再出発日記

2006/02/17(金)23:42

渡辺治の小泉政権論(3)

読書(ノンフィクション)(32)

「構造改革政治の時代 小泉政権論」 我々の目の前には緊急を要してなおかつ途方もなく厚い壁が立ちはだかっていて、目の前の壁を乗り越えるだけで精一杯になりその壁の全体を見通すことが難しくなっている。しかし国民投票法も、共謀罪も大きな流れの中の一環である。全体を見据えながら運動することが求められている。そしてまた、全体から個別の問題に帰って行くべきである。 アメリカから発しているグローバリズムは決して日本の政財界はしぶしぶ従っているのではなく、10数年前から着々と準備を進めてきていることが昨日までのスケッチでわかったのではないかと想う。9月までが勝負だ。 三、小泉構造改革政治の今後 1.勢いづく構造改革急進勢力 財界はすぐさま注文を始めた。経済同友会は「郵貯、簡保の出口である政府系金融機関や特殊法人の野改革、年金・医療システム、公務員制度、地方行財政改革、の改革。規制撤廃、新事業創造、少子化対策、教育改革、FTA/EPAの推進」を注文。経団連はもっと包括的に「改革のスピードアップ、近隣諸国の外交関係の改善」を訴えた。 経済財政諮問会議の比重は増加したから、これらの要望はストレートに政府に届くようになった。小泉退陣までの9月までに改革を仕上げねばならないなという焦りも加わっている。 2.総選挙後の小泉構造改革の新特徴 ひとつ、支出をいっそう乱暴かつ「大胆な」目標の下に実行し、企業への負担軽減措置を維持・拡大しようとしている。特に公的医療費の削減、公務員経費の削減である。 ひとつ、広義の構造改革の完成。三位一体改革「中央から地方へ」、市場化テスト法「官から民へ」。将来の新事由主義型国家制度の柱をなす制度になる。 ひとつ、憲法改正の加速化である。改憲の狙いは長短二つ有る。ひとつはグロバリゼーション下の世界秩序維持のためにアメリカ追随で、自衛隊の武力行使目的の派兵を実現するための九条改正。ひとつは構造改革への「抵抗」は憲法の諸制度を活用して行われるため(閣議の全員一致制等)改正したい、階層社会への移行に際して伝統的な統合の装置へと再建したいという目論見。(国民の責務の明確化等) 3.自民党憲法草案の特徴 ひとつ、9条改正と96条憲法改正条項に絞り、公明・民主と協議をしやすくした。「家族の法的保護、教育の目的、国民の責務規定」などを落とした。 ひとつ、「集団的自衛権」についてはあいまいにした。 ひとつ、96条だけとおして、段階的改憲構想を狙った。 ひとつ、新しい人権の盛り込みは国民投票において砂糖でおおい、毒薬を国民に呑ませようという戦略。 ひとつ、民主も合意が取れて、構造改革の加速化に即効性の有る改正を盛り込んだ。財政の健全化規定は政府支出の削減や消費税の実行などで使える。地方自治法も改正できるようにしている。 国会の改憲派は今回の選挙で圧倒的になった。自民内では96%、民主内では75%。小選挙区制が機能し始めたので、今後も安定して改憲発議が出来る基盤が確立した。前原代表の就任はそれをさらに加速させるだろう。改憲はさしあたり、2006年通常国会での国民投票法の上程、並行して自民公明民主の実質協議の開始という形で進行する。国民投票法が制定されるような事態が起きると、あとは改憲草案の作成から発議までは一気呵成である。

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