司法書士つるぴかはげまるのノート

2005/10/14(金)07:23

制度の限界?

成年後見(102)

 6月に介護保険法の改正が行われ、色々な点が改正になったわけですが、 実際に法律が実施されるのは段階的に行われています。例えば、「痴呆」 という用語を見直して「認知症」とするという改正部分は、6月の法律の 公布とともに、実施されています。 さて、10月1日に実施される部分で、介護保険施設等における食事の提 供及び居住等に要した費用について、利用者が負担することとするという 改正があります。 自宅で過ごしている方とバランスをとるということらしいのですが、自宅 の方にそういった費用を給付するということはできなかったんですかね~。 とにかく、負担が増えたわけで、所得の状況等によって負担額が異なるこ とになりました。  今回相談にいらした方は、自分のお母さんに家賃収入があるため、今回 の改正で自己負担額が倍になってしまう。それなので、家賃収入を上げて いる物件を自分に贈与して、収入を減らしたい。ついては、お母様が認知 症の状態であるので、自分が成年後見人になって、契約をしたいとの事。 「うっ・・・(;°°)」(難しい質問をされた時に起こる状態) 色々と問題があるのですが、一つずつ指摘していくと、 1 そもそも自分が後見人になって、自分と契約することはできず、さら  に特別代理人という人を選任しなければならない。 2 1のような取引(形式的に本人になんのメリットもない)は特別代理  人を選べばできるというものではなく、原則的にはできない。 3 この物件が居住用不動産に該当すると、その贈与ということで、家庭  裁判所の許可が必要。介護保険の改正による、自己負担額を減らすため  という理由が認められるのか? 4 成年後見制度は契約をしたら終わりというものではなく、契約後もず  ~っと続くものである。   と、まあちょっと考えただけで色々な問題点が浮かんできましたので、一 つ一つ説明させていただきました。  そこで私が感じことは、財産に対する考え方が違うんだな~ということ でした。 相談にいらした方は、ご自分の財産とお母様の財産をトータルで把握され、 贈与税を払ってでも、自分の財産にして、介護保険でカバーされない自己 負担部分を減らしたほうが、「家族」として得だと考えているわけです。 しかし、成年後見制度は本人(この場合であればお母様)個人の財産をど う適切に管理していくか?という視点で運用されていますので、たとえ家 族に財産を渡して活用してもらい、そこからお金をもらうという絵を描い たとしても、現在の収支がなんとかなっていれば、あえてそういったこと をする必要はないのじゃないか?ということになってしまうのです。 裁判所としては、本人がしっかりしていればこのように考えただろうとい うことまでいちいち考えるわけにはいかないでしょうから、勢い、なるべ く財産が減らないようにという視点で後見人を監督するしかないのでしょ う。  お母様が、元気だったら「そうしたほうが得なら娘(息子)に任せる」 といって、はんこを押してくれそうな話ですが、成年後見制度が絡むと、 なかなか悩ましい問題になってしまうわけです。 本人の利益はどこにあるのか?そのために成年後見制度は役にたっている のか?色々と考えさせられる出来事でした。

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