2019年10月に観た映画B
10月後半の4作品です。 「蜜蜂と遠雷」世界は音楽で満ちている。世界が鳴っている。貴女が世界を鳴らすのよ。原作も、それだけのことを言うために延々と言葉の技巧と志を傾けて大長編を作ったのだが、映画は、その大長編をとことん縮めて、新たな場面も作って、同じことを描いた。原作も映画も、果たして描けたのか。と言えば、描けたとは、私は言い切れない。反対に言えば、誰が描けると言うのだろう?けれども、映画は映画の仕事はした。原作では省略した、栄伝亜夜の本戦最後の曲を描き切った。聞いてみれば、3人の中では一番派手な曲なので、当たり前ではある。亜夜が主人公になっているので、それはそれで仕方ない。春と修羅の作曲は、感性の問題だから仕方ないのだけど、私は納得できない。(解説)直木賞と本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の小説を実写映画化。若手ピアニストの登竜門とされる国際ピアノコンクールを舞台に、4人のピアニストたちの葛藤と成長を描く。キャストには『勝手にふるえてろ』などの松岡茉優、『娼年』などの松坂桃李、『レディ・プレイヤー1』などの森崎ウィン、オーディションで抜てきされた鈴鹿央士らが集結。『愚行録』などの石川慶がメガホンを取った。(ストーリー)優勝者が後に有名なコンクールで優勝するというジンクスで注目される芳ヶ江国際ピアノコンクールに挑む栄伝亜夜(松岡茉優)、高島明石(松坂桃李)、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)、風間塵(鈴鹿央士)。長年ピアノから遠さがっていた亜夜、年齢制限ギリギリの明石、優勝候補のマサル、謎めいた少年・塵は、それぞれの思いを胸にステージに上がる。(キャスト)松岡茉優(栄伝亜夜)松坂桃李(高島明石)森崎ウィン(マサル・カルロス・レヴィ・アナトール)鈴鹿央士(風間塵)臼田あさ美(高島満智子)ブルゾンちえみ(仁科雅美)福島リラ(ジェニファ・チャン)眞島秀和(ピアノ修理職人の男)片桐はいり(コンクール会場のクローク)光石研(菱沼忠明)平田満(田久保寛)アンジェイ・ヒラ(ナサニエル・シルヴァーバーグ)斉藤由貴(嵯峨三枝子)鹿賀丈史(小野寺昌幸)(スタッフ)原作 恩田陸監督・脚本・編集 石川慶「春と修羅」作曲 藤倉大ピアノ演奏 河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央オーケストラ演奏 東京フィルハーモニー交響楽団2019年10月14日TOHOシネマズ岡南★★★★ 「ジョン・ウィック パラベラム」後世の歴史家は、こういう映画が結果的に4作も続いたこの時期の世界を、刺激に飢えた退廃した世の中と「裁定」するのだろうか(続編が作られるのは決定的なので4作と書いた)。見なければ批評出来ないので、1も2も観ていないし、必ず出来るであろう4も見るつもりはないけれども、このシリーズを観ました。ともかく、理屈はいいから131分永遠に暗殺アクションを見せることに徹した珍しい作品でした。アクションの最中に眠たくなったのは、初めてかもしれない。なぜか、寿司屋がフィーチャーされていて、忍者が超人的な敵役というか、ほとんど漫画のライバルとして出てくる。見方の役は、殺されそうになるけど、何故か殺されないというのも、漫画的。製作者はジャパンコミックのフアンなのは、明らか。(解説)キアヌ・リーヴス演じる殺し屋ジョン・ウィックの復讐(ふくしゅう)劇を描くアクションシリーズの第3弾。追われる身となったジョンが、迫りくる暗殺集団との戦いに挑む。前2作のメガホンを取ったチャド・スタエルスキが続投。イアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーンらおなじみのキャストに加え、ジョンと因縁がある謎の女役で『チョコレート』などのハル・ベリーが参加している。(ストーリー)裏社会の聖域コンチネンタルホテルでの不殺のおきてを破ってしまった殺し屋のジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)は、裏社会を束ねる組織の粛清の対象になる。1,400万ドルの賞金を懸けられ、刺客たちと壮絶な死闘を繰り広げて満身創痍のジョンは、以前“血の誓印”を交わしたソフィア(ハル・ベリー)の協力を得ようとモロッコへ向かう。(キャスト)キアヌ・リーヴス(ジョン・ウィック)ハル・ベリー(ソフィア)イアン・マクシェーン(ウィンストン)ローレンス・フィッシュバーン(バワリー・キング)マーク・ダカスコス(ゼロ)エイジア・ケイト・ディロン(裁定人)ランス・レディック(シャロン)サイード・タグマウイ(首領)ジェローム・フリン(ベラーダ)アンジェリカ・ヒューストン(ディレクター)(スタッフ)監督チャド・スタエルスキ脚本・キャラクター原案デレク・コルスタッド脚本シェイ・ハッテン、クリス・コリンズ、マーク・エイブラムス2019年10月14日TOHOシネマズ岡南★★★ 「ジョーカー」若者で半分くらい埋まっていた。興行成績一位らしい。この現象が、映画の内容よりも、よっぽど興味深い。エンタメ部分はほとんどない。終始フォアキン・フェニックスのアップが続く、一人称語りの深刻な作品なのである。若者の奥深いところで、共感があるのか?しかし、それ以上にあるのは「謎解き」の話題であることもわかった。話は、ジョーカーの妄想なのではないか?ラストの場面は何だったのか?結局、バッドマンの父親を殺したのはジョーカーじゃなかった!この時ジョーカーは30歳。バッドマンになるべきブルースはおそらく10歳くらい。バッドマンとジョーカーの対決は、バッドマン30歳の頃だろうから、この時から20年の歳月が流れたのか?あの時のジョーカーは50歳だったのか?‥‥等々が面白いのか?若者に対するそういう小さな細部への拘りが、結局、日本の若者を大きく動かしているのか?作品全体の構造を、私たち大人は話題にしなくてはならない。虐げられて、絶望して、自分を殺すために、道連れに嫌な奴を殺す。ジョーカーは、自殺のために人を殺したのは明らかだ。そのあと10年間、バッドマンに捕まるまで、自殺のために人に祭り上げられて、犯罪を犯してきたのだろうか?ウエィンもロバート・デ・ニーロも、表は常識人本質は嫌な奴として描いている。それによって、暴動を起こす街の人々に同情している。あれで暴動を起こす「架空の街ゴッサムシティ」は異常である。そこで祭り上げられるジョーカーに共感するのも、どうなのか?と思う。京アニ放火事件の犯人の内面を映画化すれば、このようなものになると言えば、多くの日本人が反発するだろう。しかし、当たらずとも言えども遠からずの気がする。しかし、これが興行的に成功するところに、現代性があり、やはり歴史的な映画というべきだろう。アカデミー最優秀男優賞をとって欲しい。(解説)『ザ・マスター』『ビューティフル・デイ』などのホアキン・フェニックスが、DCコミックスの悪役ジョーカーを演じたドラマ。大道芸人だった男が、さまざまな要因から巨悪に変貌する。『ハングオーバー』シリーズなどのトッド・フィリップスがメガホンを取り、オスカー俳優ロバート・デ・ニーロらが共演。『ザ・ファイター』などのスコット・シルヴァーがフィリップス監督と共に脚本を担当した。(ストーリー)孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みコメディアンを目指す。ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら母を助ける彼は、同じアパートの住人ソフィーにひそかに思いを寄せていた。そして、笑いのある人生は素晴らしいと信じ、底辺からの脱出を試みる。(キャスト)ホアキン・フェニックス(アーサー・フレック)ロバート・デ・ニーロ(マレー・フランクリン)ザジー・ビーツ(ソフィー・デュモンド)フランセス・コンロイ(ペニー・フレック)(スタッフ)監督・製作・共同脚本トッド・フィリップス製作ブラッドリー・クーパー、エマ・ティリンジャー・コスコフ共同脚本スコット・シルバー撮影ローレンス・シャー美術マーク・フリードバーグ編集ジェフ・グロス衣装マーク・ブリッジス音楽ヒルドゥル・グーナドッティル2019年10月20日MOVIX倉敷★★★★ 「楽園」こんなに暗い話なので観客が少ないのは肯ける。そんなに悪い出来じゃない。吉田修一の「犯罪小説集」の中の「青田のY字路」や「万屋善次郎」が原作らしい。2つを合体させていたのか!主役級が2人いて、1人は途中退席(実は違った)したので、てっきり勘違いしたよ。限界集落の閉鎖性を、これでもかと描く。映画的外連味があって、名作とはちょっとならなかった。杉咲花はいい女優になったと思う。(ストーリー)12年前、青田に囲まれたY字路で幼女の誘拐事件が発生した。事件が起こる直前までその幼女といたことで心に傷を負った紡(杉咲花)は、祭りの準備中に孤独な豪士(綾野剛)と出会う。そして祭りの日、あのY字路で再び少女が行方不明になり、豪士は犯人として疑われる。1年後、Y字路へ続く集落で暮らす養蜂家の善次郎(佐藤浩市)は、ある出来事をきっかけに、村八分にされてしまう。(キャスト)綾野剛、杉咲花、村上虹郎、片岡礼子、黒沢あすか、石橋静河、根岸季衣、柄本明、佐藤浩市(スタッフ)原作:吉田修一監督・脚本:瀬々敬久撮影:鍋島淳裕照明:かげつよし録音:高田伸也美術:磯見俊裕編集:早野亮主題歌:上白石萌音作詞・作曲・プロデュース:野田洋次郎劇伴:ユップ・べヴィン2019年10月28日MOVIX倉敷★★★★