クレヨンしんちゃん THE MOVIE しん次元!超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~を観に行った
…お盆休みの旅行は中止にして、しかも台風の影響で高校野球も中止になった今日8月15日、私は近所のシネコンへ足を運びました。そして毎年恒例というかたちで、今年は夏休み期間上映となった「クレヨンしんちゃん」の劇場版を見てきました。※ 注意 ここからは「クレヨンしんちゃん THE MOVIE しん次元!超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~」のネタバレを含んだ内容になります。「まだ観に行っていないのに展開を先に知らされた」と苦情を言われても責任は負いかねますので、ここから先の閲覧には十分に注意してください。 実は今年の劇場版「クレヨンしんちゃん」は3DGCのアニメになるって聞いて嫌~な予感がしていました。単刀直入に言うと「クレヨンしんちゃん」が怪獣映画になってしまうんじゃないかという恐怖で、結論を先に言うとその「嫌~な予感」は的中したと言わざるを得ません。 ハッキリ言います、今年の劇場版「クレヨンしんちゃん」は怪獣映画です。 同時にこれは先に言いたいです。「クレヨンしんちゃん」として面白いのは「ふたばようち園で立てこもり事件が起きるまで」です。 物語の冒頭は悪くなかったと思います。野原家の日常のドタバタ劇を、臼井先生の独特のノリをキチンと含みつつ3DCGのアニメに落とし込んだ点はとても印象が良く、「クレヨンしんちゃん」以前からの臼井先生ファンである私をホッとさせる内容でした。3DCGのしんのすけが「ブラジャーマスク」で初登場だった点は笑いを堪えるのに必死でしたし、それを追いかけるみさえの表情の変化もとても面白かったです。この流れの中で、3DCGで最初に登場した脇役がミッチー&ヨシりんだった点も私を喜ばせたひとつです。 同時に今回のゲスト主人公である充が登場し、都内でひろしと絡みながら物語の発端を作っていきます。ここも3DCGになったひろしが良い味を出しているじゃないですかー。 この野原家と都内での二元中継で、同時に何らかの光が墜落してくるところが物語の発端ですが、それによってしんのすけと充に超常的な力が備わったことを示唆するだけで、設定面を暴露するところを急がなかった冒頭部分は良かったと思うんです。 そして描かれるふたばようち園の運動会、そこで描かれるしんのすけの超能力でひまわり組圧勝というシーンが描かれますが…古くからの「クレヨンしんちゃん」ファンはここが一番得面白かったと思います。「クレヨンしんちゃん」の古典的なネタであるよしなが先生とまつなが先生の張り合いが描かれ、それがそのままひまわり組とばら組の戦いになる流れは本当に懐かしかったなぁ。「クレヨンしんちゃん」の古典キャラであるチーターも出てたし…でもここはひとつ力説したい、「よしなが先生の顔がおかしい」と。臼井先生が描くよしなが先生は「平面顔」なんだぞー。それをあんな立体的に描いたらちょっと…正直言って、よしなが先生の顔に覚えた違和感は彼女の活躍が続く前半ではずっと気になって仕方ありませんでした。 そして今回の物語のキーを握るネギコと池袋教授の登場、やっと語られる今回の舞台設定。でも方言のギャグはハッキリ言ってしつこすぎ、あれは一度か二度でやめておかないと「しつこい」って感じるだけで面白くなくなる。ひろしが一度使ったところがやめ時だったと思う。 同時進行で充が増長して、ふたばようち園ひまわり組で「かすかべ防衛隊」の面々とよしなが先生を人質にとって立てこもり事件を起こす。ここのよしなが先生は確かにカッコよかったけど…やっぱり顔がよしなが先生じゃない。この事件を通じてしんのすけの超能力がハッキリし、物語は次へ行くのだが…しつこいようですが、「クレヨンしんちゃん」として面白かったのはここまでです。 この後に今度はヌスットラダマス二世という新キャラが登場して充を悪者チーム明確に取り込み、いよいよ善玉チームしんのすけと超能力で戦うという主展開が明確になる。この物語展開で充が巨大化し、しんのすけが超能力で「実物大カンタムロボ」を操るという展開がハッキリしたとき、私は心の中で「あ~あやっちゃった、怪獣映画になっちゃった」と呟いちゃいましたよ。 遊園地の廃墟で巨大化した充とカンタムロボが戦い、その過程で実はひまわりも超能力を得ていることがわかるという展開は、もう「クレヨンしんちゃん」が怪獣映画になってしまったショックで見ている私が立ち直れなかった状況。 ですが充が倒されると、今度はもっと大きな怪獣が現れ…「はいはい」って感じでしたね。ですがここでしんのすけが「実物大カンタムロボ」を操れなくしたのは正解だと思います。遊園地の廃墟という設定と、3DCG化されたひろしの愛車「オッサン・アンジエリーナ」を使って迫力のシーンを描くことが出来ましたから。 ですがその大怪獣にしんのすけが食われ、大怪獣の体内でしんのすけと充の戦いが始まります。次々に現れる充の過去の記憶、そこに介入して充を救おうとするしんのすけ…ダメだ、もう説得力がなさ過ぎて見てられなかった。言わんとしているテーマは理解できるのが、色んなところで無理があって展開に綻びが出ていてダメ。ここ10年の劇場版「クレヨンしんちゃん」で最もダメなシーンになっちゃっていた。 だいたいしんのすけが充を「仲間」と意識する理由が全くないのに、あんなに「仲間だ仲間だ」と繰り返されて説得力があるだろうか? その伏線で幼少期の充がカンタムロボのシャツを着ていて、しんのすけがカンタムロボのパンツを穿いているというシーンを入れたのだろうけど、「しんのすけのおパンツはアクション仮面だろ?」とツッコミを入れたくて仕方なかった。ここはもうちょっと料理のしようがあったと思う、例えば大怪獣の体内で充の過去の記憶と戦うのでなく、悪の親玉と戦う設定にして充の心情を浮き彫りにして上でもっと自然にしんのすけが「仲間」だと感じる物語は作れただろう。 結局はひろしの靴下の匂いで充は過去の記憶に打ち克って「自分は1人じゃない」と認識し、同時に大怪獣も倒されるのだけど…その次が白けちゃってダメ、もうね正気に戻った充がしんのすけを抱きしめたときは「あ~あ、やっちゃった」と思った。 でもこの映画でもうひとつ面白かったのはエンディング。スタッフロールのキャストの部分を「クレヨンしんちゃん」の新作漫画にしてしまったのは笑った。大怪獣に壊されひっくり返った愛車を見て「オレのアンジェリーナ…」と泣くひろしはサイコー。キャスト表記は各キャラクターの吹き出し部分に書かれ、そのためにかすかべ防衛隊やようち園の先生達、さらにひろしの部下川口やミッチー&ヨシりんのコマまで用意されたのは笑った。 正直言って、今年の劇場版「クレヨンしんちゃん」はちょっとイマイチだったと言わざるを得ないですね。特にクライマックスの決戦シーンで説得力に欠け、その後の大団円シーンが白けてしまったのが痛い点と言わざるを得ないです。これまでの劇場版「クレヨンしんちゃん」ではこの辺りは上手く計算され、最後に白けないように工夫されていたのに今回はそうはならず、残念と言わざるを得ないです。 もちろん、こんな悪印象は私の個人的見解です。この見解が絶対というわけではありませんし、全部が全部面白くなかったというつもりもありません。特に私のように古くから臼井先生作品を読んでいる人なら楽しめるシーンがあるので、「クレヨンしんちゃん」が好きな人には勧められます。 お盆休みもあと一日、最後は家でのんびり過ごそうっと。