で開けたのではない。 遠い異次元空間からテレポートしてきた。 そんな感覚だけが、脳によぎる。 思い出したようにグラスを掴み、一気に流し込む。 時はまだ動いてはいなかった。 |