再出発日記

2006/05/07(日)16:25

「クラッシュ」することで分かること

洋画(05・06)(66)

監督・原案ポール・ハリス 製作・脚本ホール・ハリス/ボビー・モレスコ 出演ドン・チードル/マット・ディロン/テレンス・ハワード/サンドラ・ブロック/サンディ・ニュートン 久しぶり。『マグノリア』式映画。けれどもあの映画のように最後にとんでもないものが降って来て、『終わり』にするような強引なことはせず、助走して始まり、クールダウンして終わる。 ロサンジェルスで起こった二晩の出来事。刑事、強盗、TVディレクター、雑貨屋の主人、錠前サービス‥。さまざまな職種そして人種が混じりあう街。つくづくアメリカは多民族国家である。9.11が起こした波紋は、これほどまでに複雑に深く社会の中にとして横たわる。なぜなら、アラブ人に向けた刃は自分に帰ってくる。黒人に対する長い差別は社会構造に変化している。白人の中の自分でもコントロールできないトラウマ。華僑のしたたかさ。 実は一つ一つのエピソードが過不足なくすべてつながっていなくて、少し不満は残る。けれども、中盤にあるクラッシュ事故の処理のエピソードがあまりにも秀逸なために、やはり忘れることは難しい作品になった。一人残されたマット・ディロンの中には決して英雄的なことをしたという気持ちは無かったはずだ。かえって、ほっとしていただろう。あの一瞬、諦めなくて良かった。どうしておれはここまで来たのだろう。もととはいえば、有色人種を優遇する雇用政策が良くないのだ。(これはブッシュ大統領の支持基盤であるキリスト教福音派の主張でもある)。けれどもあの狭い車の中で、彼の中で何かが変わった、かもしれない。憎しみ合う間柄でも、触れあい、目と目を合わせることで分かることもある、かもしれない。アラブ人である雑貨屋の主人のエピソードでも同じような気持ちの『転換』が起こる。「彼女は天使だ。」『失われた天使の街』ロサンジェルスで起こったことは、アメリカの人たちの気持ちを少しだけで良いから変える。ようなことがあればいいな。 今年のアカデミー賞にノミネートされた作品群のなかにある、同性愛問題、石油利権問題、民族問題、マッカーシズム問題、これらはすべてひとつの事を語っているのだということにやっと気がついてきた。そのことについては又の機会に述べる。

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