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カテゴリ:読書(フィクション)
2000年4月、第3探検隊は火星に降り立つ。
『希薄ですが、安全な大気のある小さな町です。隊長。』 『地球の町にそっくりの小さな町だ。』と、考古学者のヒンクストンが言った。 合理主義者で、80歳のベテランパイロットの隊長はなぜこのようなことが火星で起きるのかいぶかしみ慎重に探検を始めるのだが、つぎつぎと死んだはずの肉親が穏やかに暮らしているのに出会い、隊員たちは隊を離れていく。隊長でさえも、19歳で死に別れた兄に出会うと理性をなくしてしまう。 『ママが待っているよ』 『ママが?』 『パパも待っている』 『パパが?』 隊長は硬い凶器で殴られでもしたように、あやうくたおれそうになった。きごちなく、ふらふらと歩き出した。『ママもパパも生きているのかい。どこに?』 『オークル・アベニューの昔の家だ。』 『昔の家』隊長は驚喜して目を見張った。 『ママ、パパ!』 隊長は子供のように階段を駆け上がった。 ブラッドベリ『火星年代記』「第3探検隊」より 昨日は法事だった。気の置けない親戚同士で、これまでのこと、これからのことなどを話し合った。昔は良かった。正直そう思う。 山田洋次の「息子」という映画の最後、父親役の三国連太郎は雪で玄関が埋るぐらいに積もった誰もいない家に帰ったとき、ふと貧しかったが家族団らんがあった昔の幻想を見る。帰りたいものならあの日に帰りたい。この映画が作られたのはもう十数年前だが、厳しい労働の実態と、次に発作があれば死んでしまうだろう父親の未来と、微かにだか確実に残っている親子の繋がりを描いて、忘れられない作品だった。「火星年代記」でも、一応なぜあのようなことが起きるのか、説明はしているが、作者はそんなことを描きたかったのではないだろう。 失われた繋がりと幸せーそれが未来に向かって感じられない現実。 共謀罪が通ってしまうと「萎縮社会」がやってくる。 教育基本法が通ってしまうと「愛国社会」がやってくる。 市場化テスト法は成立したので「民間社会」は進む。、 介護保険等の社会保険はさらに改悪され「自立支援社会」に変わる。 憲法が改悪されると……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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